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インタビュー力とは「聞き出すチカラ・テクニック」ではない!

今朝の連ドラ「ちむどんどん」の話。

新聞記者である和彦は上司多良島に対しての不調に終わった取材の報告で「必ず聞き出します」と意気込んだところ、「お前何様だ!」と叱責されました。

実は私にも似た経験がありました。インタビュアーとしての修行の第一歩で師匠に抱負を問われた時、「本音が聞き出せるようになりたい」と答えました。それに対して師匠は鋭い眼光で「これだけは最初に一言言っておきたいが、何事も聞き出すのではないのです。話してもらうのです。」と返されました。

世に「聞き出すテクニック」や「聞き出すチカラ」のようなインタビュー観が氾濫している中、入門初日にこの訓戒をいただけたことは幸運でした。なぜならば、今になってみると、この一言こそがインタビュー調査の極意、真髄であると気付かされるからです。正に秘伝です。

こう申しますと前回述べたインタビューフローの違いは正にこのインタビュー観の違いによるものだと気づかれることと思います。アスキングタイプのインタビューフローは「知りたいことを聞き出す」発想で作られているのに対して、アクティブリスニングタイプは「知らないことを話してもらう」という発想で作られているのです。

後者には「自分には質問すら思いつかないような知らないことがあり、それがわからないと課題は解決しないかもしれない」という謙虚さがありますが、前者は「自分の知りたいことを聞き出せば課題は解決する」という発想なので傲慢です。これが「聞き出す」と言った時に「何様だ?」と言われる所以だと私には思われます。

結果として、後者では自分が気づいていなかったことが「発見」されますが、前者では、アンケート調査でもわかるような「当たり前のこと」や「わかっていたようなこと」しか聴取できないことが多く、インタビュー調査への満足度や信頼性を下げてしまうことになるわけです。

定性調査が「非構成的」なものでなければならない理由は紹介した公式の定義にも書かれていないわけですが、実はこれが本質的な理由だと言えるのです。すなわち、「構成的な質問で聞き出せること」というのは所詮は質問者が意識している領域のことなので、発見を生まないということです。一方、「発見」とは質問者の思いもしなかった意識されていない領域にこそ存在するので、構成的なアプローチでは見いだせないという理屈です。

そもそも定性調査を行う意義とはそのような発見にこそあるので、非構成的でなければその期待感に応えられないわけです。

とは言うものの、私自身、駆け出しの頃から最近まで「聞き出すのではなく話してもらう」といわれても正に禅問答としか感じられませんでしたし、「インタビューフローは広めの話題を提示する」といわれても、その理由を合理的に説明することができませんでした。師匠の経験則に基づいた指導をそのまま真似ていただけだったのです。

そのモヤモヤ感を一気に解消させたのが、過去の投稿で触れております論文や著作に紹介した「コミュニケーション領域における意識マトリクスマップ」(意識マトリクス)の発見です。我田引水となりますがこれは画期的な発見であり、過去、経験則的にしか説明できていなかったインタビュー調査、定性調査のあり方を、科学的な一気通貫のシステムとして説明できるようにするカギとしての働きを持っています。

すなわち、従来、インタビューというものは「職人芸」だと思われてきたわけですが、その「職人芸」を「システム」に置き換えることができるわけです。経験はもちろんあるに越したことはありませんが、経験の浅さが理論の理解・実践でカバーできるわけです。これはひいてはインタビュー調査の品質の安定、向上にも繋がってくるわけです。

次回はこの「意識マトリクス」とインタビュー調査の関係について述べたいと思います。


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