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この感情の名前が知りたい。

自分が歳を重ねると、当然周りの大人も歳を重ねていて、だんだん年老いていく。
例えば、両親の白髪が増えていた時、前まで太っていた父が一回り小さくなっている姿を見た時。「ああ、時間が過ぎているんだな」と、なんというか、心が寂しくなる。

昨日、甥っ子のお宮参りでカメラマンをするために、実家に帰った。その時、お正月ぶりくらいに父方の祖母に会った。
4年前くらいに自転車で転んで骨折してから、ほとんど歩かず家の中で過ごすようになった祖母は、ものすごいスピードで老いが進み、この1年ほどで生活の介護が必要になった。
ちょうど今年のお正月を過ぎた後から、痴呆のような症状がかなり進行し、一時期は施設に入っていると母からLINEで聞いていた。

そんな祖母と10ヶ月ぶりに対面したのだが、言葉を選ばずにいうと、自分が知っている祖母ではなくなっていた。
私のことをしっかりと見えているのかどうかも分からない、会話も、かろうじてできている気がするような。いつもだったら笑顔で「あゆみちゃん、おかえり」と声をかけてくれていた祖母が、「そこにいるのは誰?」と、言った。

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母にオムツを履き替えさせてもらっている祖母を見るのは初めてで、私はどうしたらいいか分からず、目を泳がせることしかできなかった。

ベッドに寝転んだ祖母が、「ああ、あゆみちゃん」と言った。しばらくしてから、私だということが分かったようだった。
そして、「あゆみちゃん、頼むわな」と言った。きっと、深い意味はない。真意は分からない。私はただ笑顔で頷くしかできなかった。

年老いた祖母を見て、私はたまらなく目頭が熱くなった。どうして涙が出るのか分からない。でも、ショックというのか、なんというのか、すごく悲しくなってしまったのだ。

私はこの感情を知らない。どうして涙が出るのかも、自分では分からない。
この感情に名前があるなら、私は知りたい。



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