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「世界地理から観た宗教」第一回 予言書としての地理

「神はご自身を探し求めさせるために,諸民族を時と場所に応じて配置された」(使徒行伝17-26・27)
 


はじめに


 神は,何らかの意図をもって人類を創造されました。そして,人類を導く舞台として,この地球を創造されました。もし歴史を演劇とすれば,地理はその舞台です。舞台なくして演劇が成り立たないように,世界地理を無視した歴史は意味がありません。特有の地形や風土が特殊な民族を形成し,その特殊な民族が独特の宗教を形成しました。故に,宗教を究めんと欲する者は,まず地理から学ばねばなりません。

「地を離れれば人なし。人を離れれば事なし。故に事を成さんと欲する者は,地理を学ぶべし」(吉田松陰)

地理の三大要素


①  山脈の役割


 世界地理は三つの要素によって構成されます。山脈と平原と海洋です。まず,山脈の特徴から考察しましょう。山脈は,国家の境界を作る役目を果たします。なぜなら,高い山脈の存在により,人間の交流が分断され,独自の文化が形成されるからです。山脈には二種類あります。東西に広がる山脈と南北に縦断する山脈です。
 東西山脈は,国家を分離させます。アルプス山脈はドイツとイタリアを分断し,ピレネー山脈はフランスとスペインを分離しました。一方で,南北山脈は,国家を合同させます。アペニン山脈はイタリア半島を統一させ,ロッキー山脈はアメリカを合同一致させました。

②  平原の役割


 平原は,政治・経済の中枢となります。なぜなら,広大な土地の存在は,都市成立の必要条件であり,豊穣な土地は多くの国民を養いうるからです。徳川家康は関東平野に注目し,小田原ではなく江戸に幕府を構えました。また,豊臣秀吉は尾濃平野に注目し,京都ではなく大阪に本拠地を定めました。

③  海の役割


 海は,国家と国家を交流・連絡させます。なぜなら,海の浮力と海流の存在が,人々の移動を容易にするからです。地中海はアジアとヨーロッパを繋ぎ,大西洋はヨーロッパとアメリカを繋ぎ,太平洋はアメリカとアジアを繋ぎました。また,インド洋が中東(アラビア半島)と東南アジア(インドネシア)を繋いだことは,イスラム教の流布に鑑みれば明らかです。

大陸の性格


①  アジア大陸



 山脈と平原と海の配置や規模により,各大陸の特徴が明らかになります。アジア大陸は大山脈や大平原・大河川が多く,構造は粗大ですが高原さわやかな地形です。もし世界史を人類の成長過程とすれば,アジア大陸は少年時代を過ごすべき起源的大陸です。

②  ヨーロッパ大陸



 ヨーロッパ大陸は東西山脈が多く,同程度の国家が並存する地形です。人間には友人と切磋琢磨する青年時代が必要であるように,ヨーロッパ大陸は青年期を過ごすべき訓練的大陸です。

③  北アメリカ大陸



 北アメリカ大陸は南北山脈が多く,一つにまとまるべき地形です。また,大平原の存在は,政治・経済的に大躍進する国家を暗示させます。人間は壮年期において理想を実行するように,北米大陸は成熟した人類の実行的大陸です。
 以上,大陸の地理的性格により,人類史はアジア→ヨーロッパ→アメリカと流転するように思われます。事実,文明の歴史は,この順路に沿って進行しました。「ヨーロッパ文明史」の著者フランソワ・ギゾーが喝破したように,世界史は地球の自転と逆向きに進むようです。

歴史の始まり


 地球最大の大陸であるユーラシア大陸は,パミール高原・スレイマン山脈によって二つに分離しています。この地から西に進んだ文明が西洋文明であり,東に進んだ文明が東洋文明です。つまり,パミール高原・スレイマン山脈付近が,人類史の出発点と言えるでしょう。
 文明は,山によって分けられ,海によって合一します。パミール高原・スレイマン山脈から西に向かった西洋文明は,西アジア→ヨーロッパ→アメリカと流転し,太平洋で尽きました。一方,パミール高原・スレイマン山脈から東に向かった文明は,インド→中国→朝鮮半島と流転し,太平洋で尽きました。世界最高山(スレイマン山脈)から発した二つの文明は,世界最広海(太平洋)で一つに合流され,人類は「新文明という新たな道」を歩み始めるのです。
 

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