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「世界地理から観た宗教」第二回 福音の誕生


はじめに


 神は宇宙第一の名将です。神は,ご自身の経綸を実行するため,この地球を創造し,諸民族を配置されました。そして,時満ちて(ガラテヤ書4-4),救世主をこの世に遣わしました。どこに遣わしたのでしょうか?それは地球の中心です。高遠な大戦略を有する神は,アレキサンダーが敵陣中央を攻めたように,世界の中心に救世主を遣わされたのです。

ユダヤの地理的特徴


①  世界の中心


 ある地理学者が述べたように,この地球には一つの大陸と無数の島々があります。一つの大陸とはユーラシア大陸です。ユーラシア大陸は三つの大陸によって構成されます。アジア大陸とアフリカ大陸とヨーロッパ大陸です。これら三大陸の中心に位置するのが,古代ユダヤ国でした。簡単に検証してみましょう。



 アジア大陸は平原的大陸です。中央に位置するパミール高原を中心に,北にシベリア平原,南にインド平原,東に中国平原,西にイラン平原とチグリス・ユーフラテス川の平原が広がっています。一方で,アフリカ大陸は高原的大陸であり,ヨーロッパ大陸は半島的大陸です。そして,三つの大陸が交差する西アジア周辺は,これら三大陸の性質が混在しています。ヨーロッパ諸国の一つであるロシアはアジア的であり,アラビアやスペインは土地の構造や歴史的経緯からアフリカ的です。アフリカ北端はヨーロッパ的であり,エジプトのナイル川河口付近はアジア的,トルコの一部である小アジアはヨーロッパ的です。
 つまり,地球の主要舞台はユーラシア大陸であり,ユーラシア大陸の中心は西アジアであり,西アジアの中枢はユダヤです。この新潟県ほどの小国が,地理学的にいう世界の中心なのです。現に,マケドニア(ヨーロッパ大陸)の王アレキサンダーがエジプト(アフリカ大陸)やインド(アジア大陸)を征服する際,必ずこのユダヤを通過しなければなりませんでした。

②  閉鎖的な地形


 特殊な文化を形成するためには,閉鎖的な空間が必要です。日本文化の独自性が遣唐使の廃止によって開花したように,独特な文化や宗教を醸成するには閉鎖的な国土が必要です。福音の誕生を予定されたユダヤは,まさしくそういう国土でした。
 北にはレバノン山脈があり,ユダヤへの侵入を妨害しています。東にはシリア砂漠,南にはシュール砂漠があり,まるで外部との交流を拒むようです。その上,西の地中海沿岸には良港がなく,フェニキアのように海外と交流することはできません。実に不思議な地形です。ユダヤは,世界の中心でありながら,最も閉鎖的な地形なのです。しかも,ナイル川とチグリス・ユーフラテス川の中間に位置するので,常に大国と大国の政治的衝突に翻弄されました。

③  変化に富む国土


 もしこの閉鎖的な地形が変化に乏しいのなら,ユダヤに住む人々は単調な性格を帯びたに違いありません。同じセム人種であるアッシリア人やフェニキア人を観て下さい。鉱物資源しかないアッシリアは軍事に特化し,良好な港湾しかないフェニキアは商業に特化しました。しかし,ユダヤの国土は「世界の縮小版」と称されるほど,非常に変化に富む気候・風土を有していました。



 北のヘルモン山には永久の雪があり,イエスが生まれたガリラヤは草花の豊かな温帯でした。西のキション川河口は麦の産地であり,エリヤで有名なカルメル山にはぶどう畑が広がっていました。逆に,死海とその西にある荒れ野は,生物が棲息できない不毛の地でした。預言者はこの地にて孤独になり,独り神の啓示を受けたのです。南方のアラバ窪地あたりは熱帯的であり,南端は完全にアラビア的です。つまり,ユダヤは気候的にも世界的なのです。
 気候だけではありません。生き物も世界的でした。この狭い国土には,植物が3000種,ほ乳類が100種以上,鳥類が340種棲息していました。土産と共に,温帯やアフリカ産・インド産の動植物が混在していたのです。

ユダヤの歴史


ユダヤ教の確立


 神は,まず初めにモーゼを遣わしました。ユダヤ人に律法を与え,道徳的で高貴な民族を形成するためです。ダビデによってユダヤ国が形成され,その子ソロモンによって全盛期を迎えました。この時までに,ユダヤ民族は律法に基づく唯一神教を確立。ユダヤの宗教的な基礎固めが終わりました。そして,いよいよ救世主を迎える準備をしなければなりません。ユダヤ民族の宗教を徹底的に改革し,全人類を救う福音にまで昇華しなければなりません。そこで神は,四方を敵国で囲み,多くの試練を通してメシア降臨の準備を始めました。

「神である主はこう仰せられる。『これがエルサレムだ。わたしはこれを諸国の民の真中に置き,その回りを国々で取り囲ませた』」(エゼキエル書5-5)

福音の誕生


 ユダヤ民族を蹂躙すべく,多くの大国が侵略の魔の手を伸ばしました。まず初めに,軍事国家アッシリアです。アッシリア侵攻による国家的危機の時代,腐敗した国民に警鐘を鳴らすため,神はアモスやイザヤなど多くの預言者を遣わしました。アッシリア崩壊後,ユダヤを滅亡の危機に追いやったのは,ネブカドネザル率いるバビロニア大帝国でした。国家が滅亡に突き進む中,国民を道徳的に覚醒させるべく,神はエレミヤやエゼキエルなど多くの預言者を遣わしました。こうして,国難を通して神の観念が浄化され,唯一神教は内在的に深められ超越的に高められました。
 そして遂に,ローマ帝国の時代(パクス・ロマーナ),神はこの地にイエス・キリストを遣わしました。イエス・キリストこそ,人類を救う福音であり,地球創造の目的を成就する要石です。イエスの死後,ユダヤはローマ帝国に滅ぼされました。まるで古代ユダヤは,救世主を産み出すために存在したかのようです。

「キリストはこの大地が神を生み出しえた限りの,紛れもない神である」(ドストエフスキー「未公刊ノート」)
 

以下は参考書籍及び動画です。



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