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「酸っぱいブドウ」と「甘いレモン」の法則

韓信匍匐(かんしんほふく)
→ 大きな目的のために一時の恥や怒りを耐え忍ぶこと。名将の韓信が腹ばいになって人の股をくぐった故事による。

耐え忍んだ先になにがあるのか。

なぜ耐え忍ぶことができるのか。

それは、その先に成功という名の栄光があることを信じているからにすぎない。

成功や栄光を掴める人になるためには、思考が大切だ。

イソップ寓話の酸っぱいブドウの法則

酸っぱいブドウというイソップ寓話を知っているだろうか。

この話もよくビジネスの場面では出てくる法則の1つなので、知らない人のために簡単に説明しよう。

その昔、旅を続けているキツネがいた。

キツネは川や食料になりそうな植物も見つけることが何日もできずに、なにも食べていな日が続いていた。

そんなキツネは、ようやくブドウ畑に出会うことができた。

空腹で腹ペコのキツネは目の色を変えて、そのブドウ畑に猛ダッシュした。

とにかくブドウを食べたいキツネは何度もジャンプするのだが、ブドウの木が高すぎて届かない。

その後も背伸びをしたり、少しでも高く飛ぼうとジャンプをくり返すのだが、どうしてもブドウまで届かない。

何度か挑戦したけれども、疲れてしまったキツネは自分の尻尾でさえも重たく感じるようになった。

とうとう、空腹だったのに目の前にあるブドウを見てもツバをすら出てこなくなった。

打ちひしがれたキツネは、どうせこのブドウは酸っぱくてマズいに違いないから、誰が食べてやるものかと捨て台詞を残すと、その場を去ってしまった。

この話を要約すると、本当は手に入れたくてたまらないのに、必要のないものとして諦めることで、納得しよう、正当化しようとするということだ。

あの子と仲良くしたい、異性にモテたい、志望校に合格したい、成績が良くなりたい、結果を出したい、地位や名誉が欲しいといった欲望を手放すということだ。

価値の無いもの、自分にふさわしくないもの、必要のないものとして思考を無理やり変えてしまうのである。

防衛機制という思考

この酸っぱいブドウの理論をフロイトの心理学では、防衛機制という。

自分は別にブドウを食べたくないんだと強がりを言って、自分の努力が実らなかったことを納得しようとする行為を指す。

あるいは、本当は自分が食べたいのはブドウじゃなくてリンゴなんだと言い聞かせるといった言動も当てはまる。

志望する会社に就職できなかったり、志望校に合格できなかった場合、意中の人を射とめられなかった場合、狙っていた成績や役職を手に入れられなかったときなど、人生に挫折はつきものだ。

そんな挫折体験に遭遇したときに、どのような行動パターンを取るかによって、その人の思考がわかるというわけだ。

酸っぱいブドウの主人公であるキツネと同様な言動をする人は、本当は価値が無かったと思い込むことで、自分を傷つけないようにする人だということになる。

この思考は、個人で消化できる場合には特段問題ないかもしれないがエスカレートする場合がある。

例えば、仲良くしたかった人が振り向いてくれない、構ってくれないときなどに、別に仲良くなりたくない思い込むことが高じて、その人の悪口を言いふらしたりするわけだ。

また、親の愛情を受けることができなかった場合に、本当は寂しいにも関わらず、別に愛情なんて欲しくないと、横を向き続けたりするのである。

こういった思考になると、くじけ癖やあきらめ癖がついて成長のチャンスを逃してしまうということにも繋がりかねない。

甘いレモンの法則

また、甘いレモンの法則という似たような説もある。

これは、苦労してようやく手に入れることができたレモンについての心理作用を指している。

つまり、このレモンは甘くて美味しいに違いないと現状以上の評価や理由をつけることで、無意識のうちに自己の心の安定を得ようとする心理が働くということだ。

例えば、ネットオークションで落札した商品が届いたときに思っていた以上に状態が悪かったとしても、安く手に入れられたから大丈夫と自分で納得してしまうといったような場合だ。

この甘いレモンの法則も酸っぱいブドウの法則と同様に人間の心理を表しているのだが、共通しているのは負け惜しみによって満足するというものだ。

つまり、自分の目標や欲求が満たされなかったときは、これを手に入れても自分には良いことがなかったと負け惜しみをいって満足する。

逆に、目標や欲求が満たされたときは、例え手に入れたものが想像とは違っていた場合でも、手に入れたものは満足できるものだったと負け惜しみを言って、心の安定を得ようとするのだ。

理想の基準を下げて、現状の基準を上げることで、できなかったではなくて、やらなかったという口実を作ることができるということだ。

酸っぱいブドウと甘いレモンの法則の裏側

この2つの法則は、精神的な安定を一時的に手に入れることができるかもしれない。

けれども、そこから改めて挑戦しようというモチベーションは明らかに低下してしまう劇薬ともいえる。

本来は自分が手に入れたいと思っていた欲望や理想をダメだと決めつけるわけで、そうなると低いところで現状に満足するようになり、思考停止に繋がるというわけだ。

人というのは、一度思い込んでしまったものや継続しての言動に一貫性の原則が働くため、そこから再びモチベーションを上げることは、なかなか難しくなるのである。

一時しのぎにしかならないのに、酸っぱいブドウや甘いレモンが染み付いてしまうことには警鐘を鳴らしたい。

まとめ

時間が経って冷静に考えたときに、やはり自分がこうありたいという理想が芽生えたり、もっと単純に欲しいものは欲しいと思えることは健全な証である。

挑戦したことで失敗して挫折したという事実は、頭の中で理解しているからである。

そして、一時的に精神的な安定を得たとても、それは現実逃避に近かったものだと気づけるのが人間だ。

酸っぱいブドウや甘いレモンの法則は劇薬であると追いやれる側の人でありたいし、そういう人が増えるといい。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。