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「だから俺はアンチと結婚した」 - 満を持して浸りたい!胸キュンを裏切らないラブコメ

★★★★★

定期的に、ひたすら、ひたっすらときめきを供給してくれるような王道ラブコメって観たくなります。このドラマはもう基本設定から間違いなく少女漫画的な「初対面は最悪だったけど…」展開の胸キュンものだと確信して観始めました。

主人公がチェ・テジュンというのも気になったところ。「あやしいパートナー」が好きで観ていましたが、そこでは最終的にはいい奴なものの2枚目役はチ・チャンウクに完全に受け渡し、必ずしもイケメンの印象ではなかった彼が(顔面は本当に整ってますが)、それこそ少女漫画から出てきたような世界を虜にするスター歌手を演じるというのでどんな塩梅なのか興味を惹かれました。(ついでにこれと並行して「ミッシングナイン」を観始めたのでチェ・テジュンの振れ幅に驚かされることに)

一方でヒロインは少女時代のスヨン。最近すっかり女優としての活動も定着してきて、役者としての彼女が私は結構好きです。「元カレは天才詐欺師」でも感じましたが、他の女優さんとは少し違う(良い意味で)ラフかつハンサムな空気を持っているため、彼女がいると物語がむやみに甘ったるくならない気がします。

ざっとあらすじから行くと、出版社で性格の悪い編集長に雑用係を押しつけられがちな雑誌記者のイ・グニョン(スヨン)は、とあるイベント会場で世界的人気を誇るトップスターのフジュン(チェ・テジュン)に誤解から持っていたカメラを壊されてしまい、謝りもしないフジュンの態度に腹を立てて彼にハイヒールを投げつけます。そしてその時の映像がネットで拡散されてしまい、彼女は会社をクビになってしまうのです。表向きは優等生なフジュンの本性が許せないグニョン。裏の顔を暴いてやろうと画策しているうちにグニョンはフジュン本人が認める「公式アンチ」として世間にまで知られるように。しかもそれを面白がったテレビ局の企画で、スターとその公式アンチが仮想結婚したら…というリアリティ番組「だから俺はアンチと結婚した」に出演することになり、グニョンはフジュンの家で暮らすことに。

ここにフジュンと因縁のある芸能事務所社長で自身も歌手というジェジュン(ファン・チャンソン)、フジュンの元カノで今はジェジュンの恋人であるアイドル練習生のイニョン(ハン・ジアン)が絡んできて、鉄板なレクタングルを構成します。

最初はイニョンへの未練をそこここに匂わせているフジュンですが、「女」感の強いイニョンと全く違ってとにかく真っ直ぐで情に厚いグニョンとの激突を繰り返すうち、彼女の素朴な内面の魅力に惹かれていくわけです。グニョンもまた、あれこれ時間をともにするうちにフジュンの自信に満ち溢れた感じの悪さはスターとしての自分を守る殻みたいなものであり、本質的には少年のような無邪気さと大事なものを守る男らしさを兼ね備えた根の優しい人間だと次第に気づいて行きます。

…と、大筋こそ超スタンダードでなかばファンタジーな恋愛モノなのですが、グニョンとフジュンそれぞれのキャラクターの魅力と、一方で弱さやダメな部分も序盤から丁寧に描かれるため、気づけばどっぷり感情移入して物語の虜に。

さらにジェジュンとイニョンの存在がうまく効いていて、このふたりが拗らせに拗らせた男女としてウェットな風味をもたらしてくれることで、主役ふたりのロマンスは実に健やかで爽やかに感じられます。フジュンが自分の気持ちを自覚してからはもう視聴者の要望に200%応えてくれるようなときめき満載で展開していくので、毎週金土の配信が楽しみで、幼いころに雑誌の「りぼん」の発売日が待ち遠しかったころを思い出しました。

アーティストの設定なのでフジュンの歌や踊もところどころ出てきて、それには正直「世界的スターと言うにはちょっと…」的な、一種音楽ドラマあるあるの感想もあるにはありましたが、全部ふくめて少女漫画の世界だと思うと逆にじわじわクセになるので大丈夫です。なにせ少女時代のスヨンと2PMのチャンソンがメインキャストを張っているので、アイドルの説得力は別格。チェ・テジュン本人は、もともと歌と踊りは苦手だがこの二人の助けもあって頑張れたといった話をしていて、好感度は上がるばかりです。

個人的にとても良かったのは、フジュンとグニョンが激甘カップルになろうと、あくまで感情に走らず大人の落ち着いた恋愛をしていくところ。ふたりとも生活と仕事をきちんとした上で、決して互いに不必要に寄りかかることはしません。そこにはまず人間同士としての信頼を描いていくこのドラマならではの良さがあるように感じましたし、そんなふたりを演じるチェ・テジュンとスヨンの俳優としての魅力が伝わってきます(チェ・テジュンの涙のシーンがすごく良かった)。

あとはグニョンのお父さんがグニョンに言う、「お前の選ぶ道がいつも正解だ」というセリフが好きです。娘への信頼と、親としての器の大きさが滲みます。そんな風に親、友人、同僚、恋人。様々な人との信頼関係が優しく描かれることに癒される物語でもありました。

本当に最後まで胸キュンも忘れず期待に応えてくれるドラマ。お気に入りの一本になりました。


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喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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