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突然の訃報

 「なぜ、孫の手トラベルのFoodCampを推すか?」シリーズ6回目。その知らせは突然やって来た。

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NY行きは、やめた方がいいですよね?

 2008年1月末。相変わらず仕事中毒症の私は、福岡出張のその足で、次の仕事のため成田へ向かっていました。

 同行していた部下とたわいもない話をしながら、車窓に映る東京湾の夜景を眺めていたました。

 すると、膝の上に微かな振動が伝わって来ました。どうやら携帯がブルブルいっている。鞄の中を探り、携帯を開いた頃には、次のメールが飛び込んできました。ボスからです。

 「至急、電話をください」とのこと。

 何だろう?

 まだモノレールの車中だったが人もまばらだったので、その場で電話をかけてみました。すると「ご主人のお父さんが亡くなったそうだ。すぐに帰宅しなさい。あと、ご主人にすぐに電話をするように」と。

  え? 義父さんが亡くなった? どういうこと?

 事態を把握するのに数秒かかりました。そして、すぐに同行していた部下の女の子に、私はこう告げたのです。

 「ひとまず、詳細は後で確認するけど、旦那さんのお父さんが亡くなったらしいの。すぐに福島に帰らなければいけない。そう、ニューヨークには一緒に行けないので、社長を頼むね。」

 実は、翌日からクライアントがニューヨークで開催するジョブ・フェアへ参加することになっていました。これは日本で働きたい海外の日本人学生をリクルートする目的で、採用に向けて社長と私と部下の3人で行くことになっていたのです。

 部下の女の子は突然のことにびっくりして、涙ぐんでいました。

 私ときたら、それでもボスに「ニューヨーク行は、やっぱりやめた方がいいですかね? 」なんて、この期に及んでアホな質問をしていました。ここまでくると、ワークホリックも末期症状に近い。

憧れのブロードウェイ

 外資系のクライアントはいても、基本的には国内の仕事ばかりだから、これが最初で最後の海外出張だろうと、内心とても楽しみにしていました。ボスもせっかくニューヨークにいくのだからブロードウェイでも観ようかと、ミュージカルのチケットを3枚手配してくれていました。

 ちなみに、演目決めにはちょっとした議論がありました。部下の女の子は、当時、新作だった「RENT」か「Wicked」を観たいと主張。決して観劇に明るくないボスは、ちんぷんかんぷん。

 そう、ボスは、観劇そのものにはあまり興味はなく、ニューヨークでブロードウェイを観てきたと自慢したいだけでした。なので、何を観たのか聞かれたときに、誰でも知っている演目がいいらしく、最終的に「オペラ座の怪人」に落ち着いたのでした。

 私は、高校演劇をかなり真剣にやっていたこともあり、ブロードウェイには他の2人より特別な想いがありました。毎年、県内の高校が集まり、プロの演劇関係者に指導してもらえる夏の合宿では、ミュージカル班を志望し、その時の歌もセリフも今でも覚えているくらいでした。

 また、弘前で行われる高校演劇コンクールの東北大会を観に行くために、公休書類を偽造したり、セットで空き缶を使うとなれば、毎朝、駅のゴミ集積所からゴミ袋2つ分、持てるだけ持って登校したりしました。

 もちろん、劇団四季が来るといえば、演劇仲間とこぞって観に行きましたし、ヅカファンの先輩からビデオを借りて、トップスターになる前の天海祐希にハートを掴まれました。

 周囲はそれ以上の演劇熱で、大学卒業後にブロードウェイにオーディションを受けに行った部活メイトがいました。さらには、劇団四季の照明スタッフになったコや、宝塚を受験する先輩がいるなど、みんな演劇にドはまりでした。

 そんな私にとって、ブロードウェイは聖地でした。もちろん、初めてのニューヨークにもかなり興味津々でした。

今、引き返せば・・・

 しかしながら、家族の一大事に際し、実に個人的なワクワクと人の人生の最期を天秤にかけるなんて、不謹慎極まりません。すぐさま、浮ついた気持ちをかき消し、我に返りました。

「私は大丈夫。まだ、今の時間なら福島に戻る新幹線があるから。あとは、社長を頼むね。社長は英語が全然ダメだけど、あなたは喋れるんだからしっかりね。あなたが一緒に行くことになっていて、本当に良かった」と部下に言い残し、私は新幹線に飛び乗りました。

 22時頃だったでしょうか。主人の実家には親族が集まり、奥の部屋には枕花が見えました。

「遅くなりました」

 そう言うのが、精いっぱいでした。1月の寒い福島が、より一層寒々しく感じた夜でした。

(つづく)

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