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【ゆとり教育を再考する #2(全3回)】教育格差の実態 - 家庭の経済状況が学力に与える影響

前回、日本の教育における重要な課題の一つが「教育の機会均等」にあることを指摘しました。今回は、この教育格差の実態をより詳しく見ていきましょう。

OECDのPISA調査(2018年)によると、日本の生徒の学力と家庭の社会経済的背景との関連性は、OECD平均とほぼ同程度です。
※出典:OECD, PISA 2018 Results (Volume II): Where All Students Can Succeed
URL: https://www.oecd.org/publications/pisa-2018-results-volume-ii-b5fd1b8f-en.htm

しかし、これは決して楽観視できる状況ではありません。

具体的に見てみましょう。
文部科学省の全国学力・学習状況調査(2019年)によると:

この14ポイントの差は、およそ1年分の学習量に相当すると言われています。つまり、家庭の経済状況によって、子どもたちの学力に約1年もの開きが生じているのです。

さらに、この格差は高校や大学への進学率にも表れています。日本学生支援機構の調査(2018年)によると:

この格差の背景には、いくつかの要因があります:

  1. 学習環境の差 経済的に余裕のある家庭では、子どもに個室や学習机を用意したり、PCやタブレットを購入したりできます。一方、そうでない家庭では、こうした環境を整えるのが難しい場合があります。

  2. 教育投資の差 塾や予備校、習い事などの学校外教育への投資に大きな差があります。ベネッセ教育総合研究所の調査(2018年)によると、世帯年収1000万円以上の家庭の教育費は、400万円未満の家庭の約2倍です。
    ※出典:ベネッセ教育総合研究所「学校外教育活動に関する調査2018」
    URL: https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5354

  3. 親の教育レベルの影響 一般的に、親の学歴が高いほど子どもの学力も高い傾向があります。これは、家庭での知的刺激や教育への関心度の差によるものと考えられています。

  4. 地域間格差 都市部と地方では、利用可能な教育リソースに差があります。例えば、学習塾の数や質、図書館などの公共施設の充実度に違いがあります。

この教育格差は、コロナ禍でさらに拡大している可能性があります。オンライン授業の普及により、PCやネット環境の有無が学習の質に直接影響を与えるようになったためです。

総務省の通信利用動向調査(2020年)によると、世帯年収200万円未満の家庭のパソコン保有率は約50%、1000万円以上の家庭では約90%と大きな開きがあります。
※出典:総務省「令和2年通信利用動向調査」
URL: https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/210618_1.pdf

この状況が続けば、教育格差はさらに拡大し、固定化される恐れがあります。これは、個人の問題だけでなく、社会全体の問題です。教育格差は、長期的に見て社会の流動性を低下させ、イノベーションや経済成長を阻害する可能性があるのです。

では、この問題にどう対処すべきでしょうか?

  1. 公教育の質の向上 学校教育の質を高めることで、家庭環境による格差を少しでも埋める必要があります。教員の質の向上や、ICT環境の整備などが重要です。

  2. 教育への公的支出の増加 OECDの調査(2021年)によると、日本のGDPに占める教育への公的支出の割合は2.9%で、OECD平均の4.1%を下回っています。
    ※出典:OECD, Education at a Glance 2021
    URL: https://www.oecd.org/education/education-at-a-glance/

  3. 経済的支援の拡充 給付型奨学金の拡充や、低所得世帯への教育支援の強化など、直接的な経済支援も検討する必要があります。

  4. ICT教育の充実 デジタル技術を活用することで、地理的・経済的な制約を超えた教育機会の提供が可能になります。ただし、そのためにはデジタルデバイドの解消も同時に進める必要があります。

  5. 地域社会との連携 文部科学省が推進する「地域学校協働活動」のような取り組みを通じて、地域全体で子どもたちの教育を支える仕組みづくりが重要です。

教育格差の解消は、一朝一夕にはいきません。しかし、この問題に真摯に向き合い、具体的な対策を講じていくことが、日本の未来を左右する重要な課題なのです。

次回は、この教育格差を解消するための具体的な方策について、最新のテクノロジーを活用したアプローチを中心に見ていきます。


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