【カメオの共鳴】シリーズ 第2篇 「耳で逢いましょう 第2週目 現代落語『アクリル長屋』」(No.0253)



ポーン!

1時になりました
こんばんはパーソナリティーのOribeです
今晩も始まりました「耳で逢いましょう」
みなさん、今週1週間はいかがお過ごしでしたでしょうか

今週も、悪人がウロウロと暴れていることが目につく一週間でしたね

本当にいつまでも平気で人を騙している連中がたくさんいるものです
彼らはみんな尻に火がついた状態ですから、結局はその後の人生は逃げるだけに
なっちゃうんですね

若い頃、調子に乗っていてもだんだんと足が鈍くなりますから、どんどんと
追い詰められ最後には捕まるわけです
でも、本当に捕まった瞬間は人生の最後の時、ではなくて、その罪を犯した時
ですよね
そこから、逃げる人生になった時からもう網に掛かったようなものな訳です

逃げる人生というのは怯える人生ですから、そのあとは何にでも怯えないと
いけない訳で、それを気力で振り払ったり、はたまた酒やドラッグみたいな刺激で散らしても、そんなものがいつまでも続きはしません

その罪を重ねた時にですね、人一倍お金を稼いでいたとしても厳しい訳ですが、
多くの人は罪を背負ったとしても別にお金がたんまりある訳ではないのです
当たり前ですが、多くは末端であって罪はあってもお金はありません
つまり人を騙して生きるような悪人であっても、その悪人世界でのし上がるには
それ相応の努力や才能がいる訳で、多くはそこからも脱落する訳です

まあそれがきっかけで反省するならばいいんですがね、もう後戻りできない、
というのが多々あります
刺青入ったり、賞罰がついたりする訳ですからなかなか厳しい
でも、やっぱり悪の道には悪の道なりに、世間以上に過酷な世界が待っている
訳です
だって、悪の世界には自分以外に守ってくれる人はいないですからね

それはよく塀で説明されますが、塀の外、塀の中というやつですね
もう、中に入ってしまったら外のルールは一切通じない訳です
完全に修羅の世界ですから、そこに長く浸かってしまえば、それはもう普通の人間ではない訳です

仮に塀の外へ出てきたとしても、その世界のルール、つまり尋常なルールに
ですね、馴染めない訳です
周りも敬遠しますし
それは過酷な世界ですよ、入っても出ても厳しい訳です
まあそれでも頑張って反省して欲しいもんですがね

しかし、仮に才能があるなりして、悪の世界でそれなりにのしていたとしても
ですね、彼らは常にその世界の人間たちとやりあわないといけない訳です
常に並大抵ではないライバルが狙っていますから、なかなか落ち着かない
普通の人なら100円のコーヒーで済む事でも、それでは満足しなくなりますね
車が良い例ですが、普通の軽自動車なんか乗れない訳です
メンツやらプライドやらがありますから

そうするとですね、やはり何にでもコストが掛かりまして、それも人一倍
かかります
となると、また稼がないといけない
つまり常にその悪の世界でやり合い続け、さらに勝ち続けないといけない
これは修羅の世界ですね

つまり、頑張ってわずかな椅子を手に入れても、そこからはみ出しても、
過酷な訳ですね
もちろんほとんど全てと言っていい連中は脱落組です
外にも中にも入れない人たちです
地を這う虫けらのような連中です
やる事なす事上手くいかない、誰からも嫌われる人たちです

品性も知性もない、もちろん他の人への尊敬など微塵もない連中ですから、
まさに虫けらのように思われても当然な人たちです
そういう人達はですね、普通にしている人たちに対して常に恨みを抱いている
訳です
普通に幸福に過ごしている人たちを憎んでいる
酷い話ですね、そんな生活に陥ったのは他の誰でもない、自分たちのせいなのに

これを逆恨みと言いますが、普通の人たちには共感ではなく反感を持っています
では何に共感を覚えてるかというと、それはやはり自分たちに近い存在ですね
それが増える事や、それが活躍することを彼らは喜びます
普通の人たちの幸福なものは憎む訳ですから、彼らが喜ぶものは不幸や怒りや暴力や憎しみや汚いものです
これらが、自分たちの憎んでいる、逆恨みしている普通の人たちを苦しめると、
彼らはとても喜ぶんですね

