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【経理】中小企業で、会社法の知識はどこまで必要か?

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

先日、お客様からご質問を受けた際に、改めて会社法を読み直す機会がありました。

今日は「中小企業の経理では、会社法の知識はどこまで必要か?」ということについて書きます。

注:私自身は公認会計士の資格を持たない税理士で、がっつり会社法を勉強したわけではありません。また、本記事は「中小企業の経理実務の中での会社法」という視点で書いています。ベースとしている経験は、過去に自分が在籍した会社での経験や、税理士として関わってきた顧問先とのやりとりです。


会社法を改めて読み直す。

お客様からご質問を受けたのですが「会社法上の手続きも関連するため、正確な知識をベースに回答したい」と思い、会社法の書籍を読み直しました。法律の条文のまま読めるほどの時間はないので、今回は、Q&A形式になっている書籍です。

この本は、よくお客様から受けるご質問そのものが掲載されていることもあり、とても重宝しています。会社法を作った人が書いている書籍で、解説が非常にわかりやすいです。たまに、企業の法務担当者の方などが利用されているのも見ることがあります。

そもそも会社法が施行された2006(平成18)年5月は、税理士試験の受験生の頃でした。施行当時、勤めていた会計事務所の所長(公認会計士・税理士)にまだ会社法を読み込んでいないことを話したところ「会社法も読んでないの?読まずに税理士になるつもり?企業に関わる仕事なのに?」と散々注意を受け、渋々ですが全文をしっかり読んだ記憶があります。(言い訳をすると、税理士試験の受験科目には会社法の知識全般が必須なものはなく、「受験勉強のための時間は買ってでも欲しい」時期に関係のないことに時間を使うなど、とても考えられませんでした。)ただ、その注意をして頂いた時期にいちどきっちり読んだせいか、今回は「思い出す」感覚で読めました。

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会社法の知識ってそもそも必要?

お客様にはっきりと「会社法の知識って全く要らないですよね?」と聞かれてしまうこともあるのですが、「全く必要ない」と思って仕事をするのは、もったいない気がします。

確かに、中小企業は「代表取締役社長=ひとり株主」であることが多く、会社法を意識しなくても何となくまわってしまうことも多いです。ただ、「企業を運営するためのルールとしての会社法を知らなくても、企業運営に関われる」という考え方でいると、思わぬところで足元をすくわれることもあります。特に、中小企業では「法務」として独立した部署がないことも多いため、経理としては「会社法の知識は、関連しそうなところを必要に応じて拾える」状態にしておく必要があるように思います。

例えば、株主配当をしようとするとき、インターネット検索をすれば「決議内容」「決議方法」「株主総会議事録の書き方」などは簡単に出てきます。そこで、自分が見たページ上に「(会社法上の)分配可能額」についての留意点まで記載されていれば良いのですが、そこまで包括的に記載されていないこともあります。ここで気づかずに、分配可能額を超えて配当をしてしまうと会社法違反になってしまいます。特にIPO準備会社などでは、この違法配当は大きな足枷になることも多いので「(細かい手続きは覚えていなくても)そのような論点がある」ということだけは、頭に入れておく必要があると思います。

なお、「IPOをしようとするときに違法配当は足枷になる」と書きましたが、念のため、よくあるミスの例を補足します。配当をしたときには違法配当ではないつもりであっても、IPOをしようとするときに「実は違法配当だった」ことになってしまうことがあります。配当の分配可能額には繰越利益剰余金の残高が含まれますが、引当金の計上不足などのミスが判明することにより、繰越利益剰余金が大幅に減ってしまうことがあり、結果として後日「違法配当」の事実が判明するということが起きます。IPOを少しでも考えているのであれば、配当に限らず会社法違反にならないよう、充分な注意が必要です。

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結論:必要なときに、調べられるようにしておく。

あくまで「中小企業の経理としての取り組み」という視点では、経理部としては、会社法をすべて理解&暗記するは必要はないと思います。ただ、各手続きには必要なルールなので、必要なときに自由自在に使えるようにしておく必要はあるでしょう。「注意ポイントがある」ということさえ理解しておけば、その都度調べれば良いだけです。

そして、「会社法の概要をつかんでおく」ことを独自に進め、「実務上の必要に応じて細かい規定を調べる」ということを何度か繰り返せば、勝手に頭の中に定着すると思います。(概要をつかんでおかなくても「~のときは、~に注意」ということをすべて覚えられる暗記力がある方ならば、概要をつかむことは必要ないかもしれません。)

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一個人として、法律・ルールへの取り組み方を決める。

会社法に限らず、法律・ルールに対する「自分の取り組み方」を決めることは、法律に関わる仕事をする上では、非常に重要だと思います。経理部のような管理部門に所属する方は、真面目がゆえに、中途半端な完璧主義者になりやすい傾向があり、それが自分自身を必要以上に追い詰めることもあるからです。

「全部理解できなくてはいけないのに、できていない」ではなく、「今は、ここまでできるように勉強する」という前向きな気持ちで、取り組んでみてはいかがでしょうか。


最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

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