あの頃の君と私。
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「教会は外国文化だから、人前でキスをしなければいけないのか」
「そういえば、外国人の家にはプールがある。たしかこの教会にも外にプールがあったはずだ」
賛美歌の合唱が行われている中、そんなことを考えていた。
バージンロードにはバラの花びらが重なり合っていた。一歩引いたところから見ると濃い色をした白と赤のバラの花びらも少し近づいてみるとその色の濃さは、作り物の花びらだということがよくわかる。一面に敷き詰められていた花びらがさらに不規則に形を変えた。その先には、新郎と新婦がいた。
最近の日本には外国人観光客が多い。外国人はみんな口を揃えて日本の文化に対して賞賛を送る。『わびさび』を感じるのだろうか。当の日本人はどうかというと、私の印象では日本人は、いいとこ取りの人種だと感じる。キリスト教でもないのにクリスマスを楽しみ、口裂け女や貞子のようなジャパニーズホラーがいるのにハロウィンを導入する。最近では年越しのカウントダウンもなんだか外国流を取り入れ始めているように感じる。その数時間後にはジャパニーズカルチャーである『お年玉』をもらう。
これが世に言うグローバル化なのだろうか。
結婚式は静粛に執り行われた。
スタッフに促され私たちは式場の中庭に通された。そこには予想通りプールがあった。7月の太陽に照らされて少し眩しかった。
「結婚式で舞い上がった人とかが、たまにノリでプールに飛び込んだりするけど、あれってかなりの金額請求されるらしいよ」
「誰かが入ったら一度全部水を抜かないといけないらしいからね」
6回目の結婚式でまた新たな知識が増えた。
新郎新婦、そして出席者全員での集合写真を撮ることになった。新郎新婦が降りてきた外階段には専属のカメラマンが大きいカメラを首にぶら下げてこちらに指示を出している。私たちは、言われるがままに頭の角度をカメラマンの方に向ける。斜め上を見たときに、ワイシャツの襟元に湿った汗を感じた。総勢100人弱の中の一人の私は、その場にいてもいなくてもあまり関係のない存在ように感じる。こちらに向けられたカメラに向かって笑顔を作ったところでその笑顔具合はどの程度伝わるのだろうか。そんなことを考えているうちに1回目の撮影が終わっていた。カメラマンは撮った写真をカメラの液晶画面でさらっと確認する。
「では次は、こちらに向かって手を振ってください」
やはり私の存在なんてそんなもんなのだ。私はこの集合写真が誰の手に渡っていくのかもよくわかっていない。
記念撮影が終わり、隣接してある披露宴会場へと向かう。正装に身を包んだスッタフが私たちを出迎えた。
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