見出し画像

ヒマワリは誰の物語か

SHASEN×ステージタイガー
「ヒマワリ」
最終稽古を終えました。
脚本演出家の虎本剛です。

この物語の発端は、昨年の夏に遡ります。
卒業を半年後に控えた生徒たちとミーティングをし、どんな物語がいいか意見を求めました。
そこで出たのが

・昭和の物語
・時代を感じるレトロな舞台美術を作りたい
・厳しい父と子供の関係を描きたい
・ちゃぶ台返しをする父親がいい
・ダンスや殺陣がない会話中心の構成

といった内容でした。
僕は疑問に思いました。
どうして今の時代を生きるあの子達が、昭和の風景や人間関係を求めているのか?と。
ややもすれば古いと笑われ、ハラスメントだと、コンプライアンスだと嫌悪される暴力的な父親像の何に惹かれるのか?

いくつか会話を重ねる中で気づいたのです。
生徒たちが真に求めているのは
『遠慮のない、正面からぶつかってくれる大人の姿』じゃないか?と。

それはすなわち、今の大人はどこか距離があって冷めているという裏返しかもしれません。
さらに突き詰めれば教員である僕に対する、お前もっと本気でぶつかってきてくれや!という無意識のあらわれだったのかもしれません。

例え古いと笑われダサいと馬鹿にされ、時代遅れと煙たがれようとも、本気でその人の事を思う、そんな人物を描こう。


こうしてストーリーと、その主人公である柑一、実の骨子が出来上がっていきました。

本気。書く僕も演出する僕も本気。
おかげで久々の2時間超え(130分)作品となりました。
※いつもが本気じゃないわけじゃないです。

全17キャストが心血を注いでくれたことで、どの人物にもドラマと成長と葛藤が生まれ、幾つもの時代と喧嘩と恋愛と後悔と結実を描いた、胸を張れる作品になりました。
ヒマワリは、そんな卒業生たちの想いが詰まった作品です。

ですが。


私的な話になりますが僕には父親がいません。
9歳の時に、大病を患いこの世を去りました。
幼いながらに母を支えねばならないと、僕はかなり優等生で真面目な青春時代を送ってきたように思います。
そのせいもあって、今まで親に怒られた記憶があまりありません。
だから心の底で、叱ってくれる大人に、高い壁になってくれる先達に憧れがあります。
格闘技やプロレスが好きになったのも、そういった意識が働いているように思うのです。

だからでしょう。
書きあげた時から薄々感じていましたが、
僕は柑一に、家を飛び出し演劇を始めた自分を
実に、イメージの中にある自分の父を重ねています。

誰がなんと言おうと、僕は実のような父親が好きだ。
自分もそんな父親になりたいと思う。

つまりヒマワリは、僕の物語でもあります。



てなわけで、
SHASE×ステージタイガーの冠にふさわしい作品に仕上がりました。
そしてご観劇いただいた皆様の物語になることを願います。

劇場にてお待ちしております!

虎本剛


SHASEN × ステージタイガー
『ヒマワリ』1/27(土)-28(日)
近鉄アート館料金 3,800円(当日精算)

予約と詳細
st-tg.net/_sp/himawari/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?