バルテマイ

どの宗派にも教会にも属さない「無宗教主義キリスト者」です。長年に渡り、原典聖書を研究し…

バルテマイ

どの宗派にも教会にも属さない「無宗教主義キリスト者」です。長年に渡り、原典聖書を研究し、正文批評(写本の比較)も行ってきた経験から、聖書の本質的なメッセージを投稿していく予定です。また、話題は聖書に限らず、様々な分野(哲学・心理学・歴史・政治・経済・芸術など)にも及ぶ予定です。

最近の記事

物価高から生活を守る方法

今後も続く値上げラッシュ  最近,物価高が止まりません。それもそのはずです。なぜなら,円の価値が急速に低下しているからです。いわゆるドル高円安です。例えば,3年前の為替レートは1ドル=115円でした。しかし今や,155円に達しようとしています。具体的に申し上げれば,3年前5000円だった品物が約6700円に値上がったのです。しかも給料が上がらないので,家計は急速に苦しくなりました。  残念ながら,円安の傾向は今後も続くでしょう。理由は簡単です。通貨の価値は,長期的には国力に

    • 多様性重視の結末

      多様性重視の利点  人類は今まで,男性中心の社会でした。「女性は,男性を補佐し家庭に収まるべきであって,社会進出すべきではない」と考えられていたのです。しかし,こうした考えは人類にとって大きな損失です。なぜなら,女性の力を軽視することにより,人類の半数の能力を活用していないからです。  女性には,女性特有の力があります。調和・妥協・器用さ,これらは男性にない能力です。こうした女性特有の力により,今や多くの女性が政治や企業経営(マネジメント)において活躍しています。今まで家事

      • イエスの無宗教主義

        「弟子たちは,アンティオケアで初めて,クリスチャンと称するようになった」(使徒行伝11-26) キリスト教の誕生  クリスチャンの原語は,ギリシャ語であるΧριστος(キリスト)とラテン語であるianus(従う者)の合成語です。重要なのは,この言葉の意味ではありません。「弟子たちが他宗教と自分たちを区別し,独自の宗教としての自覚をもった」という事実です。 イエス・キリストは,他宗教と自分たちを区別しませんでした。つまり,「新しい宗教を創った」という意識がなかったのです

        • キリスト教の歴史~ローマ書解釈を中心に~

          福音 ローマ書とは何か?  新約聖書には27の文書があります。その中で,最も体系的に福音を解説した文書が,使徒パウロの主要書簡であるローマ書です。宗教改革者ジャン・カルヴァンが述べたように,ローマ書は聖書の中心と言えるでしょう。  ローマ書は,その絶大の感化力により,多くの人々に影響を与えてきました。アウグスティヌスはローマ書を読んで回心し,異民族の侵入により大混乱する古代末期に福音を弁護。ヨーロッパ中世の礎を築きました。ルターはローマ書を読んで回心し,欧州全土を敵に回

        物価高から生活を守る方法

          信仰と倫理

          「それ故,善い実を結ばない木は,切り取られて火に投げ入れられる」(ルカ伝3-9) 写本の比較  太字の文字には,三つの読みがあります。第一に,本文として採用されている「善い実(単数)」です。ほとんどの写本は,この読みを支持しています。第二に,「実」です。この読みを支持しているのは,3世紀のパピルスやラテン語訳,及び,古代の教父オリゲネスです。第三に,「善い実(複数)」です。この読みを支持しているのは,ベザ写本やシリア語訳など西方型の写本です。果たして,どの読みが正しいの

          経済学の陥穽

          経済学の歴史 経済学の誕生  経済学は,アダム・スミスから始まりました。アダム・スミスは,ニュートンが自然界を合理的に解明したように,社会を科学的に分析しようとしたのです。名著「国富論」にて表明されたアダム・スミスの経済理論は,三人の経済学者に受け継がれました。リカードとマルサスとマルクスです。リカードは資本家の立場から,マルサスは地主の立場から,マルクスは労働者の立場から,経済学を発展させました。ちなみに,ここまでの経済学説を「古典派経済学」と呼びます。古典派経済学の

          経済学の陥穽

          宗教を超越した神

          唯一神教の誕生 古代ギリシャの宗教改革  現代の唯一神信仰は,ユダヤの宗教とギリシャの哲学によって形成されました。ユダヤ民族は信仰の方面から,ギリシャ民族は知識的方面から,唯一神教の誕生に貢献したのです。ここで皆さんは疑問に思われるはずです。「ギリシャ人は多神教の民であって,唯一神教に関係ないのではないか!?」と。いいえ,決してそうではありません。オリンポス十二神の多神教は,エレア学派の哲学者たちによって哲学的唯一神教に変貌したのです。  まず先陣を切ったのは,エレア派

          宗教を超越した神

          人格的成長とその目安

          抑圧した自己 心の構造  人間の心の中には,意識と無意識があります。意識とは,感覚・思考・感情・直感を司る領域であり,一般的に自我(エゴ)と呼ばれています。無意識とは,意識されない心の領域であり,良心(超自我)が許せない欲求を押し込めた世界です。この抑圧された欲望を,心理学では影(シャドー)と呼びます。  フロイトの著作では,性犯罪者である牧師の話が登場します。この牧師は,善良かつ真面目な人間であり,村でも聖人のように尊敬されていました。しかし,無意識に押し込めた性的欲

