マガジンのカバー画像

#週一文庫

36
毎週1冊の文庫もしくは新書を読み、その本の中でじぶんが一番おもしろいと思ったところを引用しながら、「なぜおもしろいと思ったのか?」を踏み込んで解説。 いわゆる書評ともちょっと違う… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

34本の読書記録を書いての振り返りと、これからのアップデート

はじめに:「#週一文庫」とは「#週一文庫」と銘打って、読書ブログを続けていました。 今年の始めからスタートし、週一冊の文庫本もしくは新書を読み切り、その書籍のおもしろさを抜書きしつつ紹介するものです。ちょこちょこ抜けはありますが、それでも基本的には続けました。 ルールをシンプルにすることで、とにかく続けることを大事にしました。 一番ビュー数があったのが「ナボコフの文学講義」で、 一番いいね数が多かったのが「吉原はこんな所でございました」 でした。 ま、他クリエイタ

習慣の力(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)チャールズ デュヒッグ

この本は、「習慣」が人間にどのような影響を与えるのかを書き記した一冊です。個人から組織にいたるまで、様々な事例や研究結果を基に、良い方向に動いたものだけでなく、悪い方向に行ってしまった例も取り上げられています。 その「習慣」に抗えたか一番おもしろかったのは、P376-377 第9章 習慣の功罪--ギャンブル依存は意志か習慣か 習慣は---たとえ、いったん頭に刻み込まれたとしても---定まった運命ではない。私たちは習慣を選ぶことができる。(中略) 私たちは毎日、何百という

吉原はこんな所でございました 廓の女たちの昭和史 (ちくま文庫) 福田 利子

この本は、吉原の地にあった料亭「松葉屋」の女将 福田利子さんが、吉原という地がどういったところであったのかを、実体験や文献を頼りに描き上げてくださる一冊です。 吉原とて、貸座敷のみにあらず一番おもしろかったのは、P76-78 二章 私が松葉屋に来たころ 吉原の仕組み 三業組織と申しますのは、貸座敷、引手茶屋、芸者屋の三つの業種のことで、この三つの業種に分かれていることによって、また別の見方をすれば、この三つの業種が一つになっていることで、吉原遊廓の中に格式が生まれていたと

ぼくのマンガ人生 (岩波新書)手塚 治虫

この本は、みなさんご存知のマンガ家「手塚治虫」が、幼少期にマンガと出会い、マンガに助けられ、そしてマンガを描き続けてきた自身の人生について、改めて振り返りながら、自分がどのようにして「マンガ」、ひいてはマンガを通じて「人」と、向き合ってきたかを書き記した一冊です。 「好きだから」で選べるか一番おもしろかったのは、P72 「生命の尊厳」がぼくのテーマ より ぼくは医者になれたらいいなとも考えていましたし、マンガも描きたいと思っていました。そしていよいよ進路を決めなければなら

居酒屋の誕生: 江戸の呑みだおれ文化 (ちくま学芸文庫) 飯野 亮一

この本は、江戸の頃にできてきた「居酒屋」の誕生期について、当時の文献から明らかにしていく一冊です。徳川の時代における禁止令の話や、それでも止めることのできなかった世俗の様子。またどんな風にして飲まれていたのかということがわかるようになります。 変わらない飲み人たち、変わる居酒屋の経営一番おもしろかったのは、P100-101 酔っぱらい天国・江戸 「われわれの間では誰も自分の欲する以上に酒を飲まず、人からしつこくすすめられることもない。日本では非常にしつこくすすめ合うので、

横井軍平ゲーム館「世界の任天堂」を築いた発想力 (ちくま文庫) 横井 軍平、牧野 武文

この本は、横井軍平氏がこれまで関わってきた「マジックハンド」や「ゲームウォッチ」「ゲームボーイ」などといった玩具たちについて、どんな思いで、どんな苦労をして生み出してきたかを語り尽くした一冊です。 ゲームの本質を外に活かす一番おもしろかったのは、P217 218 第5章 横井軍平の哲学 今までは、ゲームの世界で「枯れた技術の水平思考」、つまりある技術をそのままストレートに活用するのではなくて、別の発送のもとに活かすということをやってきたわけです。でも、ゲームの世界はある程

最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常 (新潮文庫) 二宮 敦人

この本は、奥さんが芸大出身の方が、藝大生にインタビューをしながら書かれた本です。傍から見るとちょっとビックリするような、藝大生エピソードを、いわゆる"一般人"としての著者の視点で掘り下げていってくれる一冊です。 研究旅行一つとっても、一味違う一番おもしろかったのは、P9 はじめに 「何か準備してるみたいだけど、旅行にでも行くの?」 妻はリュックサックにせっせと物を詰めている。 「明日からコビケンなんだ」 「コビケンって?」 「古美術研究旅行。二週間、奈良の宿舎に止まって、

