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「おめでとう、乾杯。」

先日、祖父母の家が売りに出されました。たくさんの思い出がある大好きなお家です。とっても大きな日本家屋でした。

売り出される前に、仕事関係の方や友人にも家に来てもらい、使えそうな家具や食器は引き取ってもらいました。引き取ってくださった皆さん、本当にありがとうございました。

祖父母の家での思い出は沢山あるんだけど、中でも特に覚えているエピソードを、記録としてnoteに残しておきます。
就活中に両親と喧嘩をして、祖父母の家に泊めてもらったある日の出来事です。

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就活中のある日のこと。希望していた会社から内定が出た。内定が出たのは、東京のwebの制作会社。すぐに母に電話をした。

「お母さん、内定出た!出たよ!」

「ほんま?どこの会社なん?」

「東京の会社!」

「……え?あんた東京行くん?」

私の選択肢はただ1つ。その会社に行くことだった。だけど、母の意見は違った。東京に行くのは許さない。とにかく猛反対された。(今思えば、すごく心配してくれていたんだと思う)

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その日から、両親と私の戦いが始まった。どうしても東京に行きたい私と、関西にいて欲しい両親。何度も喧嘩した。でも、何より悲しかったのは、やっとも思いで内定が出たのに、1番喜んで欲しかった両親に「おめでとう」と言ってもらえなかったことだった。

そんな時、おばあちゃんから「家に泊まりに来ませんか?」と、連絡が連絡があった。

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(「かずちゃん」というのは、おばあちゃんのこと)

祖父母の家は、実家から車で15分ほど。近いのでよく遊びに行っていたけど、お泊まりに行くのはいつぶりだろう。少し緊張したけど「泊まりに行きたい」と返事をした。

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おばあちゃんはとっても料理が上手だ。その日も、たくさんのご馳走が並んでいた。おじいちゃんとおばあちゃんと3人だけでご飯を食べるなんて、物心ついてからは初めてじゃないだろうか?

「内定おめでとう!乾杯。」

そう言って、3人で乾杯した。
「おめでとう」その言葉が本当に嬉しくて嬉しくて、心がじわじわ温まるのを感じた。何も聞かず、ただただ楽しい会話をしてくれるおじいちゃんとおばあちゃんの優しさが、歯痒くもあり、ありがたくもあった。

お風呂を上がったら、おばあちゃんがアイスを用意してくれていた。「今日は2人で一緒の部屋で寝ようね」と話しながら一緒にアイスを食べた。

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お布団に入ってからも、おばあちゃんといろんな話をした。最近あった面白いことや、おばあちゃんの昔話とか。いろんな話をしているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。

この日、就職に関しての話は一切していない。唯一就職に関する会話をしたのは、夕食の時の「内定おめでとう!乾杯。」という言葉だけ。「見守る優しさ」って、多分、こういうことなんじゃないかなと思う。

次の日、自分の家に帰って、母と久しぶりに落ち着いた状態で話をすることができた。

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私の希望通り、東京の会社に就職したその年におじいじゃんが事故で亡くなった。まともな恩返しができないまま、天国に行ってしまったおじいちゃんのことを思い出すと、今でも胸が苦しい。

おじいちゃんが亡くなって3年、お家まで手放すことになってしまった。何度もどうにかできないか考えたけど、結局私は何もできずじまいだった。もうこんな思いはしたくないと思うけど、きっとこれからも、自分の無力さに悲しくなる出来事がいっぱいあるんだろうなと思う。

だけど、私の中にはいつでもおじいちゃんがいる。思い出は消えないし、こんなにあたたかい愛情を注いでもらった私は、世界一幸せな孫だとも思う。私はまだまだ未熟だけど、将来自分が結婚して、子供ができて、もしもおばあちゃんになる時が来たとしたら。私は自分の孫に、自分がしてもらったようにたくさんの愛情を注ぎたい。

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このエピソード書こうと決めてから、早3年が経ちました。何度も下書きを消しては書いてを繰り返していたけど、どれだけ時間をかけても、最後のまとめをうまく書くことができませんでした。

けど、うまくまとめられなくても、伝わることはあると思うから。そう信じて、私は公開ボタンを押します。

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