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【マンガ】リスペクト オノ・ナツメ先生

㊗『BADON』完結·全9巻

また集めていた漫画が1つ完結した。
昨年ヤマシタトモコ先生の『違国日記』も終わり、断捨離癖で漫画を集めることも少なくなっているため、残るは日本橋ヨヲコ先生の『少女ファイト』のみとなってしまった。
8巻の時点でこの物語はどこへ行くのか…と思っていたオノ・ナツメ先生の『BADON』は最終9巻で全ての伏線を見事に回収して、爽やかなラストを迎えた。
やっぱりオノ・ナツメ作品は、よい。

独特の絵柄と世界観。

出会いは『リストランテ·パラディーゾ』。
オノ先生の出世作である本作は、スタッフが老眼鏡の紳士ばかりのリストランテを舞台にしており「枯れ専(=老紳士萌え)」ブームの火付け役ともなった。
アニメ化&舞台化もされた代表作『ACCA13区監察課』は架空のドーワー王国を舞台に、自治権をもった個性豊かな13の区で巻き起こる事件の様子を描く。

どの作品にも共通するのは「導入が気取っていて、とっつきづらい」という点だろうか。
絵柄も独特で、食わず嫌いの方も多いと思う。
裏を返せば、似たような作品が量産される界隈で、それだけユニークで際立った存在だ、ということでもある。

私もオノ先生の作品は、導入がおしゃれ過ぎて入っていけない、と脱落したことが何度かあるのだが、物語が進むと、人情の機微や、おかしみ、社会のままならなさとそこで生きる人々の葛藤や喜びがそこかしこに散りばめられている。
粋で鯔背な、ハードボイルド&クセ強キャラが多めなのだが、みんな情に厚くて不器用なところが愛おしい。

あと、出てくる料理やお菓子がひたすら美味そうなのである。
ハチクマのケーキにクッキー、シナモンドーナツ、ミートボール·スパゲティ、サクランボパイにサボテンジャム…。


『BADON』の魅力

ACCAと同じ世界線にて、前科持ちの4人の男が再起をかけて首都バードンに煙草屋を開業するお話。
1巻を読んだ時点では「ドライ過ぎかな~?」と思ったが、2~6巻はキャラクター理解も深まり、毎度ホロリと来るモノがあった。7・8巻では「何でわざわざ今そんな話するの?」と飽きも感じたが、その不信は最終9巻でイッキに回収された。
なぜ主要人物たちは罪に手を染めたのか、過去は消せないが人生のやり直しはできるのか、全てを手に入れられずとも自分に残ったモノは何か、ということが丁寧に描かれている。

新刊が出るのは年に2回のお楽しみだった。
これから読まれる方がいたら、羨ましい。
どうかイッキ読みせず、コーヒーやお茶・お酒をお伴に、1冊ずつ、じっくり読んでいただきたい。

先生、お疲れ様でした!


余談

オノ先生は別名義bassoにてBL(ボーイズラブ)作品も描いており、こちらもなかなかメシウマである。
ご興味のある方は、歳の差サラリーマンLOVEを描く『となりに』からどうぞ(⁠´⁠⊙⁠ω⁠⊙⁠`⁠)⁠
居酒屋でスーツの2人組を見る目が変わることでしょう。


汲めども尽きぬ

日常系なら『ハブ・ア・グレイト・サンデー』ですね、とかNYPD(ニューヨーク市警)の『COPPERS(カッパーズ)』も結構良くて、とか全然期待してなかったアニメACCAが最高なのでOPだけでもYoutubeで、とか津田健次郎ヴォイスのニーノ罪深すぎる、とか語り尽くしたいところだが、私にはやるべきことがある。

漫画もアニメも「完結したら、最初に戻ってリスタート(読み返し)」が様式美。
今一度、オノ・ナツメワールドに浸ろう。


【作品情報】
すべて著者:オノ・ナツメ
『ACCA13区監察課』(スクウェア・エニックス、月刊ビッグガンガン)
『BADON』(スクウェア・エニックス、月刊ビッグガンガン)
『COPPERS』(講談社、モーニング2)
『リストランテ・パラディーゾ』(太田出版、マンガ・エロティクス・エフ)
『ハブ・ア・グレイト・サンデー』(講談社、モーニング2)

basso名義
『となりに』(茜新社、EDGE CIMIX)


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