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日本の税金 第3版 (岩波新書)三木 義一

この本は、日本の税金入門書として書かれた本です。「税金のことはよくわからない」と、ブーたれて文句言い続けのでなく、まず現在の税制を理解できるようにとの想いで書いてくださったそうなのです。

前回、週一文庫で取り上げた本で、税金に興味を持って、もうちょっと深掘りしたいと思って手にとりました。買ってから気がついたのですが、著者同じの一冊ですね。

▼前回の週一文庫はコチラ

消費税と派遣社員

一番おもしろかったのは、P99第3章 消費税

多くの消費者は、「消費税」という名前からして消費者が負担しなくてはいけない税金だと考えているようだ。しかし、消費税法は納税義務を「事業者」(五条)に課しているのである。つまり、納税義務を負うのは事業者であって消費者ではないので、あなたが「消費税は払いません」と言っても一向にかまわなかったのである。そうすると、業者は「それならコーヒーは売りません」というだけの話である。このあとは消費者と業者の事実上の力関係で決まる。(中略)
もし消費者が納税義務を負っている税金であるなら、スーパーが勝手に「消費税還元セール」をやるのは違法なことになるはずである。


税制度そのものがおもしろいので、「一番」を決めるのに苦労しましたが、増税文脈でも気になる「消費税」をピックアップしました。

消費税の面白さは、こんなところにあると思います。

消費税を収めるのは、事業者の義務であり消費者の義務ではない。

「そんなことわかっているよ!」という声が聞こえてきそうですが、深堀りすると面白いんです。

「消費税還元セール」という言葉聞いたことないでしょうか?

でも、この言い方NGなんです。

実態は、消費税と同額分値引きをしている。というだけですが、"還元"という言葉を使うと、あたかも「消費税」そのものが発生していないかのように見えてしまうので、NGなんだそうです。

それはなぜか?

繰り返しますが「消費税を収めるのは、事業者の義務であり消費者の義務ではない」んです。

つまり、消費者/購買客が負担するものではないので、"還元"という表現自体がそもそも正しく無いのです。そんななかで、還元という言葉を使ってしまう=事業者→消費者に消費者を還元となると、一体消費税はどこへやら......

したがって、「消費税還元セール」なる表現はNGなんです。

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」という、くっそ長い名前の法律によって規制されています。

第三章 消費税の転嫁を阻害する表示の是正に関する特別措置

第八条 事業者は、平成二十六年四月一日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について、次に掲げる表示をしてはならない。
一 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示
二 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの
三 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって前号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの

じゃあ「消費税別途◯%を申し受けます」とは何なのか?

これを象徴しているのが、ケンタッキーフライドチキンの軽減税率に対する対応です。

外食産業の税率は、増税&軽減税率によって、
・テイクアウトは消費税8%,
・店内飲食は消費税10%

となる予定です。

そんななか、ケンタッキーフライドチキンは、オリジナルチキンでいうと、いずれの場合も、それぞれ現価格と同じ「税込み250円」とすると公言したのです。

その際、テイクアウトは本体価格231円、店内飲食は本体価格227円になります。

上記から改めてわかるとおり、本体価格をいくらにするかは、売り手に決定権がある。消費税部分に関しての決定権は無い。そういうことになります。

だから、"消費税還元"という言葉は成り立たなくなるのです。

(まあ、表現そのものとしてはわかりやすいとは思うんですけどね... 正しくはない)

ここまで来て想定されるのは、「え、じゃあ消費税分って、買い物するとき払わなくていいお金なんじゃない...?」ということ。

実際そうらしい(少なくともこの本によれば)。

ただし、
買い物客「消費税分は払いたくありません。本体価格だけ払います」
と言うと
売り手「じゃあ、売りません」

となるだけだそうです。


消費税が派遣労働を促進する?

続いてP130

会社が従業員に支払う給料は課税仕入ではない。人件費は企業の付加価値の一つで、サラリーマンは事業者ではないからである。つまり、企業からすると、従業員に給料をいくら支払っても消費税は減らない。これは法人税の場合と大きく異なり、法人税の場合は、益金から損金を控除した所得に課税され、損金の中には当然従業員給与も含まれるのである。
 企業としては、人手は必要だが、消費税も減らしたい。減らす方法はないかと当然考え、派遣労働を「活用」することになる。

仕入れにも、消費税はかかっています。

ケーキをつくるために、いちごを仕入れたら、そりゃ当然そのいちご購入費にも消費税はかかります。

同様に、労働力という仕入れを外から買ってきたら(つまり派遣雇い入れなどしたら)、そこにも消費税はかかります。

こういった"課税仕入"は、支払う税金を計算する際、控除の恩恵を受けます。

でも、会社→従業員に支払う給料は、"課税仕入"ではなく"給与"であるので、制度は異なります。控除の恩恵を受けることはできません。

したがって、同じ労働力1を手に入れるときに、"従業員"or"派遣労働者"であれば、"派遣労働者"を雇い入れた方が、お買い得であるといえる。

そういうことだそうですよ。


会社にとってのお買い物

大学を卒業して会社員になり、取引先に見積書を提出するようになる。そのとき「消費税」と見積書に書くのが、なんとも不思議な感覚でした。

いつもなら、消費者として支払っている感覚でいるところ、請求をする側に変わったからです。

でも実態として、消費税額込みで取引先と会話をすることは、あまり無い感覚です。基本的には、消費税別途(本体価格)での会話がほとんどだと思います。

こうした方が話はスムーズだというのもありますが、なんとなく税から目を反らした方が楽だから。というのもあると思います。

気を抜けば、誰だって(もちろんじぶんだって)"楽"に流れてしまうと思うけれども「そんなんじゃいけないんだよね」と思うのが最近のじぶんです。

ちょっとぐらい気にして生きていこうと思います。


終わりに


「本を読んだり、新しいこと知るのは興味あるけど、そんな時間無い!」という方、ぜひこの #週一文庫 のマガジンをフォローしてください! 代わりに毎週じぶんが何かしら本を読んで2,000文字程度で紹介します!

ビジネススキルのような、明日すぐに使えるものでは無いけれど、雑学として知っておくと日常がちょっと面白くなる。そんな書籍を紹介し続けていきたいと思っています。


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