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貧困とはなにか:その歴史、現状、メカニズムと脱出法

人貧智短(じんぴんちたん)
→ 人は生活に困窮すると知恵が働かなくなるということ。

貧困とはなにか。

簡単に言えば、生活を営む上で必要な最低限の資源を得られない状態だ。

ただし、その定義は時代や文化により変動する。

そして、貧困には相対的な貧困と絶対的な貧困が存在する。

相対的な貧困は、自身の所得が社会の平均所得や中央値より大幅に低い状態を指す。

一方で、絶対的な貧困は、食料、衣服、住居など基本的な生活資源を確保できない状態を指す。

そんな貧困の概念は古代から存在していた。

古代ローマでは、富裕層と貧困層の差は明確で、貧困層の人々は奴隷や戦争の戦利品として扱われることが多かった。

中世ヨーロッパでは、教会が貧困層の支援を行う一方で、貧困は罪や怠けの結果とする考え方もあった。

ところが、現代の貧困の定義と認識は、工業革命以降の社会変動を経て形成されていった。

19世紀のヨーロッパでは、工業革命により大量の労働者が都市に集まるようになった。

その結果、過密な居住環境と低賃金による生活困難が広がった。この現象は、社会問題として認識されるようになり、貧困の定義や問題性が広く議論されるきっかけとなった。

その後の20世紀に入ると、社会福祉の発展とともに貧困問題への対策も進化した。

特に、第二次世界大戦後の高度経済成長期には、多くの先進国で社会保障制度が整備され、貧困層の生活改善が図られた。

けれども、経済格差の問題は依然として解消していない。

現代社会では、富の集中と格差拡大が進行し、新たな貧困問題を生んでいる。

貧困地域の現状

世界には多くの貧困地域が存在する。

その中でも、アフリカや南アジアなど発展途上国の地域は、特に深刻な貧困問題を抱えている。

そういった地域の現状と問題を考察していこう。

まずアフリカだ。

サハラ以南のアフリカでは、経済的な困難だけでなく、戦争や紛争、病気の蔓延といった問題により、多くの人々が生活困窮の状況に置かれている。

また、気候変動による干ばつや洪水も、農業に依存する地域の生活をさらに困難にしている。

次に注目すべきは南アジアだ。

インドやバングラデシュなどの国々は、人口が非常に多いことで知られているが、その一方で貧困率も高い。

都市部では、過密化とインフラの不足が深刻な問題となっており、衛生環境の悪さから伝染病が蔓延しやすい状況だ。

それら発展途上国だけでなく、先進国でも貧困は存在する。

その一例として日本を挙げると、所得格差の拡大や働き方の多様化に伴い、新たな貧困問題が生まれている。

特に、非正規労働者の増加や高齢化が進む中で、生活保護受給者数の増加や子どもの貧困率の上昇が見られる。

また、都市部のスラムという問題も無視できない。

スラムは、貧困層が集中して住む地域を指し、衛生環境の悪さや犯罪の多さなど、様々な社会問題を引き起こす。

世界中の多くの大都市に存在し、その解決は容易ではない。

世界のスラム地域の現状

スラムとは、貧困層が集中して住む地域のことで、世界中の多くの都市に存在している。

一度は耳にしたことはあるだろうが、日本にいるとなかなかイメージが湧かないので、世界の代表的なスラム地域を挙げておく。

ドハールヴィ(インド、ムンバイ)

アジア最大のスラム地域の一つで、約100万人の人々が過密な状況の中で暮らしている。

衛生環境が悪く、教育や医療のアクセスが限られている。

キベラ(ケニア、ナイロビ)

アフリカ最大のスラム地域で、人口は約200万人と推定されている。

飲料水や電力、適切な住宅が不足している。

フェベラ(ブラジル、リオデジャネイロ)

リオデジャネイロ市内に点在するスラム地域。犯罪率が高く、治安の悪さが問題となっている。

シティ・オブ・ゴッド(ブラジル、リオデジャネイロ)

人口約50,000人のスラム地域。

ドラッグ関連の犯罪が多く、若者の失業率が高い。

オラーニェンツィヒト(南アフリカ、ケープタウン)

