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肉まんはかぶりついて食べるからおいしいんだよ(小学生の頃のセクシャリティの話)

自分が女の子だということは幼少期から必要以上に意識していて、人前ではなるだけ女の子らしく見えるように心がけていた。髪の毛も背中まで伸ばしていたし、スカートしか履かなかった。けれど、たしか小学校高学年の頃だろうか?当時見ていたトレンディドラマに出てくるかっこいいモテモテの俳優たちに憧れすぎて、どうしても真似したくなり、髪をショートにした。それで、髪の毛に塗りたくるハードジェルとか買ってきて、家にいるときには前髪を立てたりして、思う存分、憧れの俳優たちになりきって遊んでいた。ただ当時は今とちがって、男女のファッションにかなり差があった。男の人はぶかぶかの上着にぶかぶかのズボンで体型がわからないような服が多かったし、Tシャツだと真っ白のやつに色落ちジーンズとかだった。女の人はボディコンみたいな肩パッドの入った身体のラインを強調するような服が多くて、男物の白のTシャツとジーンズ履いてる人はいなかった、いたとしてもピッタリサイズか超ミニサイズとか。私は昔から背が高いほうだったので、サイズがないとか何とか言い訳して、なるべく男っぽい服を着たがった。

なるべく人には女らしく見られたいという気持ちと男になりたいという気持ちが自分のなかでも整理が付いていなかった小学4年の頃だっただろうか?給食のじかんだった。4人か5人で机をくっつけて給食を食べる。私の斜め前にいた同級生の女の子、ちゃんとした会話をした覚えはないんだけど、なぜかその子の家にたまに遊びに行っていて、あさりちゃんという漫画本を読んだりしていて、校内ではいつも一緒にいるわけではないけど友達だった同級生のその女の子が、肉まんにかぶりついて食べていた私に向かって、「肉まんはこうやって食べるんだよ」と、手で小さくちぎって口に入れて見せた。私は顔が真っ赤になった。恥ずかしかった。その女の子は、みんなからはボーイッシュだと思われてる部類だった。その女の子に、指摘されてしまったことで泣きそうだった。男友だちの多い子だったので、他の男の子たちは、肉まんはかぶりつくのが上手いんだよとその子に向かってバカにするように言ってはいたけど、何の慰めにもならなかった。なぜだったのだろう?今でもときどき思い出す。自分のなかの隠れた男性性を見られたことがショックだったのだろうか?というか肉まんをかぶりついて食べることに男女の違いがあるわけじゃないんだけど、当時はそういう時代だった。

自分の内側から発せられる何かを、掴んだと思ってもすぐに消えてしまいそうなそれらを、1枚でも多く作品にしたい。同じ感性や同じ心象風景を持つ人たちの元に作品を届けたい。と願って日々描いています。またサポートして下さることでいのっちの電話に使える時間も作れるので助かります!