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旅香記

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#フライト

旅香記Ⅹ_PVG→NRT

旅香記Ⅹ_PVG→NRT

上海時間午後十七時。成田への飛行機が動き出した。二時間半で到着すると機内アナウンスが告げている。
飛行機が走りながら、翼の向こうの空が暮れてゆく。機内の照明も暗めで、Yは舟を漕ぎ始めた。
周りの乗客は見る限りアジア人ばかりだ。中国人か日本人かははっきり見分けられない。そういえば、アブダビ行きの便以来何の乗り物に乗っても漂っていた甘い香水の匂いは、この機内にはなかった。アジアに帰ってきた、と思う。

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旅香記Ⅸ_FCO→PVG

旅香記Ⅸ_FCO→PVG

疲れで無気力になっていたが、機上から見えた月が綺麗で気を持ち直せたので、筆を執る。

今はローマの時間で二十三時。フィウミチーノ空港を二十時半に離陸してから、二時間半が経っている。一時間ほど寝て、そのあと機内食を食べた。Yは私の腿に頭をのせて、また眠りに落ちている。

ローマを発つときに、ショッキングな出来事があった。
空港へのシャトルバスに乗るために中心駅の前を歩いていたら、泥棒の一味にソースの

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旅香記Ⅶ_AMS→FCO

旅香記Ⅶ_AMS→FCO

アムステルダムを離れている。
中央駅からスプリンター(国営鉄道の各停)に乗ってスキポール空港を目指す。
朝九時半、車窓の朝日が眩しい。オランダの晴れた空を四日目にして初めて見た。八時半にホテルの部屋で朝食を食べていたときは青い夜空に美しい月が出ていた。

朝食は昨夜スーパーマーケットで買ったカットマンゴー。夜のデザートに食べるつもりだったが、疲れとグリューワインの酔いで食べないまま眠りに落ちてしま

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旅香記Ⅱ_AUH→CDG

旅香記Ⅱ_AUH→CDG

アブダビのトランジットでは、手荷物検査でベレー帽をかごに忘れかけたり、搭乗口でのチケット確認が一度で通らなかったりして何度か汗をかいたけれど、なんとか乗り込むことができた。
キャビンアテンダント以外のスタッフは笑顔を作ったりしないのだと知った。
アブダビ空港で唯一笑顔を向けてもらえたのは、トイレを使ったときに私のところで紙がなくなって(ティッシュを持っていたのでことなきを得たが)、後ろに並んでいた

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旅香記Ⅰ_NRT→AUH

旅香記Ⅰ_NRT→AUH

搭乗のタラップを渡っていたときに飛行場の銀翼たちを朱に染めていた夕陽は、機体が動き出す頃にはすっかり地平線に身を隠していたが、機体が浮き上がると、その残光が遠い山影の背で血のような色に溜まっているのが見えた。最近はずっと家にいるから沼部から多摩川の向こうに広がる夕焼けをよく見ているが、それは穏やかな薄桃色や紫色を見せていることが多いような気がする。こんな不気味な色の夕焼けはしばらく見ていない。

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