井上 祐巳梨
世界はここまで進んでいる。海外の最新STEAM教育事例を紹介
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世界はここまで進んでいる。海外の最新STEAM教育事例を紹介

井上 祐巳梨


世界のSTEAM教育事情

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今日、海外の教育現場では、STEAM教育が当たり前のように実践されています。日本との大きな違いは、導入までの“スピード感”です。

2013年の米オバマ政権のSTEM教育の国家戦略宣言が起爆剤となり、各国がどんどんSTEM /STEAM教育の導入を推し進めました。

アメリカ、インド、中国、シンガポール、フィンランド…。各国はSTEM/STEAM教育を実践する方針を決めると、素早く教育現場に導入しました。この動き出しの早さと切り替え力には目を見張るものがあります。

STEAM教育を実践する国と日本の教育が違うのは、日本のような詰め込み型の授業ではなく、課題解決型やプロジェクトベースの授業が多い点です。子どもたちが自主的に授業に参加し、自分のアイデアを追究し、周囲に伝えるスタイルの学び。それがSTEAM教育に欠かせない要素の一つ。


見るもの全てが“おもちゃ”。 体験型の取り組み

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実際、海外のSTEAM教育関連の書籍を紐解くと、「創造する力」と「考える力」を養いながら、自分だけのおもちゃを作る内容が多いことに気がつきます。

物が溢れている現代、おもちゃは買い与えるものという感覚になりがちですが、幼少期に自分のアイデアを、おもちゃとして形作る経験をすることはとても重要です。

例えば、風船をエンジン代わりに車を走らせたり、お菓子を使って波の動きを観察したりするアクティビティがあります。

「どうやって車は前に進むのか?」「波はどのように見えるのか?」。おもちゃ作りを通じて、子どもたちは実践的・感覚的にこうした科学の世界を体感するのです。

イギリスに住む私の甥っ子は、箱や木を見ると「ロボットが作れそうだ」と感じるそうです。アイデアを形にした経験を持つ子どもには、大人には無駄に見えるものが、自分だけの“おもちゃ”の材料になるのです。

SETAM教育において、課題の解は無数に存在します。子どもたちは自分で考え、自分だけの答えを探していくのです。

自分で“創造する”力を身につけるのが、海外のSTEAM教育の特徴かもしれません。


賞金1000万⁉︎?小中高生向けのコンテスト


海外には、STEAM教育に根ざしたコンペティション・コンテストがたくさんあります。

例えば、韓国の電機大手サムスン電子が主催する「Solve for tomorrow 」は、社会の課題解決を目的としたプロダクトを作るコンテストです。優勝賞金は1,000万円。アプリ製作者が大会運営側にいて、子どもたちの開発をサポートします。

2019年(要確認)の優勝者は、自分たちの周りで起こっている交通事故を防止するためのプロダクトを作ったそうです。

どんな天才高校生が優勝したかと思えば、なんとアメリカの小学生たちだったそうです。

大人が気づかない視点で課題を見つけ、新たなソリューションを提供する。子どもたちのアイディアが、社会にとって大きな価値を生み出す時代がきています。


日本初! STEAM JAPAN AWARD 2020

11月30日、日本初となる「STEAM JAPAN AWARD 2020」(主催:
STEAM JAPAN AWARD 2020実行委員会、協賛:シスコシステムズ合同会社、 グーグル合同会社、 パナソニック株式会社)のオンライン表彰式を開催しました。

2020年は、全ての事柄に対して”アップデート”を求められるタイミングとなりました。コロナによる混乱を経て、日本全体とそして未来を生きる若者に求められる力は「変化を受け入れて、前に進みぬく力/新しいものを生み出す力」。

一定のレールに乗れば安心・安全、その時代は終わり、私たちは次の時代へと移行していきます。「自ら課題を設定」し「自分のスキル」を解決する次世代にスポットを当てていきたいという思いから、自ら課題を設定し、アイデアをカタチにして解決できる中高生を表彰する取り組みとして、今年7月にスタートしました。

コロナの影響があったにもかからわず、全国の中高生およそ80組から応募があり、大人顔負けの作品が連なりました。大会の様子は、アーカイブと公式ウェブサイトでみられますので、ぜひ御覧ください。

来年度はよりパワーアップしたSTEAM JAPAN AWARDを御覧に入れられるよう、精一杯取り組んで行きます。

※アーカイブ視聴はこちら:


33,000人のサポーター?海外の支援が手厚いワケ

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海外では、STEAM教育のサポート体制が充実しているだけでなく、社会全体で子どもの教育を支える意識があります。

STEM教育の例になりますが、イギリスでは企業人や研究者、アーティストなど約33,000人が「STEMアンバサダー」として学校を訪れ、STEM教育の魅力を次代に伝えているそうです。

さらに国内企業2500社とその従業員もSTEM教育の一端を担う存在として学校現場で活躍をしています。こうした制度によって、次世代のSTEM人材を育成することができ、企業側も有能な人材の確保につなげることができます。


圧倒的なスケールを誇るアメリカ

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アメリカのSTEAM教育のスケールは、世界の中でもずば抜けています。

アメリカでは、実際にNASAに行って研究者と一緒にミニロボットを作ったり、PIXARでプロのアニメーターとアニメーションを制作したりするプログラムがあるそうです。

また、ITの聖地シリコンバレーでは、子どもたちを小学校に行かせずに、親御さんたちがカリキュラムをつくって学ばせる「Home education」が主流になってきているのだそう。

親御さんが先生役を務めることもあれば、複数の家庭が共同で先生を雇ってシェアする形もあると聞きました。日本での導入はなかなか難しいかもしれませんが、教育に対する熱意のレベルが飛び抜けているように思えます。

ただ、富裕層が子どもの教育に多額の費用をかけることができる一方、低所得者層はそういった教育の機会を用意することができません。

STEAM教育という素晴らしい教育モデルがあったとしても、貧富の差によって教育を受ける機会に格差が生まれているという現実もあります。

蚊帳の外の日本

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日本は世界のSTEAM教育関連のコンテストにエントリーすらしていないことが多く、残念ながら先進国の中では“蚊帳の外”という感じが否めません。

もちろん、日本でも積極的に大会に取り組んでいる学校はありますが、一部の進学校だけです。海外の子どもたちは、公立・私立関係なく、さまざまな大会に挑戦しています。

STEAM教育は、国、自治体、教育機関、民間企業が一体になって取り組むことによって、初めて着実に根付いていくことができると思います。

この壁をどうやって乗り越えるのか。新しい未来を切り開くために何ができるのか、日々、考えています。




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井上 祐巳梨
東京都出身。日本大学芸術学部卒業。(株)Barbara Pool代表取締役/クリエイティブプロデューサー。一般社団法人STEAM JAPAN代表理事/WEBメディア「STEAM JAPAN」編集長。地域×クリエイティブ/STEAMをテーマに全国各地で地域創生プロジェクトに携わる。