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短編小説 「深夜のポテチ、そのひと時」


夜遅く、アカリは、都心のガラス張りの高層ビルが連なる中で、一際明かりを放つ企業で働く若干25歳の女性だった。彼女の日々は、画面の光に照らされるオフィスでの深夜までの残業と、帰宅後の束の間の静かな瞬間で満ちていた。

そのひとときのリラックス方法は、窓の外の夜景を眺めながら、香ばしいのり塩味のポテトチップスを1袋と、柔らかなマシュマロを3つ、口に運ぶこと。そのシンプルな幸せは、彼女の忙しい日常の中での唯一の慰めとなっていた。

深夜の1時。部屋の灯りをつけず、月明かりだけで袋を開ける。ポテトチップスの袋を開ける際のシャリシャリとした音、マシュマロが口の中で溶けていくふわふわとした感触。それは彼女にとっての一瞬の逃避と安堵だった。だが、その裏には深い罪悪感が隠れていた。

「こんな時間に、こんなものを…」彼女は心の中で自責の念を感じつつ、しかし、その甘くて塩辛い味に心の疲れが癒されていった。

アカリは、昼間の自分と深夜の自分とで、まるで別の人のように感じていた。昼間はバリバリの会社員として、クールに仕事をこなす。しかし、夜になると、疲れて自己嫌悪に陥りながらも、自分へのご褒美としてお菓子を食べていた。

しかし、その罪悪感と小さな幸せは、彼女の日常の中で特別なものとなっていた。それは、彼女自身の生き甲斐であり、疲れた日々の中のひとときの安らぎであった。

ある日、アカリは会社の同僚・ユカリと深夜にお茶をする機会があった。ユカリは、アカリが深夜のお菓子に対する罪悪感を打ち明けると、「私も実は…」と、深夜にチョコレートをこっそり食べていることを告白した。

2人は笑いながら、それぞれの小さな幸せと罪悪感について語り合った。そして、彼女たちは理解しあい、深夜のお菓子タイムを共有することになった。

アカリは、自分だけの秘密を共有することで、新しい絆を築けることを知った。そして、その日から彼女の深夜のお菓子タイムは、もう少し楽しく、もう少し罪悪感のないものとなった。




時間を割いてくれて、ありがとうございました。

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