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きのうの夜、本のこと

やっと普通に仕事に行ける…と思っていたら、今度はお義母さんが体調をくずされる。

いろいろなことがあったし、身体も心もとても疲れていたんだろうな…と慮りつつ、きのうは仕事を早退して、熱が高いので救急外来に行く。


市民病院の救急外来、とても久しぶりだった。
前にも行ったことがあると思うのだけど、そのときは子供の体調不良だっけ。
(どういう状況で行ったのかまったく思いだせない)

受付して、呼ばれるまで待合室で待つ。
いろんな人が外来にやってくる。
小さな赤ちゃんを連れている人、小学生くらいの男の子、女の子、もちろん年輩のひとも。

色々検査をして、また長いあいだ待合室にいて、結果がでるまで4時間以上いた。
(18時くらいに行って、終わったのは22時半くらい。晩御飯をすませていてよかった)

待ちながら、少し前に読んだ西加奈子さんの『くもをさがす』を思いだす。
そこにも救急外来でひたすら待つ話があった。
病院って終わる時間が全然分からないから、
ひたすら待つしかない。
スマホを見るのも疲れるから、目を瞑ったり、辺りを観察したりした。

たくさんの機材、定期的に鳴る音、救急車がやってくるベルの音、子供たちの泣く声、これから入院する説明を受ける家族。

私も一度だけ、長男と一緒に市民病院に入院したことがある。
1歳3ヶ月のときと、確か6歳のとき。
ずっと付き添うのはとても大変だった。
眠れないし、疲れはとれないし。
自分の家に帰れたとき、本当にホッとした。

入院になるかなとヒヤヒヤしたけれど、今回は点滴と薬の処方だけで大丈夫だった。
家にいられる幸せをあらためて噛みしめる。
子供たちが健やかでいてくれることにも。


夜遅くまで病院にいたのもあって、今日は午後から束の間、眠ることにする。
(今日が休みでよかった)


そのあと、読みかけだった吉本ばななさんの『はーばーらいと』を最後まで読み終わる。
宗教二世の女の子ひばりと、つばさという男の子が出てくる物語。

周囲のしがらみから逃れて自分らしくいるための、途方もない切実さが光る小説だった。


ひばりが、

「でもまだ、私はどうしようもなく私だよ。これを奪えるものは、この世にないんだ。神様さえも奪えない」

と言ったとき、

「何も奪わないのが、神様ってもんなんじゃないのか」

と言った、つばさの台詞がよかった。


自分の感覚を信じたいのに否定されて苦しいとき、たったひとりでも味方してくれる人がいることは、どれだけ救いだろう。

そんなことを思ったりした。


どんなに深い傷を負っても、まわりにあるちょっとした光や、気のおけない人との関係や会話が積み重なって、その人を少しずつ大丈夫にしていく。


快復していくひばりの強さを前に、過去も傷も現在もやわらかく肯定するような、そんな小説だった。




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