人口約40,000人のスラム地域で、住民の多くが失業している。

HIV感染率が高い。

こういったスラム地域では、衛生環境の悪さや犯罪の多さなど、さまざまな社会問題が発生している。

その解決は容易ではないが、積極的な教育支援や医療支援、経済活動の創出などにより、改善の道筋が見えてくるだろう。

貧困のメカニズム:なぜ頭が働かなくなるのか

貧困は物質的な困難だけでなく、人間の思考や判断にも影響を与える。

ここでは、そのメカニズムと科学的なエビデンスについて考察しよう。

様々な研究によると、貧困は人間の認知機能や意思決定に悪影響を及ぼすことが発表されている。

資源が不足する環境では、生活を維持するための判断が常に求められ、そのプレッシャーは思考力を奪う。

これは「認知的負荷」と呼ばれる現象で、脳が解決すべき問題が多すぎると、新たな情報の処理や創造的な思考が難しくなる。

また、貧困がもたらすストレスは、脳の構造自体に影響を及ぼす可能性がある。

長期的なストレスは、前頭葉や海馬といった認知機能に関わる脳領域を縮小させ、記憶力や自己制御力を低下させる。

この結果、貧困状態が続くと、貧困から抜け出すための思考力や行動力が失われてしまう可能性があるのである。

また、これらの現象は、貧困がただの経済的な問題でなく、人間の心と脳に深く関わる問題であることを示している。

そのため、貧困問題の解決は、経済的な支援だけでなく、教育や健康支援、心理的ケアなど多角的なアプローチが必要だ。

貧困と貧富の差

社会には、富裕層と貧困層、そしてそれらの間に広がる貧富の差が存在する。

これがどのように生まれ、どのような影響を与えるのかについて考察していこう。

まず、貧富の差が生まれる理由は、教育や社会的地位、政策など多くの要素が絡まる。

1つは教育の機会の不平等だ。

教育は所得を上げる可能性を高める重要な手段だが、貧困層には十分な教育を受ける機会が与えられないことが多い。

これにより、社会の中での所得格差が生まれやすくなる。

また、社会的な地位や権力の不均衡も貧富の差を生む要素だ。

富裕層は、自己の利益を増やすための政策や法律を形成する影響力を持つことが多い。

これにより、貧困層はさらに厳しい状況に置かれるのが現状だろう。

貧富の差が広がると、当然その影響は社会全体に及ぶ。

貧富の差が大きい社会では、犯罪率の上昇や教育の機会不平等、健康状態の悪化といった問題が生じやすくなることは理解できるだろう。

つまり、社会全体の安定や発展を阻害する要素となるわけだ。

ということで、貧富の差を縮め、全ての人々が公平な機会を持てる社会を作るためには、教育の機会の提供や富の再分配、社会保障の強化などの施策の必要性が叫ばれている。

貧困からの脱出

貧困は厳しい状況だが、その中から抜け出す方法は存在する。

ここでは、その具体的な方法と社会全体での貧困解決のアプローチについて考察してみる。

まず個々の人々が取るべき行動だ。

貧困から脱出するためには、自己のスキルや知識を向上させることが重要だ。

教育や職業訓練を通じてスキルを身につけ、より良い職業に就くことで所得を増やすことができる。

また、財務知識を身につけることも大切だ。

お金の使い方や投資の知識などを学ぶことで、少ない所得でも効率的に生活を送ることが可能になる。

また、思考の習慣も重要だ。

貧困の状況にあると、消極的な思考に陥りがちだが、前向きな思考を持つことで行動力を維持し、良い機会を見つけ出すことができる。

そして、なによりも重要なのは、自分が貧困から抜け出すことが可能であるという信念を持つことだ。

それから、社会全体での貧困解決のアプローチも重要になる。

教育の機会を提供し、賃金の公正な支払い、社会保障の強化などの政策を実施することで、貧困層の生活改善を図ることが可能になる。

また、富裕層への課税を強化し、その収益を貧困層の支援に充てることも効果的な手段として政府が動く場合も散見される。

まとめ

貧困の定義と歴史、貧困地域の現状、貧困が人間の思考に及ぼす影響、貧富の差の問題、そして貧困からの脱出について考察したものをまとめてみた。

これらから、貧困が単なる経済的な問題でなく、教育、健康、心理など多方面にわたる深刻な問題であることが明らかだということは理解してもらえたと思う。

社会全体としては、教育の機会提供や公正な賃金支払い、社会保障の強化などを通じて、貧困層の生活改善を図ることが必要だ。

また、富裕層への課税を強化し、その収益を貧困層の支援に充てることも有効な手段だというのが、多くの政治家の考え方だ。

ここについては個人的には否定的な立場ではあるが、いずれにせよ個々の人々にとっては、自己のスキルや知識を向上させ、前向きな思考を持つことが重要だ。

また、くり返しになるが、貧困から抜け出すことが可能であるという強い信念を持つことも大切だ。

今後、貧富の差はさらに拡大する可能性が高いことは日々説いていることだ。

ただし、それに立ち向かうための方法はいくらでも存在している。

その最たるところにあるのが、思考停止をせず、インプットとアウトプットをくり返し、自己の成長と社会の改善を目指すことである。

そして、貧困から少しでも遠い場所に行くことができたのであれば、1人でも多くの人を貧困から遠ざけることができるようにする側に回ることも意識してもらいたい。

そうすることで、万人には当てはまることはなくても、貧困を感じる人が少しでも減る多くの人にとって理想的な社会の実現ができるだろう。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。