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短編小説 「昼下がりの君へ〜いつものダンとジュン」

前回の話↓


ボォドォーン、昼食のタンパクパスタを食べ終え、庭でダンとサッカーをしていると、隣りの更地に金属製の円盤が降ってきた。見上げるといつもの赤い空が見えた。僕が産まれる前は空は青かったらしく、ダンは最後の青い空を知っている。ダンはいつもアニメのTシャツを着て、背が低くちょっと太っている。

「ダン、なにか落ちたよ」僕はそれに駆け寄った。昨日、手紙が入った金属製の球体『メモリーボム』が降ってきたばかり、また手紙かもしれないと思って鳥肌がたった。滅びた国の文字、日本語で書かれた手紙を見たい。僕は文字を読めないから、ダンに翻訳してもらって読んでもらおう。

「ジュン、待てよ」後ろでダンがワントーン高い声で言った。ダンもカプセルが気になるんだ僕にはわかる。ダンと僕は友達、そして、僕の家族。ダンと僕は庭付き二階建て一軒家で、毎日遊びながら暮らしている。

降ってきたカプセルはメモリーボムよりも二倍くらい大きかった。地面は浅くえぐれ、カプセルはスープ鍋みたいな形で周りは焦げついていた。

「手紙かな、手紙かな、滅びた国の手紙かな」僕はカプセルのまわりを飛び跳ねた。早く中身を知りたい、今度は何が書かれているんだろう。メモリーボムよりも大きいから、今回はたくさん手紙が入っているかも。

「落ち着けよジュン」そう言うダンも飛び跳ねていた。赤い空の下で僕とダンはこれでもかと飛び跳ねた。「おぉ、これは中身が期待できるじゃねぇか」ダンはピタッと止まってカプセルに触れた。

「ねぇ、ダン、期待できるってどういうこと?」カプセルを観察するダンに言った。「手紙がたくさん入っているの」ダンはカプセルに夢中だった。

「これは、バンクボムだ」ダンは振り向いて言った。ダンの目はアニメのフィギュアを手に入れた時の輝きだった。「このカプセルは金や高価な宝石、機密情報を格納するカプセルだ。これも決戦前に打ち上げたんだ」ダンは庭の倉庫に走っていった。お金が手に入る時のダンは僕よりも速い。

ダンはあっという間に戻ってきた。手には金属を切るときに使う、電動回転ノコギリを持っていた。そして、すぐにカプセルに歯を当てた。ノコギリが動く音と、高速回転する歯がカプセルに触れた時の音はとんでもなく気持ち悪かった。耳を塞いでもその音は僕の耳に侵入してきた。

ほんの数分でカプセルの中身が見えた。まわりは金属の粉だらけだった。

「おぉ、こりゃすげ〜」ダンは回転ノコギリを投げて中身を取り出した。「見てみろよジュン、これ滅びた国の生活日記と写真だぞ」ダンはそれを僕に見せてくれた。

「ダン、これがお金になるの」

「あぁ、資料館に高く売れる」ダンは新しいフィギュアが届いた時の笑顔だった。

「よしジュン、中身を取り出せたから、回転ノコギリ使ってカプセルを切って飛行機作ろうぜ」

「ダン、ジャンボジェットを作ろう!」


ダンが作ったジャンボジェットは最高に気持ち悪い形に仕上がった。




時間を割いてくれてありがとうございました。

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