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「キマイラ」 - 復讐の連鎖で転がり続ける誠意あるサスペンス

★★★★+

刑務所のルールブック」で独特の朴訥とした雰囲気が忘れられない余韻を残していたパク・ヘス。刑事役も似合いそう!というくらいのノリでこのドラマもチェックしましたが、パク・ヘスがいると画面に不思議な落ち着きと本格感が醸し出されるのが面白いなぁとしみじみ思いました。

原因不明の爆発が起こり、都心の真ん中で人が死ぬ事件が発生します。捜査に入った強力班の刑事ジェファン(パク・ヘス)は、状況に怪しい部分があると感じてちょうど韓国に派遣勤務中だったFBI捜査官でプロファイラーのユジン(スヒョン)に助言を求め、協力して捜査していくことになります。

この事件が彷彿とさせるのは、35年前に世の中を震撼させた連続殺人「キメラ(キマイラ)事件」。当時事件に関わっていた刑事たちは動揺を見せ、隠された何かを感じさせます。

ジェファンとユジン、さらに当初は容疑者として浮上する医師のジュンヨプ(イ・ヒジュン)という3人が、それぞれの立場と視点から事件の真相を追うことになっていくのです。

この3人それぞれの過去が最初に思っていたより随分と複雑に事件に食い込んでいき、なんだか不思議な気分が生まれます(いい意味で)。あくまで解決する側だと思っていたジェファンが実はそうでもないかも?となってきて、10話くらいからは毎回「おぉっ」みたいな終わり方で転がり続けていくストーリー。

出足はものすごく綿密に仕立てられたサスペンスのようで期待感を唆るのに途中から政府が絡んできたり超能力を持ち出して一気に大味になってしまう作品は韓国でも日本でも往々にしてあるので、この「キマイラ」もどことなくそういう流れになることを警戒して観ていたのですが、主軸はあくまで各々の抱える「復讐心」といった感じで、ブレずに誠実にエンディングを迎えます。そしてジェファンとジュンヨプが最終的に築く関係性が大人の男同士という感じで個人的に好きでした。

最終回まで予想をわりと斜め上から裏切ってくれるので最後の最後まで面白く、手を抜かずにまとめあげられている印象。「復讐の連鎖」というのはしばしば取り上げられる題材かもしれませんが、ことこのドラマにおいてはそれを淡々と、しかし中途半端に救いを作るでもなく描いていました。その中でパク・ヘスの渋みが寂しさは、空虚を巧みに織りまぜた余韻をもたらします。難しすぎず、でも質感のあるサスペンスが観たいときにオススメしたい作品です。


▼その他、ドラマの観賞録まとめはこちら。

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