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【雑談】「自分は確定申告しなくてはいけないのか?」という疑問はどう解消したら良いのか。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

先日、顧問先の経理の方から受けたご相談です。
「取引がある個人の外注の方から『自分は確定申告しなくてはいけないのか知りたい』という相談を受けたのですが、どうしたら良いですか?」というご相談でした。

ちょうどこの時期になると、毎年、似たような質問を頂きます。


確定申告義務の判断は、義務教育では学ばない。

自分も20代でフリーランスの舞台照明家だった頃に確定申告を始めましたが、最初は、そもそも「確定申告しなくてはいけない」ということを全く理解していませんでした

何もせず放置していたところ、事業開始初年度の申告期限を迎える直前に先輩に指摘されて気づき、仕事を1日キャンセルして慌てて税務署に駆け込み、税務署の人に指導されるまま確定申告をした記憶があります。(余談ですが、当然、青色申告の届出を提出していないので特別控除は使えず、しかも、収入のほとんどがなぜか源泉徴収されていなかったため、納税額を見て血の気が引きました。)

今はインターネットが充分に普及しているので、「どういう収入がある人は確定申告が必要か」などを簡単に検索できると思います。ただ、例えば「収入があっても確定申告をしなくて良い場合もありそうだが、自分はそれに該当するのか」などの個別的・具体的な質問になると、確かに誰かに質問したくなるのだと思います。

確定申告が必要な場合を知る機会は。

状況により、確定申告の義務がある又は確定申告すると税金が返ってくる、などは他の人が教えてくれるケースもあります。

・住宅ローン控除(初年度)
金融機関や勤務先の人事部などが教えてくれる。
・医療費控除
医療機関のホームページなどで知る。情報サイトでも随時紹介される。
・寄付金控除
対象となる機関が、所得税の優遇措置が受けられると大きく明示している。
・外資系企業のストックオプション
外国親会社からのストックオプションは日本で確定申告義務がある場合が多いので、日本子会社が従業員に確定申告の案内を出してくれる。

特するケースは広く知られており、また、組織に所属している場合は、組織がある程度説明してくれるので、受身であっても勝手に情報が入ってきます

一方、組織に所属していないフリーランスの方が確定申告の義務について検討するには、自発的に情報を集めないといけない、ということになるでしょう。

情報がないと、税理士にも答えが出せない。

ただ、会社を通して個人的な税務のご質問を頂いたとしても、会社の顧問税理士としては一般論しか答えられず、国税庁のホームページに書かれている内容をかみ砕いて説明するレベルしか対応ができません

そもそも、「所得税の確定申告が必要か」「納税するならいくら程度になるか」という判断をするには、その方のすべての収入・経費や家族の状況、支払っている保険など、個人情報を細かに伺わなくてはいけません。さらに、口頭でそのすべてを伺ったとしても、証明する書類がない状態では判断ができません。関連書類もすべて頂いてから判断することになります。

責任を持ってご回答するには、その方との契約が必要な旨をお伝えすると「お金が発生するなら結構です」と断られることがほとんどなのですが、どう回答するのが正解だったのかな、といつも考えてしまいます。

確定申告について、学べる機会を。

単純に税務署に早めに相談してもらうのが一番なのですが、「税務署に相談すると何となく損をしそうな気がする」というのが一般的な感覚かもしれません。

また、自分も今は税務を仕事にしているので知っていても、「自分も最初は確定申告しなくてはいけないことすら全く理解していなかった」ということを考えると、教育の問題があるのかな、という気もしています。

会社勤めの人の場合、会社の指導に従って年末調整作業をするので給与収入を申告し忘れるということはありませんが、フリーランスや副業者の場合は、よくわからないことだらけかもしれません。少なくとも「どのような人が所得税の確定申告をしなくてはいけないか」ということは、きちんと義務教育で教えても良いのかなと思います。

また、インボイス制度が始まった今、事業を始めた時点から消費税の申告・納税義務が発生するフリーランスの方は増えていると思うので、消費税の仕組みと申告方法ついても、早くから知っておいた方が良いかもしれません。

納税が国民の義務だということならば、そのやり方も等しく学べる機会があれば良いのにな、と思う今日この頃です。