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映画『エイプリルの七面鳥』

2003年/製作国:アメリカ/上映時間:80分
原題 PIECES OF APRIL




予告編(海外版)


Story

 保守的な母親と揉めて家を飛び出し、そのまま家族と疎遠になってしまっているらしいニューヨーク在住の活発な女の子、エイプリル。
 そんなエイプリルが感謝祭に、ガンに侵され余命いくばくもない状態となってしまった母親とその他家族(父親・母方祖母・弟・妹)を自分のアパートに招待し、関係を修復すべく(&自分の彼氏の紹介も兼ね)、七面鳥料理を作って振舞おうと奮闘する。
 のだけれども、エイプリルは全く料理の出来ない子だし、オーブンは突然故障するしで、てんやわんやのドタバタ状態に・・・
 はたしてエイプリルと(彼氏と)家族の運命は?
 そして、七面鳥料理の運命は⁇


レビュー

 一人の女の子が感謝祭に、心を込めて、家族のために七面鳥料理を作る。
 乱暴に言ってしまうとたったそれだけの「シンプルで短い」お話が、何故こんなにも面白く、愛おしく、そして繰り返し観たくなってしまうのか。
 
 子が成長し自我を確立してゆく思春期。
 父と息子、母と娘という同性同士の「関係大悪化」は、地球上の至る所にて日々、かなりの高確率で発生しているように思います。
 そしてそれを修復し、和解出来るか、出来ないか、ということが、その後の双方の人生にとってとてつもなく大きな影響を及ぼすことになっているのではないか、とも思います。
 
 エイプリルの母は「末期ガン」且つ「かなりの体調不良」といういつ逝ってもおかしくない切迫した状況にありながら、これがエイプリルと仲直りすることの出来るラストチャンスになるかもしれないということで、なんとしてもその元へ向かおうと頑張ります
 エイプリルの方も、母と一緒に食べる最後の食事になるかもしれないという思いから一生懸命、七面鳥料理を母のために(たぶん生まれて初めて母のために料理を作って)振舞おうと奮闘します。
 個人的にはそのような母と娘の姿に、思い切り感情移入しながら観ることとなったため、ラストシーンには最高のカタルシスを感じました。 
 また主役の2人以外の脇役の演技も見事で、完璧なキャスティングがなされており、それも思い切り感情移入することとなった大きな要因のひとつであったように思います。
 さらに本作は、黎明期のデジタルカメラにより撮影されているらしく、その画質はとても荒いのですけれども、逆にその画質の荒さにより「とある家族のホームビデオ」を一緒に鑑賞(又は撮影)しているような温もりと親しみに満ち溢れており、それゆえに最終的には登場人物達の多くに、リアルな(自分の家族に対するような)親近感を抱いてしまうという不思議な魅力も兼ね備えています。

 あと巧いなぁと感じたのは、「オーブンが故障し、冷えている生の七面鳥を中々焼き上げることが出来ない」というシチュエーションが、「冷え切ってなかなか温めることの出来ない母と娘の、お互いに対する感情(想い)」のメタファーになっていたり、母が娘の居る(待つ)場所へと「離れた場所から近づいてゆく(向かう)」というシチュエーションが、母と娘の「離れていた感情の距離を近づけてゆく」過程のメタファーになっていたり、ラストの「扉」の使い方・・・等々。
 「繊細」且つ「一切の無駄無く」紡がれてゆく母と娘の関係性とその感情の機微と変化が、本当に素晴らしかったです。

 ちなみに本作は、母と娘とその家族の問題や関係以外にも、アメリカにおける人種問題や、その人種の垣根を上手に飛び越え「人類が家族として生きるための方法」にそれとなく触れており、そのスケールの大きな表現と見解には、驚くと共に、深く共感しました。
 
 感謝祭にひとりの女の子が母を想い料理することから始まる、人々の新たな出会いと、優しさの連鎖。そして生まれゆくいくつもの友情。
 「ハートウォーミング」という表現がこれ以上ない程ピッタリな、とても素敵な作品。

 『PIECES OF APRIL
 ※「Peace」もかけたダブルミーニング?


その他

 ●監督は「ギルバート・グレイプ」の原作・脚本を手掛け、本作が初の劇場映画監督となった、ピーター・ヘッジズ
 ※「ギルバート・グレイプ」も大好きです

 ●エイプリルの衣装とヘアメイクは抜群と思う

 ●「感謝祭」とは?





 

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