キスマークの思い出
友人とランチをする予定があった、ある日の午前。
口紅をつけすぎたのを電車内で気がつき、ティッシュにキスマークをつけた。余分な口紅をとるために。
ティッシュについたキスマーク。唇を押しつける感触。そういえば、昔やったことがある。
幼いころの記憶を思い出した。
私は、悪い女だった。決して、男女がまじ合ういやらしい話ではなくて。
なんて子供じみているんだろう。そんな行動をした自分が恥ずかしくてたまらない。と、思いつつも白状すると、私は自分がつけたキスマークで、父と継母を別れさせようとしたことがある。
ね、悪い女でしょう。
ここには書ききれないほど、2人の関係も、継母のことも嫌いだった。彼女はわたしに殴る、蹴る、ふり回すは日常茶飯事で、髪は抜けるは、あちこち痛いわで、精神的にも限界だったし、そもそも2人の結婚は望んでいなかった。
「結婚する」という話を父から聞かされたとき、私は絶望した。父をとられたような気持ち。「あの人と結婚してもうまくいくはずがない」という気持ち。
極めつけは、苦味のある肝を食べてゲっとするような、顔がぐちゃぐちゃになりそうな、異常さ。
妻になる女性の、人間的な異常さを知らない父。それを知っているのは私だけ。そんな人間たちが家族になること自体、異常きわまりない。
うっぷんが、溜まりに溜まっていたのだ。
継母の口紅をぬすんで、それはもうご丁寧に唇にたっぷりつけて、父のワイシャツに濃厚なキスマークをお見舞いしてやった。
なんの意味があるのか?
私の作戦はこうだった。
父のワイシャツをクリーニングに出すのは、きまって継母だった。クリーニングに出すなら、ワイシャツには絶対に触れる。ポケットに何か入っていないか、目立つ汚れはないか、なんてね。
もしかしたら見落とすかもしれない。
見えやすいように、襟元にキスマークをつける。それをみた継母は、父にいい関係になっている女性がいると想像するはず。そして喧嘩になり、夫婦関係が悪化して、別れてくれるのではないかーーと。
今思えば、無計画な行動としか思わない。10歳だったわたしは、当時大人だと思っていたけれど、26歳になった今のわたしからすれば、幼稚さにふき出してしまいそう。
キスマークひとつで離婚にはならないだろうし、誰がつけたかなんてすぐにバレる。だって、継母から盗んだ口紅なのだから。継母がつけていないとしたら、ほかに誰がつける?
しかも、キスマークに気がつかなかったら、この計画は一瞬にしておジャンになる。
まあ、思惑どおり、結局キスマークの効果は発揮されずに終わったのだけど。
そんな昔話を思い返しながら、友人との待ち合わせ場所に足をすすませるのであった。
▲顔の骨格と、輪郭を変える美容整形をうける前に書いた、私の生い立ちや人生がつまった記事。10時間以上の大手術になると言われていたので、死を覚悟して書きたかったことを自由に書いたのが、この24歳の遺書。
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