こういうもので、彼らはとことん心まで、魂まで汚れて腐ってしまっているんです
ですから、うっかり見た目が似ているからって、油断して近づいたりしてはいけないんですね

それでは今日の一曲目、クロマニヨンズで『流行りのクルマ』

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はい、クロマニヨンズで『流行りのクルマ』でした

ではこの後、今週は皆様に落語を聴いていただきます
本日放送するのは現代落語家の世瀬風素敵飯さんが作られました
『アクリル長屋』です

世瀬風さんご自身の語りでお楽しみください

それではどうぞ

ーーー


テンテンテン

えー本日もお足元が悪い中お越しいただき誠にありがとうございます
世瀬風素敵飯です
どうぞよろしくお願いいたします

えーもうかれこれ長いこと世の中は不景気だ不景気だと言われております
もうすっかりそれが当たり前のようになってしまいまして、いまのお若い方なんて景気の良い時を全くご存知ありませんから、どうしても今を基準にしてしまいます

そりゃ無理もない話でして、お話では色々と昔の景気が良かった時など耳にする
こともあるでしょうが、しかし実際には日々の生活にまるで実感はないわけです
いちいち何かをするたびにお金を取られたりですね、いちいち許可が必要だったり、いまなんてアレですよ、簡単に焚き火なんて出来ないという話なんかもありました。やれ危ないだとか何だとかいうわけですが、そんなこと言っていたら何も出来ないわけで、道ひとつ歩けません。

ま、ようするに責任を取りたくない、ということなんです、人と人との繋がりが希薄になる、という事がですね、厄介な責任から解放される、なんて思いきや結局は自分の責任の部分をもですね、誰も取ってはくれなくなる訳です

どうもね、自分がしていることは許されるけど、人がやることは許されないのだ、という一方通行な考え方の人が増えたように感じます
希薄な関係性がですね、相手の気持ちや相手の痛みっていうものを理解させるに
至らせないんですね、そもそも人の痛みを知るには経験や成長が必要なわけです

こういうのはですね、昔から持ちつ持たれつ、お互い様、っていってたんですが、色々と社会や生活がですね、様々な方向から崩されてしまいますと、人の心も簡単に崩されてしまってですね、そのしわ寄せっていうものが一番弱いところに出てしまう訳です
実際はいまの世の中はですね、あたしの子供の頃に比べてウンと綺麗になったんですよ、それは本当なんですが、でもその中身はスカスカで落ち着いて利用することが出来ないものばかりになりました
結局変わったのは見た目だけなわけで、目に見えるものばかりを追求したり大事にしてきてしまったということなのでしょうねぇ・・・

ピンポーン ピンポン
おーい
コグマさん
ピンポンどんどん コグマさんや

なんだい ガラガラ ああ大家さん

なんだいじゃないよコグマさん もう約束の日は過ぎてんですから
そろそろお家賃納めてくださいな

いや参ったな  どうにもどこも値上がりで空っけつですよ 
毎日レトルトばっかりでも生活には余裕がないもんで
おかげで自慢のオートバイもガスがギリギリって有り様で

そう言われても、うちも商売だし困ったね 
ああそうだ、コグマさん知ってるかい

何だい

コグマさんは知らんだろうなぁ どうせラジオしか聞かないんだから

ええ、まあそうだけど一体何なんです

いやね、実は今タダでご飯にありつけて、
おまけにお家賃無料のアパートが
あるんですよ 
どうです、いっそそっちに越すってのは

なんだいそれ随分と都合のいい話じゃないか 
ハハンどうせ嘘ついて私を追い出そうってんでしょう 
勘弁してよ 来月にはなんとかしますからって

いやそうじゃないの 
本当にそんな都合のいいところがあるんですよ 
いやーあたしだって本当はそこに住みたいくらいですけどね
何分にも大家の仕事もありますから 
いやーその点はコグマさんが羨ましい!

ええーほんとにそんなとこあんのかい?!

