「賢い医師生活 シーズン2」 - 何も起こらない場面に宿る、日常の無限の美しさ

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万人に愛されているんだなぁと感じるドラマ。韓国の芸能人がよくハマっていると言っていたり、「最近観ているドラマ」の話などになると大体みんな観ていて、ほとんどの人が好きと言う気がします。シーズン1から、登場するキャラクターや小さなひとつひとつのエピソードがすごく優しくて泣ける一方で、日々の笑いも大事にしており、自然な感情の動きを活発にしてくれるような、とても健康にいい感じのする作品でした。当時からとても人気があった気がするので、シーズン2はまさに待望の登場だったはず。そして期待を裏切らない仕上がりだと思います。

主人公は大きすぎる野望を持つでもなく、自分の生活も大事に、けれど真摯に誠実に職務をまっとうしている平凡な5人の医師たち。肝胆膵外科のイ・イクジュン（チョ・ジョンソク）、小児科のアン・ジョンウォン（ユ・ヨンソク）、胸部外科のキム・ジュンワン（チョン・ギョンホ）、産婦人科のヤン・ソッキョン（キム・デミョン）、紅一点の神経外科のチェ・ソンファ（チョン・ミド）。

もともと医大の同期として青春を一緒に過ごし、専門は違えど20年来の友情を築いてきた彼らは、それぞれのキャリアを積みながら40歳に。現在も同じユルジュ病院に勤務しています。

病院にいても休み時間になるとソンファの部屋に集まって食事を共にし、時間が合えば酒を酌み交わして悩みを分かち合い、それぞれに恋や愛、家族の問題に頭を抱えながらも週末になると5人で楽器を手に好きな曲を演奏する。そう簡単に得られるような環境と友情ではないかもしれませんが、ごくごく普通の人々の延長にある人生を過ごしている主人公たちの姿に、終始共感し癒されます。

彼らに訪れるのは医師としての様々な経験。多様な病状だったり環境に置かれた患者たちとのやりとりは、深い悲しみを伴うこともあれば思いがけない幸福となることもあります。子供や高齢の親の病に悩む家族もいれば、夫の暴力に苦しみ入院している妻もいる。赤ちゃんを産むために命がけで頑張る妊婦もいて、舞台が病院である以上、物語には常に生と死が絶えずついてまわるのですが、それらの全てがやはりとても当たり前の日常に融けこんでいることがこのドラマ最大の魅力だと思います。

シーズン2の第1話、幼くして娘を失った母親のエピソードがありました。短い人生をずっと入院して過ごした我が子が亡くなったユルジェ病院に、その母親はしばらく経った今でも何かと理由を作っては顔を出し続けています。その様子に対して、子供が亡くなったことについての恨み言が言いたいのではないかという風に考える人もいます。そんな中、ジョンウォンの恋人であるギョウル（シン・ヒョンビン）は、どうもその母親は自分に話があるようだと感じてジョンウォンにその話をすると、ジョンウォンは優しく微笑んで、彼女はただ亡くなったその子の話を、その子を知っている人としたいだけだと思うとアドバイスしてあげるのです。そして実際に会話してみるとその通りでした。亡くなってしまっても娘のことを忘れたくはない。かと言っていつまでも悲しみに打ちひしがれているのでもなく、ただ時折、娘の話がしたい。この上なく人間味にあふれ、心の奥に積もった澱が消えていくような、とても「賢い医師生活」らしい話だと感じました。

このドラマでは現実離れした大きな出来事は起こらず、時にエピソードの結末を描ききらないことすらあります。ですが大事なのはそこに至るまでのたくさんの登場人物の各々の心情であり、人が人の想いを慮る過程こそが物語の骨子になっているのです。不意に時間が経過したり、本当に何事でもないような、何ひとつ起こらないように感じる場面もあるのですが、磨き上げられたエピソードたちの合間に存在することでそんな日常の場面がとても美しく見えてきます。

ユーモアと人格を兼ね備えた素敵な大人がたくさん出てくるのも魅力のひとつ。かと言ってありえないほどの聖人君子ではありません。苦労や困難を経て少し広い視野で肩の力を抜いて生きられるようになったような、そんな人たち。彼らの姿を見ていると、特別なことが何もなかったとしても世界は悪くない、そんな気がしてくるのです。

シーズン1では消化しきらなかった各々の恋の物語はゆっくりと歩みを進め、紆余曲折はありながらも全員が穏やかな幸せへと向かっていくシーズン2。普遍的で平凡な日常の喜びを噛みしめさせてくれるドラマです。

同じ製作陣による姉妹作（？）、「刑務所のルールブック（賢い監房生活）」も未見の方には心からオススメ。

▼主役5人によるバンド演奏シーンは選曲も良く毎回素敵です

▼その他、ドラマの観賞録まとめはこちら。

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