          人格的成長とその目安

          贖罪の信仰

          「すべての人は,罪を犯したので,神からの栄誉を受けることができず,ただ神の恵みにより,キリスト・イエスの贖いのゆえに,価なしに義とされるのです」(ローマ書3-23・24) 聖書の中心  新約聖書の中心的真理とは,一体何なのでしょうか?最後の審判でしょうか?いいえ,最後の審判はユダヤ教にもあります。隣人愛でしょうか?いいえ,愛(慈悲)の推奨は仏教にもあります。人間の聖化でしょうか?いいえ,禁欲的生活はストア主義にもあります。教会の概念でしょうか?いいえ,強固な教会組織はイ

          宗教団体による「騙しのテクニック」

          聖書と教会  聖書が成立して,その後に教会が誕生したのではありません。教会が誕生して,教会の手によって聖書が成立したのです。前者の視点に立つ時,私たちは聖書を盲目的に信頼してしまいます。しかし,後者の視点に立つ時,聖書を批判的に研究しようと試みます。なぜなら,聖書は教会のフィルターを通っているのですから。  今申し上げたことを,年代順に整理しておきましょう。まず,「イエスや使徒の宣教」という歴史的事実がありました。この歴史的事実を題材にして,教会は文書を作成しました。これが

          宗教団体による「騙しのテクニック」

          プロテスタンティズムの倫理と効率的市場仮説

          プロテスタンティズムの倫理  カルヴァン神学の特徴は,「神の絶対性」を徹底したことです。すべては神の御業であり,すべては神の御心です。人生の幸不幸を決めるのは神です。事業の成功と失敗を決めるのも神です。誰と結婚するか決めるのも神です。もちろん,誰が救われるか決めるのも神です。神は,予め「救われる人間」と「滅びる人間」を定めておられる。これが,カルヴァン神学の予定論です。  絶対的な神の観念を抱く時,人間は疑問に思います。「果たして私は救われる定めなのだろうか?」と。しかし,

          プロテスタンティズムの倫理と効率的市場仮説

          大衆社会の病理~松本人志氏の性加害問題について~

          はじめに  お笑い芸人・松本人志氏の強制性交事件が話題になっております。そして,様々な意見がSNS上で飛び交っています。肯定派は言います,「女性の権利を踏みにじった奴は,厳しく裁かれるべきだ」と。しかし,否定派は言います,「今さらしゃしゃり出てくる女は,金銭目的に違いない」と。一方で,無関心派は言います,「有名人の女遊びなど興味ないから,どーでもいい」と。  私は,今回の事件に興味を持ちました。なぜなら,日本社会の病理が明るみに出たからです。今回の記事は,松本人志氏の事件に

          大衆社会の病理~松本人志氏の性加害問題について~

          13番目の使徒

          使徒とは何か?  聖書における使徒とは,イエス・キリストの弟子です。別の言い方をすれば,キリストに遣わされて福音を説く者です。しかし,聖書の文書によって,中心となる使徒が異なります。 マタイ伝  マタイ伝におけるキリストは,律法を重視します。なぜならマタイ伝は,パレスチナ原始キリスト教会の立場によって書かれたからです。故に,マタイ伝における真正の使徒は,教会の権威であるペテロです。 ルカ文書  ルカ伝におけるキリストは,ギリシャ文学の様式を用います。なぜならルカ文書

          13番目の使徒

          自由と必然

          二つの人生観  人生は運命なのでしょうか?それとも,人間の意志次第なのでしょうか? 運命論者は言います,「すべての出来事は予め決まっている」と。あるいは,「歴史は神の世界計画である」と。ならば,私は聞きたい。「もし全ての出来事が神の計画であるなら,人間は神の操り人形である。ならば,何のために人間は生まれてきたのか?」と。  自由論者は言います,「人生の醍醐味は,未知なる可能性を切り拓くことである。人間は何にでもなれる!」と。ならば,私は聞きたい。「確かに,努力によって,ある

          トルストイのメッセージ

          ロシア文学  ロシア文学の特徴は,驚愕すべき壮大な発想力にあります。もしかしたら,どこまでも広がる遠大な大地が,ロシア人の性格をそうさせたのかもしれません。プーシキンからトルストイに至るロシア文学の目標は,全人類の救済であり,最後の調和であり,終末論的世界です。  ロシア文学は,ドストエフスキーとトルストイにおいて絶頂に達しました。ドストエフスキーの作品は,究極の悲劇であり,きわめてヘブライ的です(あたかも旧約のヨブ記を読む感覚)。一方で,トルストイの作品は,叙事詩的であり

          トルストイのメッセージ

          聖書の正しい解釈法~ルカ伝を通して~

          はじめに  思想を理解するためには,確認すべき三つの事柄があります。第一に,人物です。抽象的思想の背後には,必ず,生きた具体的人間がいることを忘れてはなりません。第二に,マクロ的観点である世界観です。いくら思想の細部を研究しても,その全体像を把握しなければ意味がありません。第三に,ミクロ的観点である言語観です。その人物が用いた言葉の意味連関組織です。これら三つを総合して,初めて,思想の本質が浮かび上がるのです。 ルカとは誰か? ギリシャ的教養人  福音書記者ルカとは,

          聖書の正しい解釈法~ルカ伝を通して~