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インセンティブ設計は、プラットフォームの「文化」を規定すること

エクスペリエンスの観点から、サービスと組織を語ってます。
今日は、「プラットフォームとインセンティブ設計」の話。

普段「インセンティブ」の目的をどのように考えているでしょう?
ユーザ獲得の手段?アクティベートの手段?

本日まとめるのは、「インセンティブ」はエクスペリエンス向上と、文化醸成のために設計しましょう、というお話です。

いくつか、事例を用いて説明しますね。

1. 中国版Uber DiDi: 中国が優しくなった

中国でUberを買収したDiDiのお話です。DiDiのインセンティブの仕組みはだいぶ美しいんですよね。
「良い対応・運転をすればするほど、ドライバーが儲かる仕組み」が導入されているんです。

ざっくりいうと、下記2点でドライバーの給与が決まります。
・定量的に見た運転の質(現在地から目的地までのルート・時間など)
・ユーザの主観的な評価(★など)

結果としてドライバーは、「できるだけスムーズに目的地に連れて行く」「(連れて行くだけでなく、)困りごとも解消しようとする」行動を引き起こすことになったんです。

数年前から中国に居た日本人はよく、「中国が優しい国になった」と表現しています。荷物を運んであげたり、いち早く目的地につくことをドライバーが目指しますからね。結果、ドライバーの給料も上がって、3方良しですね。(水とかも用意してくれてたりする)

インセンティブ設計一つで、「最高品質のサービスが提供され続けるプラットフォーム」を実現したんです。

(ちなみにDiDiは、中国語全くわからない私でも使えるほど、いわゆる狭義のUX面でも優れています。)

このインセンティブ設計に矛盾があると、「単に設けるために人を運ぶ」という概念になりうると考えています。

2. パーク24のコールセンターの話: コールセンターがサービス自体の品質を向上させる

少しDiDiとは異なりKPI設計の話なのですが、近い話なので共有しますね。
有名なのでご存知の方も多いとは思いますが…
("会社をプラットフォームだと捉えた"と思っていただけると ^^; )

詳しくは下記の記事にあるのですが、コールセンターのKPIを「入電率(=カーシェア一回の利用あたり、顧客からかかってくる電話の数)」にしたら、下記のような良いことが起こったんです。
・コールセンターの人が、できるだけ1回の電話で問題を解決しようとし、1度電話するとすべて課題が解決されるようになった
・コールセンターからサービス側に改善フィードバックがかかった

コールセンターによくあるのは「電話を何件取る」など単に「数」のKPIを作ってしまうこと。そうすると、「早く電話を終らせるのが正」「長引く人に対応するのは悪」のような文化が醸成されます。

KPI設計一つで、急成長をここまで支えられたというわけです。

参考: パーク24のカーシェア、急成長の鍵は「入電率だけを追え!」

3. Saasビジネスの営業で「率」を追う

Saasビジネスの営業なども同じことがよくありますよね。(流石に盲目的に売る人もあまりないと思うのですが)例えばSaas系企業の営業KPIが、「販売件数」になると、"とにかく売れば良い"という世界観になります。そうすると、結局短期で離脱してしまう、それをカスタマーサクセスが頑張って取り持とうとするが辛いだけ・・・結局対応コストだけかさむ…など負の循環が回り始めます。

(まだ実際に試している場所があるかはわからないのですが)例えば営業のKPIを、数だけでなく「アクティブ率」にすると、「離脱」の概念まで含めたPDCAが回り始めます。(最低限何件、を担保した上で、アクティブ率月間●%を追う、など)

サブスクリプション型にビジネスが変わっているのに、売り切り型の頃から変わらないKPIを持つのは、若干違いそうですよね。

SaaSにおいては「カスタマーサクセス」が結構鍵を握っていると思うので、全体で連携をしながらうまく進めていけるといいなぁと。

小言メモ
正直「組織図」を箱で割るのも限界がありそうだなと。各部署の関係性を示したベン図のような「新しい組織構造」を誰か定義してくれないかなーとか思ったり。

いろいろあるけど、結局「何が称賛されるべきか」を明確にすることが超大事

インセンティブ設計のときは、「何が称賛されるべきか」という会社のスタンスや、哲学が超重要になってきます。売り切りに徹すれば売り切りに徹したものになるし、「品質向上」にフォーカスすると品質向上になりますし。

組織づくりも、サービスづくりも、結局「人」が支えるもの。
彼ら/彼女らが何を持って動くと世の中に良いサイクルが回るのかを考えながら、プラットフォームを作っていきたいですね。


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