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「きれいな日本語」しか受け付けない日本人、さて損しているのは?

以前、知り合い経由で「日本に中国のライトノベルを売り出したい」という中国人を紹介されました。

なんでもアプリをリリースして、そこで中国のファンタジーライトノベルを翻訳したものを載せておけば、人気が出るんじゃないだろうかと思ったらしく、日本人である僕にイケそうかどうかのアドバイスがほしい、ということでした。

僕は、日本にはライトノベルの大きな市場がすでにあるので、よほど魅力のある作品がないと難しいんじゃないか……ということを言いつつも、まあ面白そうだしやってみたら、というようなことを伝えました。

そこで、じゃあこれはどう思う? と見せられた作品があったのですが……そこで少し、「ウッ」となりました。作品の翻訳が、あまりにお粗末だったからです。いわゆる「怪しい日本語」の域を出るものではなく、たとえば「勇者は王様に会って、酒場で仲間を収集して、魔物の討伐に行くをした」というようなレベルのものでした。

また、開発中だというアプリのUIも、ずさんなものでした。毎日ログインでコインを集めて新しいエピソードをアンロックしていく……というような、よくある仕組みのものだったのですが、「金20で新しい章を解鎖」みたいなものがゴロゴロありました。

小説のクオリティとか面白さ以前に、これじゃたぶん日本人には抵抗感が強いから絶対に流行らない、ネイティブの翻訳に頼んだらどうか……という提案をしてみたのですが、どうやらそこまでの予算は出せないよう。そこで話は終わってしまいました。その後、アプリがどうなったのかはわかりません。多分リリースすらされなかったのではないかと思います。

作品の中国語の原文を見せてもらっても、あまり魅力のある小説とは思わなかった(婉曲的表現)ので、たとえ多少日本語に気を遣ったとしても成功していたとはあまり思わないのですが、少し予算と時間をかけてちゃんとした日本語のものを出していたら、可能性はゼロではなかったかもしれないのにな……と思いました。

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このほかにも、人々が商売熱心な中国にいると「これ、日本でウケますかねえ」とか「日本人にこれを売りたいんだけど、どう思う?」とかいう相談をされることがあります。面白いアイデアや商品だなあ、と思うものもあれば、上述のように「うーんこれはちょっと……」というものもあります。

ただ、その多くに共通しているのが、「日本語ローカライズの時点でつまづく」ということなんですね。

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