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「とらすとベース」に辿り着いたわけ〜東京コミュニティスクール(マイクロスクール)での18年間とニュージーランド教育との出会い

「とらすとベース(TBL)×フリースクール」プロジェクトサブリーダーの永易です。

↑いよいよ6/8土から「とらすとベース(TBL)×フリースクール」プロジェクトが始動します!

この度新たに始めるTBLプロジェクト、そこに書かれた「とらすとベース(Trust-based Learning)」という言葉は、プロジェクトリーダーの久保と話していた時に生まれた造語です。

この言葉には、私が近年学んできたニュージーランド乳幼児教育の「Credit model(研究・実践者の先生方は「信頼モデル」と訳されています)」が影響しています。

この「Credit model - 信頼モデル」は、ニュージーランド乳幼児教育が掲げる子ども観「子どもたちは、有能で自信に満ちた学び手である」に通じており、
「子どもの興味関心に気づき、成長をより後押しするため」という評価(アセスメント)観とも繋がっています。

「とらすとベース」には、その考えに加えて、久保が創立し、永易が長らく関わってきた東京コミュニティスクール(TCS)の理念や評価への考え方なども存分に関わってきます。

永易としては、このプロジェクトを立ち上げるにあたって「とらすとベース」という言葉に辿り着いたのですが、
TCSでの日々を振り返ると、とらすとベースというのが、自分がTCSに関わり続ける理由を言い得た言葉と気付きました。

こちらの動画は、とらすとベースという言葉に辿り着く前に撮影したものです。
この時は、TCSが開校当初から掲げる「学び続ける」ということについて語ったのですが、「人は変わり続けることができる、と信じる」というところが、とらすとベースと通じていると振り返ると思います。


私は2005年にTCSに出会い、2010年より3年間、常勤の教育スタッフを経験しました。現在は、法人事務局と教科(日本語・アート)を担当しています。

(私のこれまでの活動については以前、探究メディアQさんにインタビューいただきました)

TCSに出会った当初、私は大学生で、最初はインターン生としてただそこで展開される学びを楽しみ、創立者の久保一之や初代校長の市川力氏による、(まさに芸術とも言える)子どもとのやりとりにただただ感動していました。

TCSで開発・実践される教育は、子ども時代に一斉授業ばかりを経験した私としては、それまでの教育へのイメージを覆す衝撃的なものでした。


そして時は過ぎ、私もTCSの教員になり、この学びを引き継ぎ広めるという役目が回ってきました。

探究の学びは正解の無い問いに立ち向かうことであり、「こう教えればいい」というようなマニュアル通りの進め方が通用しません。

「探究や子ども主体の学びって、これからの教育に必要だと思うけど、自分には難しくてできない」

こういった声を聞く度に、「教育者がそれ言ったら学校が変わるわけない」というもどかしさと同時に、同情を禁じ得ない自分がいたのも事実でした。

TCSの理念を染み込ませ、今まで学んだことを注ぎ込んでも、足らないことばかり、自分が出会い憧れたきた教育者像には遠く、辛い気持ちになったものです。

でも、教育者としての自分の可能性をしぶとく諦めないでいられたのは、

「自分にだって(誰にだって)、自分なり(その人なり)の発見ができるし、学び続けることができる。誰もが変わり続けることができるんだ」

という、失敗や頑張りを受け入れ激励し続けるTCSの文化、言い換えると「信頼の眼差し」があったからだと思います。

ある年、TCS卒業生が卒業式の答辞で、
「TCSは自分の素を出すことができる、それをみんなが受け止めてくれる場所」
と述べていたのを聞いた時、

その信頼の眼差しを子ども自身が認識していたのだと気付き、それを言語化して感謝を伝えられる子どもが本当にすごいと思いました。


先述したニュージーランドの子ども観、
『子どもたちは、有能で自信に満ちた学び手であり、コミュニケーションの担い手。』

この「有能さ」が指すものは人それぞれ異なっていて、
この子ども観をベースとして教育することで、子どもが安心して学ぶことができ、子どもの自信にも繋がる
と説いています。

TCSでの経験とニュージーランドの子ども観が自分の中で繋がった時、

探究によって育まれる思考力や、原体験を重ねて培った逞しさ以上に、
この「信頼の眼差し」をもとに愚直なまでに子どもを信じるTCSの文化に、自分は救われ、共鳴していたのだと気付きました。


教育者としてスーパーになれなくても、子どもを信頼することはできる。

ある種の”宣言”でもあり、最初は「信頼」という”メガネ”をかけてみる(そう思い込む)ことから始めてもいい。

学びの伴走者として寄り添い、「より成長するために」という観点から(時には無茶振りや見守りなどしながら)関わっていく。

それを続けるうちに、じわじわとPositive Relationship(前向きな関係)に変容していく、そんな実感を生むためのBase(基地)として「とらすとベース」があると思っています。

我々の思いに共感し、共に新たな学びの選択肢を創造する方に、このプロジェクトを通して出会いたいと思っています。



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