短編小説 「蜘蛛の糸でつながる高校生の昼下がり」
土曜日の午後、公園には秋の柔らかな日差しが降り注いでいた。紅葉が始まった木々の間から、薄日が地面にぼんやりと影を作っていた。木の葉がゆらゆらと風に舞い、心地よい風がユリノの髪をくすぐった。
公園のあちこちを歩くユリノの目は、ジョロウグモを探して輝いていた。彼女が特に魅了されるのは、その美しい黄色と黒色、そして鮮やかな赤色の紋。
そして、ジョロウグモが織り上げる三層の独特な網の構造には、彼女だけの魅力があった。学校でのテストや友達の話題など、他の生徒たちが日常的に経験することとは違い、ユリノにとっての特別な時間がここにあった。
彼女が家に戻ると、リビングには彼女の妹、ヒマリとその友達がいた。ヒマリの金髪は今日選んだ洋服の色と同じくらい鮮やかに輝いていて、友達とのショッピングから帰ったばかりの様子だった。彼女はいつも通り、友達と笑いながら話す姿を見せていた。
ユリノは、自分とは正反対の性格の妹を見て、少し羨ましそうに見ていた。彼女は無口で、感じたことや考えていることをなかなか人に伝えられない性格だった。一方、ヒマリはどこへ行っても中心となり、皆から愛される存在だった。
ユリノが自分の部屋に向かう途中、ヒマリの笑顔や友達との笑い声が耳に入ってきた。彼女は、その瞬間「私も、あんな風に友達と楽しく過ごしたい」と心の中でつぶやいた。
だけど、ユリノは学校での日常がクラスメイトたちとは少し違っていた。趣味が変わっていることもあり、クラスでの会話も少なく、友達も少なかった。
月曜日、学校での昼休み。ユリノはいつものように一人でジョロウグモの論文や蜘蛛に関する文献を読んでいた。だが、突然、クラスメイトのアヤが近づいてきた。
「ユリノ、それって蜘蛛のこと調べてるの?私の家の庭に大きな蜘蛛の巣を張った蜘蛛がいるの」
ユリノは戸惑い「そうなんだ…。あぁ…、今の季節だとジョロウグモだと思うよ。黄色と黒の縞模様の脚と黄色と暗青色の縞模様の腹部、赤い紋がお腹にあればそうだよ」
アヤは興味深く「その蜘蛛、毒は持ってるの?」と尋ね、ユリノは顔を赤くして答えた。
「あるよ。昆虫を捕食する時にその動きを止めるための毒だけど、人にとっては無害だから大丈夫だよ」
アヤは一瞬、目を丸くした後、にっこりと微笑んでユリノに言った。
「そうだ!今度、一緒に家に来て、そのジョロウグモを見てみない?」
ユリノは予想外の提案に少し驚いていた。しかし、アヤの目はキラキラと輝き、彼女の純粋な興味と好奇心を感じ取ることができた。
「えっと…、いいの?」ユリノは少し照れくさい笑顔を浮かべた。
「もちろん!ちょっと気になってるんだ。それに、ユリノの知識で蜘蛛のことをもっと知りたいな」とアヤは頷きながら言った。
ユリノの目は輝いた。こんな風に自分の興味を共有する機会なんて、これまでになかったからだ。自分の好きなことを友達と共有し、一緒に過ごす時間。彼女は深く頷き、感謝の気持ちを込めて言った。
「ありがとう、アヤ。楽しみにしてるよ」
二人は微笑み合い、それからはクラスの他の話題で盛り上がりながら、昼休みを楽しく過ごした。
時間を割いてくれて、ありがとうございました。
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