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「自白」 - どこにも無駄がない質量勝負のリーガルサスペンス

★★★★+

ジュノ(2PM)の入隊前最後の主演ドラマで、2019年のスタジオドラゴン作品です。「梨泰院クラス」「ヴィンチェンツォ」など良作品にたくさん出ているイメージのユ・ジェミョンとの共演というのもあって面白いケミストリーがありそうと見始めました。さらにジュノの弁護士事務所に出入りする元記者のユリ役が「賢い医師生活」「あなたに似た人」でクセのある美女を演じてきたシン・ヒョンビンで、ここでは思いのほか快活なキャラクターなので最初は気づかなかったのですが、隙がなくて心惹かれるキャスティング。

冒頭、とある女性の殺人事件の容疑者ハン・ジョング(リュ・ギョンス)の国選弁護を引き受け、検察側の証拠の不十分さを突いて無罪判決を勝ち取った弁護士のチェ・ドヒョン(ジュノ)。そしてその判決を受け、ジョングを逮捕し犯人だと確信して捜査していた刑事のキ・チュノ(ユ・ジェミョン)は警察を辞めます。5年後、酷似した状況で新たな殺人事件が発生。ちょうど強盗で服役していたジョングが出所したタイミングだったこともあり、5年前の事件もやはりジョングが犯人だったのではと考える警察は意気込んでジョングを逮捕します。言い逃れできないような証拠も出てくる中、ふたたびジョングの弁護をすることになるドヒョン。「被告人の利益のために」法廷に立つジョングですが、5年前の事件の真相は謎のままであり、今回の事件については不自然なほど証拠が揃っている状況です。チュノとの駆け引きもありながら真実に近づくジョング。そしてジョングの父親が死刑判決を受けた過去の事件との不思議な繋がりも見え始め…。

しっかり作られている印象のリーガルサスペンスです。最初の事件はあくまで掴みかと思いきや、実はここの時点から既に全速力で根が広がっていくというのも面白いところ。序盤と中盤以降でストーリーはガラリと姿を変え、最初のほうの世界観を思い出せなくなるほど胃に来る感じで重みのある展開に。

お約束というか、国家レベルの敵を相手に回していく流れが見えてきてちょっとアレかな?と思いつつも、それを上回るくらい緻密に何層も物語が積まれていて土台のものすごいしっかりした建物を見ているようでした。とにかく無駄がない。登場人物たちは全員が意味を持っており、それぞれに結構重たい背景を抱え、全員が一点で交わるのは他であまり見ないよく仕上げられた構成。重量というより質量があります。

悪役のみなさまはおじいちゃんから若者まで、まあほんとイラッとしますし、途中から大体全体像は見えてくるので主人公側メンバーの何かとうっかりな場面にもどかしくもなりますが、最終回の法廷でドヒョン(むしろジュノ)が見せる渾身のドヤ顔で溜飲が下がりました。ファンタジーが皆無とは言えないでしょうが、裁判はわりと誠実に描かれている感じで法廷のシーンが続いても面白く見ることができます。裁判長が抱き込まれてるあるあるがないのも良かったです(逆に裁判長めっちゃ味方してくれるというか、再審請求のシーンなんかはもう少しじっくり描かれてもいい気がしましたが)。

ここでもジュノの演技は見応えがあり、ドヒョンの是が非でも父親の無実を証明したい姿にはなんだか心打たれました。超優秀な弁護士だけどあくまで普通の人っぽい雰囲気がジュノによくハマっています。対するユ・ジェミョンは絶対的な存在感で展開に華を添え(いるだけでなんだか場に色が生まれる)、ジュノとのバディがとても素敵。

16話見終わると本当になんだか山でも登ったみたいな気分になり、いい意味で「長い旅だった」と感じました。一方でそもそも始まりどんなだっけ?と思ってしまい、なんだかんだとまた見返す危険な流れになりそうです。タイトルである「自白」の意味も、話が進むにつれてどんどん形が変わってゆくので、そんなところにも作り手のこだわりを強く感じた一本でした。 


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