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最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常 (新潮文庫) 二宮 敦人

この本は、奥さんが芸大出身の方が、藝大生にインタビューをしながら書かれた本です。傍から見るとちょっとビックリするような、藝大生エピソードを、いわゆる"一般人"としての著者の視点で掘り下げていってくれる一冊です。

研究旅行一つとっても、一味違う

一番おもしろかったのは、P9 はじめに

「何か準備してるみたいだけど、旅行にでも行くの?」
妻はリュックサックにせっせと物を詰めている。
「明日からコビケンなんだ」
「コビケンって?」
「古美術研究旅行。二週間、奈良の宿舎に止まって、京都や奈良の仏像を見学するの」
「なるほど、お勉強か。大変そうだね......」
「藝大生だと特別に、普通は入れないお寺の結界の内に入れたり、一般公開されていない仏像も見られるんだって」
「え......」
「それに教授やお寺の人の解説つきだから、旅行が終わる頃には仏像を見るだけでどの時代のどの様式かとか、パッとわかるようになってるらしいよ」
「なにそれ僕も行きたい」

研究旅行一つとっても、一味違うのである。

「なにそれ僕も行きたい」著者と同じ感想を持つ。

美術館や展示会などほとんど行かないし、京都・奈良の修学旅行だって、大してまともに眺めた記憶がないです。友達とだべって終わりでした。

それがひとたび藝大生の旅行となれば大違い。真剣に作品たちと対峙して、その作品分野ならではの目を究めて帰路に着く。

藝大出身の知り合いがいるのですが、本当にそんな感じらしいですね。

その藝大出身の知り合いと一緒にヨーロッパ旅行へ行った友達の話を聞くと、美術館や有名な教会などを巡りながら、どの時代の何様式のものなのかを観ながら解説しながら回ってくれたそうです。

かねてから岡田斗司夫氏のアニメ解説凄すぎると思っていたのですが、実は藝大生やそういった美大出身等の方々は、分野は違えど、この水準の解説や深読みができる人だらけなのかもしれませんね。

羨ましい限りです。


とりあえずじぶんで作る

もう一つ、P41-42 不思議の国に密入国

ところで、美校の妻と音楽の柳澤さんとでは、同じ芸術を愛する者でも異なる部分がある。それはお金との関わり方だ。そもそも、妻はお金をあまり使わない。貧乏やケチとは少し違う。作れるものは何でも作ろうとするのである。
ある日砂糖壺を開けると、中に木製の小さじが入っていた。ちょうど壺に入る大きさで、よく磨かれていて、つるつるとしたさわり心地が楽しい。
「あれ、これいいね。買ったの?」
「作ったよ-」
そういえば、数日前からベランダで何かを削っていたけれど......窓を開けてベランダを見ると、切断された木片が転がっていて、木屑がプランターの脇にたまり、ごろんとノコギリが放り出されていた。
妻と一緒にいると、これくらいは当たり前になってしまう。床の傷をパテで埋めて元に戻していたこともあるし、突然、下駄箱の上に木製の写真立てが出現したこともある。
妻の実家では、そんな修正に慣れっこの様子。先日、お義父さんがプレゼントをくれた。
「これあげるよ」
「......何ですか、これは」目を白黒させている僕に、お義父さんが言う。
「板だよ」
板なのはわかりますが。抱えるほど大きい、立派な板ですが。
「なかなかいい板だから、テーブルでも作りな」
「わーい、お父さんありがとう」
喜ぶ妻。戸惑う僕。
現在その板は、我が家の二つ目のテーブルとして立派に働いている。

小学生くらいの頃は、ダンボールとガムテープで欲しいものつくっていた気がするけれども、手先は器用じゃなかったから、全然使い物にならない。

それが悔しかったので、この感じは羨ましい。

もう手先でそういうことするのは諦めているので、システム開発とかでそんなことをし続けたいなと思います。

たしか建設会社なのに、社内システムを自社開発することで有名な会社がどこかあったはずなのですが、社名を覚えていない......

詰まるところ、本当に欲しいものはじぶんが一番わかっている。だからこそ出来合いのものを買うより、一からじぶんで作った方が望みに叶う。という当たり前のことなんですけどね。買うことに慣れると、思いつきもしなくなるので気をつけたいです。

と言いながら、mastodonすら自分用のものを作ってないなあー

終わりに

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