現代詩

〈八月の宿命〉

紅色の
空だから

もう
彼らは
優しい夜を
迎える
準備で忙しい

ふたり分の
甘い夜食を用意し
裏の網戸をしめ

愛猫に栄養のある
食事もさせる

蒼い花瓶に
白い花を
活け

マダム
シンシアの
秘密の部屋
みたいに
濃い匂いで
満たす

夜風が
彼女の
亜麻色の
髪を梳かし

今宵の
愛憐の
所作を
くりかえす頃


無数の宝石を
散りばめた
巨大な
王城が
忽然と
その姿を現す

遠いアジアの
空の果てで

無数の星屑を
抱き込み

夜の河は

われらの
八月の
宿命のように

そこで
垂直に
落ちている

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