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「サウンドトラック#1」 - 一編の美しい曲を聴くように流れる物語

★★★★★

ふとハン・ソヒの演じる「普通な女の子」に癒されたいと思って観始めました。20年近く親友だったふたりの恋物語。主役ふたりの素朴だけれど美しい佇まい、のどかで不器用な恋、穏やかな日差しのような映像、音楽、写真…。無理せず難しいことを考える必要もなく、本当にただただ居心地の良い世界に身を委ねられるドラマです。

19年の間、親友として過ごしてきたカメラマンのソヌ(パク・ヒョンシク)と売れない作詞家のウンス(ハン・ソヒ)。穏やかで優しいソヌと活発で突進型のウンスは絶妙なバランスの組み合わせです。ある日、憧れの作曲家から自分の書いた歌詞に対して片想いのリアルが伝わってこないとダメ出しを受けるウンス。どうしても認められたいウンスは時間の猶予をもらい、どうやら初恋の相手がいるらしいソヌに共同生活をして恋心を教えてほしいと手助けを求めます。

初めは嫌がるソヌですが、なんだかんだとウンスの家にやって来て2週間の間、一緒に暮らすことにする二人。これまでと違う距離感で互いへの感情が変化を見せ始めます。そしてソヌの恋の相手とは…。

正直、ものすごく平凡な話なのです。幾度となく見たことのあるような幼なじみが恋心に気づいていく展開。ですがそれが、ハン・ソヒとパク・ヒョンシクの飾らない等身大の演技によって眩しいカップルの愛さずにいられないラブストーリーに仕上がっていました。セリフに頼らない場面も贅沢に使い、作りたい空間が明確に伝わってくる演出もとても素敵です。「ヴィンチェンツォ」と同じ監督とは思えないほど温かくてピアノの音が静かに響く世界ですが(いや〜オホーツク海と瀬戸内海くらい違う気がする)、手抜きのない画面の美しさはあぁ確かに、といった感じ。

ハン・ソヒの可愛らしさは言うまでもなく。朗らかで素直なウンスのキャラクターに彼女が合わさることで、思わず笑顔で眺めてしまう存在感を生み出しています。対するパク・ヒョンシクの温厚さはウンスだけでなくこちらまで癒してくれ、テンポの良い会話と相まって恋愛モノの醍醐味が凝縮されているようなふたり。

全4話という構成もとても上手くて、ずっと熟成させてきた恋がふと飲みごろを迎える瞬間だけを切り取って見せてくれるような、気楽だけれどどっしりとした味のある作品になっています。タイトルがまさに「サウンドトラック」ですが、本当に音の使い方が印象的で、観ていて気持ちが途切れないというかちょうど良い気分を保てるように仕上げられていると思いました。晴れた日の夕方に綺麗で優しい音楽を聴きながら散歩するような、そんな心持ちになれる文句なしに素敵な一本です。


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