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短編小説 「少年少女、前を向け」


 人というのは面白い生き物だ。


 罵倒や人格否定をするパワハラ上司やSNSで匿名で誹謗中傷してくる奴の言葉を聞いて落ち込む奴もいる。パワハラ上司や匿名で誹謗中傷する卑怯な奴の言葉など無視をすればいいのに耳を傾けてしまうそれが人の性なんだろう。これは子供や大人の社会でも起こる。

 子供の場合は大人以上に罵倒する奴の言葉に耳を傾けてしまう。俺のクラスの生徒たちもそうだ。俺は中学校三年生の教師を勤めてる。

 クラスには不登校の生徒やいじめを受けてる生徒や他の教師に嫌な事を言われて落ち込んでる生徒もいる。思春期の中学生にとっては教師や同級生の言葉は必要以上に影響があるんだろう。


「先生、山本君と葛西君がケンカしてます。」

 今日もまた事件が起きる。日常茶飯事ではないがたまに何か事件が起こる生徒同士のケンカや毎日出席してたのに突然不登校になったりする。今回のケンカもたまに起こる事件の一つだ。


「君達、ケンカはやめろ。ケンカの理由はなんだ」


 教師がケンカをやめろと言えば大概収まる。だけどケンカの理由を聞き出すのは難しい。理由を聞いても大概口篭る、言ったら怒られるとかの理由で喋らない訳じゃない。些細な事が理由でケンカをして、自分達が悪いと自覚してるから説明をしにくいんだ。


 ケンカの理由は些細な事だった注意の仕方が気に食わなくてケンカになったみたいだ。中学生というのはもう世の中の事は大抵理解できてる。

 大人たちの社会の事も社会に出れば今学んでいる、いじめをしてはダメな事もズルをしてはいけない事も全て無意味である事も彼らは知っている。


 大人の社会もいじめは起こるし、ズルして出世をする奴もいるすべては綺麗事でしかないと生徒達は思春期であるが故にそういった事には敏感なんだろう。だからストレスも溜まり些細な事でケンカや不登校も起きる。


 生徒達はあと数ヶ月で卒業になる。生徒達には明るくいて欲しい。前を向いてほしい。人はどうしても良い人の言葉には耳を傾けずに、悪い人罵倒する人の言葉に耳を傾けてその言葉に影響受けてダメな方向に行って下を向いて歩く人生を送って欲しくない。

 嫌な事もある、他人と比べられてダメと言われる事もある、自分には取り柄がない思う事もある。だけど、それでも前を向いてほしい。

少年少女、前を向け、明るい道もあるから。


終わり。





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