科学の方法 (岩波新書 青版 313)中谷 宇吉郎

この本は、自然科学の本質的な考え方とは、どのようなものであるのか。またそれは、どのような方法を用いているのか。どんな限界があるのかを書き留めた一冊です。 可能な限りで再現性を追いかける一番おもしろかったのは、P80 五 解ける問題と解けない問題 しかし自然のほんとうの姿は、永久に分からないものであり、また自然界を支配している法則も、そういうものが外界のどこかに隠れていて、それを人間が掘り当てるというような性質のものではない、という立場をとれば、これがほんとうの自然の姿なの

日本の税金 第3版 (岩波新書)三木 義一

この本は、日本の税金入門書として書かれた本です。「税金のことはよくわからない」と、ブーたれて文句言い続けのでなく、まず現在の税制を理解できるようにとの想いで書いてくださったそうなのです。 前回、週一文庫で取り上げた本で、税金に興味を持って、もうちょっと深掘りしたいと思って手にとりました。買ってから気がついたのですが、著者同じの一冊ですね。 ▼前回の週一文庫はコチラ 消費税と派遣社員一番おもしろかったのは、P99第3章 消費税 多くの消費者は、「消費税」という名前からし

給与明細は謎だらけ (光文社新書) 三木義一

この本は、主にサラリーマンの給与明細に関係する税とその控除に関連する基礎的な内容や、その制度にまつわるここ数十年の間に起きた様々ないざこざなどを、皮肉たっぷりに取り上げる一冊です。 会社の財務三表や、株取引に関する書籍は数あれど、手元の財布に影響する、税やその控除について詳しく説明してくれる本は意外と読んだことなかったので手に取りました。 ぜひこのnoteの最初の章「一年間、いくらあったら最低限の生活ができる?」について、数字を思い浮かべてから読み進めてください。 一年

痛快! コンピュータ学 (集英社文庫)坂村 健

この本は「コンピュータって一体何をしているの?」「誰が開発してどんな風に育ててきたの?」「えっ、コンピュータが広まった背景にはそんな事情があったんだ!」といった、コンピュータにまつわる原理的・歴史的事柄をまとめた一冊です。数式だらけになったりはしないので、専門知識は持ち合わせていなくても気軽読める内容です。 読み終わってからTRONについて調べ始めて知りましたが、日本では知らぬところでTRONが結構使われているようですね。wikipediaによれば、ニンテンドースイッチのO

方法序説 (岩波文庫) デカルト

この本は、有名な「我思う故に我あり」の言葉が書かれているデカルトの書物です。フルネームでは、『理性を正しく導き、学問において心理を探求するための方法の話[序説] 加えて、その方法の試みである屈折光学、気象学、幾何学』というタイトルなんだそうです。近代合理主義の基となった考えというのが、一体どのようなものでるのか知りたくて手にとりました。 いずれはこちらも読まなければと思っており、まずはデカルトから。 後から続くものに道を遺す一番おもしろかったのは、P83-84 第6部

ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験 (光文社新書) 大鐘 良一, 小原 健右

この本は、2008年に日本で実際に行われた宇宙飛行士選抜試験の様子を、つぶさに記録したドキュメンタリーです。帯にも書かれている通り、宇宙兄弟を観たり、読んだりしている方には絶対オススメしたい一冊です。 NHKが取材を行ったものであり、ドキュメンタリー番組自体は今も観ることができます。 なぜ、今ここにいるのか?一番おもしろかったのは、P200-203 第4章 NASAで試される"覚悟" まず声をかけたのが、リンゼー氏だった。 「ノリ、アオイ? NASAへようこそ。私の名前

問い続ける力 (ちくま新書)石川 善樹

この本は、予防医学で有名な石川善樹先生が、出口治明氏(ライフネット生命創業者)や若林恵氏(元WIRED編集長)といった、”考える達人”に行ったインタビューを編纂しつつ、彼らのような”考える達人”たちが、いかにして問を立て、物事を考えているのかということを浮き彫りにしていく一冊です。 遠くまで考えつづける歩き方一番おもしろかったのは、P232-233 松嶋啓介--アートとは何か? 土地を感じるために、自分を空っぽにする 修行中は「シェフ、なぜこれを考えたの?」と聞いていた。