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ただ、そばにいて。

『すずさん、今あなたの隣には誰がいますか。』

人が来ない外階段。

止まらない涙でマスクはぐしゃぐしゃになっていた。

死にたい。もう死にたい。

何も考えたくない。苦しい。

何一つとしてうまくいかなくて、「怒り」という最も恐れている感情に支配され、イライラしている自分に嫌悪した。

逃げ出した外階段。
ここなら人がほとんど来ない。

自分を落ち着かせようと座り込み、腕の中に顔をうずめる。

誰か気が付いて。助けて。

誰も来ないで。こんな姿見ないで。

相反する2つの思考が頭の中で交錯する。

『ここがいい?』

声をかけてきたのはデイケアの担当スタッフさんだった。

振り返ることなく(うん)とうなずく。

私が座る1段上に胡坐をかいてスタッフさんが座る。

「もうダメだ。もうダメ。」

繰り返す私に『何もダメじゃない』とはっきりした口調で返す。

頭の中の混乱を全て吐き出した。

何を言ったのか、ほとんど覚えていない。

「どうしよう」「もうダメだ」
そんな抽象的な言葉ばかりだったことだけは覚えている。

気が付いたら放心状態でボーっとしていた。
涙も止まって、一点を見つめている自分がいた。

あれ、何を話していたんだっけ。
どうして黙っているんだっけ。

自身に困惑しながらも、スタッフさんと共有する無言の時間は苦痛ではなかった。

10分くらい。互いに一言も話すことなく過ごした。

『すずさんがここにいるって他のスタッフに伝えてきますね。』

そう言って室内へと戻っていった。

一体ここで、自分は何をしているんだろう。
こんなこと何の意味もないのに。

冷静に考えながらも涙が再び流れる。

私も室内に戻らないと。
早く泣き止まないと。
気持を切り替えないと。

でも、死にたい。どうしようもなく死にたい。

看護師さんがやってきた。

看『ここにいたのか~!!どうした?(担当スタッフ)さんにいじめられた?笑

私(ううん)

階段の一段下に看護師さんが座り込む。

『あっ!話聞いてもらっていましたか!』

担当スタッフさんが戻ってきて上段にすわる。

間に挟まれてどちらに視線を向ければいいのかわからずとりあえず下を向く。

私「全部無駄だった。死んでおけばよかった。そうすればこんなに考えないで済んだ。悩まないで済んだ。

心の底からの本音だった。

”あの時死んでおけばよかった”

何十回と思った言葉。ノートに書き殴った文字。
初めて声に出した。

担当『死ぬ必要はない。何も無駄になんかなってないです。隣を見てください。誰がいますか?すずさんは一人じゃないです。

看『今日すずさん、「話したい」って言っていたじゃないですか。タイミングが合わなくて話せなくて申し訳なかったです。すずさん、何回も話そうとしてくれてましたよね。

私(うん)

看『私は「すずさんに」話したい事があります。「すずさんに」聞いてほしいことがあります。だからまた、来て欲しいです。

(うん)と大きく頷いて、ゆっくりと立ち上がった。

1対1で向き合って、「わたし」を知ろうとしてくれている人がいる。

苦しい時、ただ隣に座って時間を共有してくれる人がいる。

死にたい…わけじゃない。
ううん。死にたくなんてないんだよ。違う。
生きていたい。

生きていたいけど、コントロールできない感情に圧倒されて、頭の中がごちゃごちゃになって、そんな苦しさを「死にたい」でしか表現できない時がある。

本当に言いたかったのは、
「苦しいから隣に居て。話を聞いて。」
だったのかも知れない。

担当スタッフさんも看護師さんも今日はありがとう。



心をぽかぽかさせるために使わせていただきます☺️