ええ本当ですとも
さあさあ荷物をまとめてお行きなさい
さあさあ場所はお教えしますから


大家さんに背中を押されて追い立てられるようにアパートを後にしたコグマさんは自慢のオートバイに風呂敷を乗せてガソリンもギリギリの中
教えてもらった場所へ出かけました

どうにか給油せずに着きましたそのところは、アパートとは程遠い場所
どこまでも続くだだっ広い荒野でした
地平線が見えるほど続くようなだだっ広いところに、これまたどこまでも続く
金網に囲まれた巨大で無骨な長屋が広がっています


何だいこりゃ
アパートっていうよりも牧場じゃないか

コグマさん、なんとか駐輪場を見つけてそこへ止めると入口を探して右往左往
どこまでもまっすぐ続く金網を辿ってようやく入口へたどり着きますと、
何やら真っ白な格好の連中が出張っております


すいませんちょいとお尋ねいたしますがね
ここはお家賃無料の・・・


なんて聞く間も無くなんとコグマさん
その白装束にいきなり綿棒を突っ込まれまして


?! 
やい、何しやがんで!

なんて、怒鳴りつけるなりその白装束はコグマさんに向かって

はい、合格!

と言って、すんなり中へ通してくれました

コグマさんも頭に来るやらなんやら
あっけにとられている内に中を案内されました

中へ通されますと、これがなかなかこざっぱりとした軽やかなお部屋でして
コグマもさっきの無礼をお忘れてしまうほど気分も良くなったのですが
少々気がかりなことがございました

それは部屋という部屋、ドアから壁から全部がスッケスケなのです

こりゃまたどうしたことだ?
呆れるほどだだっ広い施設の中が完全に見渡せてしまうほど
どこもかしこもスッケスケじゃないか
なああんた、これどういうことなんだい

と、アテンドしている白装束に尋ねてみてますが

どこもこんな感じですから

と実にそっけない

確かに見回してみますと、どこもかしこもスッケスケ
地平線まで続くようなだだっ広いスペース全部がスッケスケの部屋だらけなのです

コグマさんが通された部屋の中にはトイレもシャワーもありまして
これまで住んでた築52年の風呂なしアパートからしたらまるで高級ホテルという
有様なのですが、それでもやっぱり気になるのが、そのトイレもシャワーも
やっぱりスッケスケなのです

これまたどういうわけだいえぇ
プライバシーってもんがないじゃあないか

いえご安心ください
トイレやお風呂にはきちんとカーテンがありますから


なんて言われて、そうかそれならひと安心、と思いきや引っ張ってみますと
これがまた透明なスッケスケ

何だいこんなとこ、これじゃ落ちつきゃしない、生きた心地がしないじゃないか

やってられんとばかりに出て行こうとすると、ちょうどお昼のチャイムが
鳴りましてみんなのところにお昼が配られ始めました

その様子を見てコグマさん


まあせっかく来たんだし空腹を晴らすくらいはさせていただこうかな


と踵を返して待っていますと、これがまたなんとも貧相なもので
レトルトに冷凍食品に菓子パンにカップ麺
コグマさんが普段食べているものと大差がありません


なんでぃがっかりだ

と思ったのですが、そうは言ってもお代は無料ですから文句も言えません
しかもどうやらお代わりもあるらしく、コグマさんも質より量でここぞとばかりにガツガツいただきました

食べるだけ食べますとすっかり気分を取りなしてベッドへ転がり
ぐっすり昼寝と決めこみまして、こうしてコグマさんは三食昼寝付きで
お家賃タダのお家を手に入れました

いやいやこれはまぁ楽チンで乙なものだ
これはこれはいいもんだ 


と言いたいところでしたが
こちらは入るのはいいのですが、なんと出るのが難しい

出ようとするとまたしても白装束が綿棒を持ってやってくるんでどうにも出づらい
どこにも行けないし何より愛車のオートバイに跨がれない
コグマさんもタダメシには有り難いとは思いつつも、早くもこの生活に息苦しさを覚え始めました


働きもせずおやつ付きで生活ってのは有り難いが
なんだかどうにも生きた心地がしやしねぇ
楽しいことなんて飯くらいなものだ
まぁ表に出て配達のアルバイトでひもじい生活するよかマシかいなぁ

