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習慣の力(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)チャールズ デュヒッグ

この本は、「習慣」が人間にどのような影響を与えるのかを書き記した一冊です。個人から組織にいたるまで、様々な事例や研究結果を基に、良い方向に動いたものだけでなく、悪い方向に行ってしまった例も取り上げられています。

その「習慣」に抗えたか

一番おもしろかったのは、P376-377 第9章 習慣の功罪--ギャンブル依存は意志か習慣か

習慣は---たとえ、いったん頭に刻み込まれたとしても---定まった運命ではない。私たちは習慣を選ぶことができる。(中略)
 私たちは毎日、何百という習慣の影響を受けている。朝服を着て子供たちと話し、夜眠りにつくまで、習慣が管理しているのだ。昼食に何を食べるか、どうやって仕事を進めるか、仕事のあとに運動をするかビールを飲むかまで、習慣が左右する。それぞれ違ったきっかけがあり、違った報酬が与えられる。単純なものもあれば複雑なものもある。しかしどれほど複雑な習慣でも、形を変えることはできる。ひどいアルコール依存症の人でも酒を止められる。機能しなくなった会社も、自ら変わることができる。高校中退社でも有能な店長になれる。
 ただし習慣を変えたいなら、まず変えることを決意しなければならない。習慣のルーチンを起こすきっかけと、その結果としての報酬を特定するという難しい作業を行い、代わりになるものを見つける必要がある。
(中略)
ある意味で、これこそが本書の要点だろう。

この本の総まとめとも言える箇所です。

夢遊病で無意識に奥さんを殺害してしまった男性の例と、ギャンブル依存が基で両親の遺産を食い潰してしまった女性の例。そんな2つが挙げられた後に書かれていた箇所です。

いずれの場合も弁護士は、

依頼人は習慣に従わざるをえず、行動をコントロールできなかった。

と主張したそうです。

夢遊病とギャンブル依存症、いずれも「習慣」であり、本人にはコントロールできないもの。したがって、彼/彼女の罪は情状酌量の余地がある。といったような主張です。

しかし「夢遊病の男性」の場合は、自分自身の「習慣」を、認識すらしておらず、ましてやコントロールなどできない一方、「ギャンブル依存症の女性」の場合は、自分自身の「習慣」を認識していました。

したがって、「ギャンブル依存症の女性」の場合は、「習慣を変える」という、できたはずの努力を怠ったと見做されたようです。

「できたはずの努力」
おそろしい言葉だと思います。


身近な「習慣」にだって、望ましくないものはあります。

「つい食べすぎてしまった」とか「電車の中でゲームアプリを立ち上げてしまった」とか「帰り道ついコンビニに寄ってしまった」とか。

そのいずれもが「できたはずの努力」によって防ぐことができたものと云われてしまうと、じぶんがとんでもない「怠慢の塊」のように感じられてしまいます。

しかし実際、「全行動の4割が習慣」なのだそうです。

仮に起きている時間を16時間としたら、およびそ6時間半は、習慣によるものと言ってよいのでしょう(時間で割ってよいものではないかもしれませんが)。

恐ろしい、恐ろしい。

となると、やはり認識している習慣に望ましくないものがあったとするならば、ある程度において自分は「怠慢の塊」と言わざるを得ないのかもしれません。


じゃあ、どうすればよかったのさ?

いかにして「怠慢の塊」を「努力の結晶」に変えるか。

それが無ければ、救いが無い。

でも大丈夫でした。ちゃんとこの本には書いてあります。

そのやり方は「習慣の姿を明らかにし、そしてパーツを組み替えてみる」というシンプルなもの。

ですので、まずは習慣の姿を明らかにするところから始めます。

習慣は、次の3要素で形づくられているそうです。

・きっかけ
・ルーチン
・報酬

ある「きっかけ」のあると、「ルーチン」行動をとり、その結果「報酬」を得る。この行動の固まりを「習慣」と呼びます。


たとえば「毎日午後になると、カフェに行ってチョコチップクッキーを買って食べてしまう」というルーチンがあるとします(この本の著者自身の例です)。

ルーチン:「午後カフェに行ってチョコチップクッキーを買って食べてしまう」

これ自体は明白です。

そして、このルーチンの前後にある「きっかけ」と「報酬」は何であるのか。

筆者は続いて「報酬」を特定するために、チョコチップクッキーの代わりに、ドーナツやキャンディーバーを買ってみる、次にりんごを買ってみる、という風に報酬として働いているであろうものを変えてみた。

しかし結局、この習慣は崩れませんでした。この習慣において、何を買って食べるかは重要でなかったのです。同僚の席に行ってお喋りをしたかった、あるいは単に仕事の手を止めて休憩をしたかっただけなのかもしれません。

このように、報酬をいくつか変えてみることによって、その習慣における本当の「報酬」を特定できるようになります。


次に、「きっかけ」を特定します。

「きっかけ」は、さまざまな要因が想定され、さらに複雑に絡み合っている場合があります。環境要因がいろいろと重なり合う可能性のありうるからです。ですが実験によると、大概は次の5つのカテゴリーどれかに当てはまる可能性が高いそうです。

・場所
・時間
・心理状態
・自分以外の人物
・直前の行動

ですから、その特定のルーチン行動をとってしまうときに、

・どこにいたか
・何時だったか
・どんな心理状態だったか
・その時、誰がいたか
・その直前、何をしていたか

以上のことを毎日メモしておき、共通で見られるポイントが、その習慣における「きっかけ」であると見てみるのがよいそうです。


こうして、じぶんの習慣が持つ「きっかけ」「ルーチン」「報酬」を因数分解できたら、最後は「この習慣をどう組み替えるか」という計画と実行です。

この本の筆者は、チョコチップクッキーを食べてしまうというルーチンを、

午後3時30分、毎日、友人のデスクに行って10分間話をする。

というものに組み替えたそうです。


以上、「習慣の姿を明らかにし、そしてパーツを組み替えてみる」という行為をザッと見てきました。実際にやるには結構根気が要ると思います。

それこそ、毎年年始に「今年はこれを頑張ろう!」と目標を立てておきながらの、数ヶ月もすれば殆ど忘れてしまっているようなものです。

先に挙げた、「アルコール依存症の女性」の話の部分にも書かれていたことですが、

習慣を変えたいなら、まず変えることを決意しなければならない。

ということです。

なんだか根性論で締めるようで憚れますが、やはり軽い気持ちで取り組むと、習慣を変える努力すらも軽く吹き飛んでしまうように思われます。

ですから、まずは落ち着いた気持ちで、ペンを片手に、習慣を変えてどうなりたいのかまでを含めて、想像を膨らまし、真剣にその「習慣」と向き合ってみるのがよろしいかと思います。


終わりに

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