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【 お化粧 】


はじめてお化粧をしたときの
ドキドキとわくわくは、今でも思い出せる。
それはきっと、
初めて魔法が使えたから。

お化粧品のパッケージに期待を膨らませて
独特の大人っぽい良い香りに包まれた
鮮やかにキラキラ光るいろんな色で
わたしを染めてゆく。

自分が自分でなくなるみたいで
なんにでもなれるような気がした。


楽しいと思ったのは束の間
「子供にはまだはやい」
「色気づいてみっともない」
「いまは勉強しろ、他は必要ない」
鳴り響くお洒落を否定する言葉たちに
いつしか、お化粧は悪なんだと思っていた。

しかし、大人になれば
「お化粧はマナー」
「下手だね」
「似合うお化粧したらどう?」
なんて、それを義務とする言葉たち
お化粧はしなければいけないものに変わった。


毎日毎日、少し早起きしてお化粧をする。

義務だから?
マナーだから?
それもある。

だけど本当は違う。

綺麗な形の眉毛
顔を一気に明るくするハイライト
顔色を良くするチーク
くるんと上をむかせた睫毛
色の組み合わせが楽しいアイシャドウ
他にもたくさんあるけれど
ぜんぶ上手くいったら
根拠の無い自信と良い一日になるような気がする
そんなワクワクな気分にさせてくれるんだ。

お休みの日に自分のためだけにするメイク
いつもの自分とは違う顔になるメイク
可愛く見えるメイク
カッコよく見えるメイク
いろいろあるけれど
全部全部
わたしのためだけの魔法なんだ。

家族や、お友達、
恋してるあの人にだって
わたしの魔法に
口を出す権利なんてない。
わたしにも、誰にも
あなたの魔法に
とやかく言う権利なんてない。

今日も、わたしは
わたしのために魔法をつかう。

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