と、不満を覚えつつも暮らしておりましたが、そんな生活が続いていたある日、
いつものようにご飯のチャイムに合わせて待っていますと
食事が配られたのですが、これがどうにもおかしい

チョコチップメロンパンがただのメロンパンに
カップ麺がマルちゃん正麺からイオンのトップバリュのラーメンに
ミックスベジタブルはグリーンピースが無くなっているのです


なんだかおかしいが、まあ今日だけだろう、なんて高をくくっていますと
その日を境にどんどんと食事がみすぼらしくなっていく


おいおい何だこいつはどういういうこった


コグマさんは配膳係に言いました


ちょいとあんた、最近食事がちょいとみすぼらしいんじゃ無いんかい
これじゃまるで、うちで食べていたのと大差ないじゃあないか
カップ麺もついに駄菓子のブタメンになってしまった
菓子パンも三色パンのチョコのところが一切れ
ミックスベジタブルなんてついにコーンしかないじゃないか
一体どこがミックスなんだい

いやちゃんとミックスですよ、アメリカ産タイ産中華、、、

産地がミックスでどうすんだい
しょうがないね
ああそれとトイレットペーパーを頼むよ、無くなっちまったんだ

ああそれですがね、実は申し訳ないんだがこれからは1ヶ月で
一人2ロールってことになってしまったんですよ
すいませんがよろしくどうぞ

オイオイオイって、、、
行っちまったよ
なんだねどうすりゃいんだ全く

まあ幸いにも部屋のトイレにはウォッシュレットがありますもんで、どうにか
堪えつつもやりくりしていたのですが、まあこんな感じでだんだんと居心地が
悪くなって行きました

しかし、茹でガエルのお話じゃあありませんが、人間少しずつ少しずつ変わって
いきますとなかなか切り替えられないもんで、コグマさんも出て行こうなどと
決心がつかないままでおりました

ですが、唯一の楽しみだったお食事がこうも貧相になってきますと流石に
我慢がなりません

そしてあくる日、ついに堪忍袋の尾が切れます

なんと食事に山ほどゴキブリが混ざっているんです


?!なんだこれは!
おい!ちょいとあんた何だこれは!

ミックスベジタブルにゴキブリが

チョコチップメロンパンかと思ったらゴキブリチップ

ラーメンの具にゴキブリが入っているかと思ったら
ゴキブリにラーメンが入っている始末だ

どういうつもりだバカにしてんのか!


いえどうぞご安心を
これはゴキブリではございませんコウロギでございますから

何言ってやがんだ!
どっちも同じだ虫けらなんぞ食わせやがって私を殺す気か!

いえそれもどうぞご安心を
このコウロギは有機野菜をふんだんに食べさせて育てておりますから
健康にもう抜群でございます
夕飯には和牛をタップリと食べさせた豪華なコウロギも用意しております
あとデザートにはヨーグルトを食べさせたコウロギが・・・


馬鹿野郎!
それだったらその有機野菜や和牛やヨーグルトを食わせやがれ

どうぞどうぞ健康ですからご安心を
あ お代わりもございますから


なんて言ってさっさと消えて行ってしまいます

ついに頭にきたコグマさん
虫けらの乗っかったお盆をスッケスケの壁に

冗談じゃねぇ!

とばかりに叩きつけました

すると、驚いたことに何とそのお盆が壁にぶつからず、どこまでも飛んで行き、
遥か遠くの部屋で
ガッシャンバラバラ!

と落っこちたのです



あれ?

おい、これどういうことだ
壁に当たらず飛んでいっちまったぞ

コグマさんは恐る恐る今ぶつけたはずの壁に手を当ててみますと
なんとそこには壁が無くなっているのです


はっ?!
何だこれ?

