プロデューサーの仕事とは

プロデュースという言葉にはいろんな捉え方があるので、ここでは僕自身が考えるプロデュース業について書きますね。
音楽に限って言うと、プロデューサーの仕事は相手の良きところを見つけ引き出し、伸ばしていくことです。
プロデューサーの色に染めていくことが仕事ではありません。

ディレクターとして駆け出しの頃、会社が音楽制作に関わるスタッフ向けにセミナーを開催してくれたことがありました。
講師はアメリカ人で、惜しくも2009年に亡くなりましたが、プロデューサーであり、レコーディングエンジニアのグレッグ・ラダニー氏でした。
このような素晴らしいセミナーを受講できたことは、本当にラッキーだったと今でも思います。

日本には、技術を教える指導者はたくさんいるけど、精神的なこと、心やその本質を伝える指導者は非常に少ないと感じています。
心や本質を知らずに技術を身につけても、残念ながら薄っぺらいものにしかならないので、指導をする時にはとても神経を使うのですが、それはこのセミナーを受講したからということが大きかったと思います。
セミナーでメモを取った内容は以下のとおりです。

『エンジニア、プロデューサーの仕事とは』
1、アーティストの主張をどう伝えるか。
2、アーティストは何をしたいのか、常に知ろうとしなくてはいけない。
3、画家と同じ。キャンパスに何を描くのか。
4、音、バランス、全てにおいて、アーティストと話し合い決めていく。
  
このことに一番時間を使うこと。 
5、技術的なことより、精神的な交流を図ることが大事。

『レコーディングに関する重要なポイント』
・レコーディングに規則はない。自由にやる。
・いろんな失敗を繰り返すこと。
・自分の欲しい音を追求する。先生は要らない。
・ミックス時は一度ラフミックスをして、歌手の言いたいことを汲み取る。
・モニターに向かい音を聴く時、プレイヤーの存在を感じ取らなくてはいけ
 
ない。
・音楽はフィーリングが全てを決定する。

「私に今の地位があるのは、失敗を恐れなかったからである。失敗が大きいほど二度と繰り返すことはないし、学ぶことが大きい」

この当時の日本の音楽業界は、新人がデビューする時にはレコード会社の都合か、プロデューサーの意思で音楽性を含めて方向性が決まり、新人アーティストは「売れたらやりたい音楽やらせてあげるよ」みたいな説得をされて、言いたいことが言えないということが多かったんです。

そういう風潮が嫌いだった僕は、このセミナーを受講したことで、本当のプロデュースとはこういうものなのだと、心が踊ったことを覚えています。
5、技術的なことより、精神的な交流を図ることが大事。 これってとても大事なことで、人と人とのコミュニケーションによって素晴らしい作品が出来上がるので、スタジオの雰囲気がいいと、それが音にも反映されます。
そういうことを念頭に置きながら、プロデュースする作品の精度を上げていってもらえたらと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?