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痛快! コンピュータ学 (集英社文庫)坂村 健

この本は「コンピュータって一体何をしているの?」「誰が開発してどんな風に育ててきたの?」「えっ、コンピュータが広まった背景にはそんな事情があったんだ!」といった、コンピュータにまつわる原理的・歴史的事柄をまとめた一冊です。数式だらけになったりはしないので、専門知識は持ち合わせていなくても気軽読める内容です。

読み終わってからTRONについて調べ始めて知りましたが、日本では知らぬところでTRONが結構使われているようですね。wikipediaによれば、ニンテンドースイッチのOSでも使われているそうです。


宇宙を形作る「第3の要素」

一番おもしろかったのは、P55-56 第2章20世紀を変えた情報理論

19世紀から20世紀にかけての100年間は物理学の時代であったと言えます。(中略)ところが、「物理学だけでは解き明かせないものがある。それが情報だ」と言ったのがシャノンだったのです。
たとえば、ここに16本のマッチ棒があったとします。そのマッチをテーブルの上に投げれば、バッチ棒はバラバラに散らばってしまうわけですが、その同じ16本のマッチを図(P.56)のように並べると、そこには「SOS」の文字が現れてきます。
乱雑に散らばったマッチとSOSの形に並んだマッチ--この2つの状態は人間の目から見れば明らかに違います。
しかし、これを物理学の観点から見たら、どうなるでしょう。
どちらのマッチも、物質というメンから見ればまったく違いはありません。また、エネルギーの面から見ても、区別はできません。つまり、物理学ではマッチ棒が示している「SOS」という情報は読み取れないということなのです。

確かに物理学の範疇ではないという再発見が気持ちよかったです。


よく「重いデータ」「軽いデータ」なんていいますが、実際に質量があるわけではないことは当然みなさんも知っていると思います。

でも遥か昔、のろしで合図を送っていた時代にあれば、「重いデータ」「軽いデータ」なんてことは無かったと思います。郵便が発達した時期であれば、手紙の枚数で「重い」「軽い」はあったかもしれません。それでも、同じ紙に文字を書いていたからといって、みんな同じ文字数で書いているわけはないのだから、やっぱり手紙の重さを以て、データの重い/軽いを判断するわけにはいかないと思います。100枚の手紙が届いたかもしれないけれど、1枚1文字、計100文字しかないかもしれないし、1枚に100文字書いてあるかもしれないです。

コンピュータを扱う世紀になって、ようやっと情報の「重さ」を測ることのできる、情報・通信に関する数学的学問が出来上がってきたというわけです。それがクロード・シャノンの出したもののうち、「ビット」と呼ばれる単位でもあると。

そして測定可能であるということは発展すれば、

P65 「世の中の、ありとあらゆる情報はビットの単位に分解できる」

ということでもあり、この基礎があるからこそ、文字も画像も動画も音楽も、コンピュータで取扱いやり取りすることが可能になっているというわけです。

そしてもう一つおもしろいのが(wikipedia見て知ったのですが)、情報理論においては、情報が何を意味しているのかは取り扱わないそうです。あくまで定量部分のみ指し示すと。

だから、100キロバイトの文章データと、3メガバイトの画像データというものがあったら「そういうものがある」という認識までで踏みとどまり、中身がどうであるかは気にしない。

国家機密の文書も、『ランチなう』から始まる雑記ブログも、情報理論においては同じ「100キロバイト」のデータでしかないし、軍事衛星が撮った写真も、虹色のアイスクリームの写真も、情報理論においては同じ「3メガバイト」のデータでしかない。

「学問」と割り切ると、ここまで極端にモノを扱うから、例を考えると吹き出してしまうようなことがありますが、情報理論も結構なものです。

情報理論についてより深く知ろうと思ったら、この本がよいと聞きました。

アマゾンのほしいものリストに入りっぱなし。数学そのものの存在は好きなのですが、いざ手を出すとなると腰が引けてしまって......



終わりに

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ビジネススキルのような、明日すぐに使えるものでは無いけれど、雑学として知っておくと日常がちょっと面白くなる。そんな書籍を紹介し続けていきたいと思っています。


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