おいおい、壁が無いじゃないか・・・


腰を抜かすほど驚いたコグマさん
アレもしや?と思って入り口のドアへと近づいて見てみますと
何とそこにもドアも壁もありません
ただ床にススと線が引かれているだけでした

辺りを見回しても、そのだだっ広い施設の中は、ただ碁盤の目のように引かれた
線がどこまでも続いているだけでした

しかも誰一人その線からはみ出そうとしていないのです


ああ、何てこった・・・
なんて馬鹿馬鹿しいんだろう


とコグマさんは呆れ果て、すぐに荷物をまとめるなり
サッサと部屋から出て行く決心をつけました


さてと荷物はまとめたが、しかしどうやって出ようかね
流石に外との壁はあるわけだから
やっぱり来たところから出て行くしかないかねぇ
しかしまたそうすると綿棒持った兄ちゃんがやって来て面倒だし
出て行くときにこれまでの分を請求されるかもしれねぇ
どうしようかな・・・
ん、おやっ、どうしたもんだろ?
入り口に誰もいないじゃないか・・・

恐る恐る近づいてみますと


あれ?
何だ白装束の兄ちゃんたちも食事かい
みんな隅っこで固まってら
あらあら皆んなしてゴキブリを貪ってら
やれやれどうしようもないねこりゃ、逃げるにかぎらぁ


こうしてコグマさんは連中がゴキブリをほうばっている内に
堂々入って来たところからオサラバしたのでした


久しぶりに表に出てみますと、まあなんと清々しいことでしょうか

輝くお日さんに抜けるような青空

そして身体に吹き付ける清しい風

コグマさん、かつてこんなに気持ちのいい風を感じたことはありません


ああ!
何て気持ちいいんだろ

大きな伸びをしながら金網沿いに歩いて行きますと
コグマさんは駐輪場に止めていた相棒のオートバイを見つけました

暫く放ったらかしだったもんで相棒もすっかり砂埃で薄汚れておりますが
何だかその相棒に近づくなりコグマさんはグッと胸に込み上げるものがありました


何てこった
大事な相棒がこんなに埃まみれになっちまって
それでも辛抱してあたしを待っていてくれたんだね

はあ、やれやれ私がバカだった
タダメシに乗せられて情けない生活をしてしまったもんだ


コグマさん、埃で薄汚れた相棒はそっと撫で
シートの下に挟み込んだ雑巾で綺麗にしてやると
久方ぶりにばるんとエンジンをかけてやります

さすが名車なだけあってキック一発でエンジンはかかりました
コグマさんは燃料コックをひねり予備燃料を入れ、相棒にまたがって
サッサとその施設から出て行きました



久しぶりの相棒とのドライブ
その風の心地よさ
エンジンの振動
コグマさんにはその全てが感動でした


何てぇこった
ホントにあたしがバカだった
こんなに素晴らしい当たり前の日常を捨てて
自分の怠惰な気持ちと食い気をとっちまったなんて


貧乏生活が長く、それゆえに少々ケチでがめつかったコグマさんは
涙ぐみながら大いに反省しました


なあ相棒
あたしはね
目先のもんに囚われて、大切なものを見失っていたよ

相棒

お前との当たり前の生活が、どれほど有り難いものか
今ほど思い知ったことはないよ


ああ本当に
この風だって
空気だって
お日様だって
こうして手に取れない目に見えないものが
こんなに有り難かったなんて知りもしなかった

スッケスケの小屋に閉じ込められていたけど
本当はいつだって出られたんだ
でも自分の弱さで出られなかった
自分を縛っていたのは自分の愚かさだったんだなぁ

恐ろしいのも有難いのも
苦しめるのも喜ばすのも
縛るのも進めるのも
どっちも目には見えないものだった


コグマさんは相棒を走らせながら
目には見えないものに深々と感謝して
まずはガソリンスタンドを目指すのでした・・・


これは、とある時代にどこにでもあった
些細なお話「アクリル長屋」という一席でございました

お後がよろしいようで


ーーーー


世瀬風素敵飯さんの『アクリル長屋』をお聴きいただきました

それでは最後に曲をお聞きいただきながら今週はお別れです


頭脳警察で『コミック雑誌なんかいらない』

ではまた来週、この時間に皆さんのお耳で逢いましょう

おやすみなさい


【カメオの共鳴】シリーズ 第2篇

「耳で逢いましょう 第2週目 現代落語『アクリル長屋』」

終わり


【ほかにはこちらも】

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【シンプル・プラン】シリーズ

【カメオの共鳴】シリーズ

【2つめのPOV】シリーズ

【グッドプラン・フロム・イメージスペース】シリーズ

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