リターンを変えれば投資が変わる。「スタートアップのJカーブ」の意味を考え直してみよう。
スタートアップのJカーブ
一般的にスタートアップというと、以下のJカーブのような事業の急成長をだといわれています。
一方で、スモールビジネスとはどんなものでしょうか。
このような積み上げ型のビジネスです。
リスクをできるだけ最小限に留め、コツコツと事業を積み上げていくスタイルです。
多くの中小企業は、こうしたビジネスモデルも多く、これはこれでとても大切な経営スタイルです。
しかし、社会を変えるようなインパクトを目指すような起業家にとっては、結果に対するスピード感は遅すぎると感じます。
他のプレーヤーがスピードが早いこともあって、やはりそのスピードを意識せざるをえません。
ですから、リスクをとって結果を大きく設定するのかが、ひとつのポイントになってきます。
このスタートアップとスモールビジネスとの違いはどんな点にあるのでしょうか。
スタートアップは、
最初が、マイナスに振れる
そこから、二次曲線を描いて上昇していく
ということです。
これが何を意味しているかというと、
投資をして回収する
急成長をする
ことを表しています。
スモールビジネスはこのマイナス部分が無かったり少なかったり、借入で賄えるようなビジネスのことをいいます。
しかしながらスタートアップやベンチャーなどでは、ここが資本金であり、投資という金銭を入れて、マイナス部分をカバーします。
これが一般的にいう出資であり投資であり、Jカーブの凹みになる部分です。
金銭投資のリターンは、金銭?
投資家には様々な人や組織が存在します。
個人投資家から事業投資、ベンチャーキャピタルなどまで様々です。
また、資本金で入れる場合から社債発行まで資金調達には様々な方法がありますが、融資(借入)で利息を払うように、いずれにしても何かしらのリターンが必要です。
資本金という金銭投資は、金額がそこそこ大きいので、ベンチャーキャピタルやファンドといったお金を運用する会社がお金を集め、そこから事業に再投資をするという構造になっています。
資本への出資ですから、お金の性質が融資などの借入という性質とは異なります。
返済義務の代わりに、会社の経営権(発言権)を持つことになります。
投資をする側も、返済することが目的ではなく増やして戻してもらうことが仕事ですから、入れた以上の金額が、できるだけ早く確実に戻ってくることを期待します。
こうして、出資=株主によって、金銭による会社の決定権に影響されることになります。
出資をする際に必ず聞かれることは、
出資した金額をどのように増やして返してくれるのか?という約束です。
それを一般的にEXIT(イグジット)といいますが、基本的には
上場
売却
配当
しかありません。
機関の区切られているお金を運用しているベンチャーキャピタルは、成果を特に求められます。
たとえば、ファンドの償還期限が近づくと、彼らは焦ります。
場合によっては、買取を請求されたり売却をされたりなど、意図しない形で経営にとってお金が必要になったり、株主が変わってしまったりもします。
私も、いろいろな株主の方をお話をしてきましたし、成功も失敗もありました。また、経営者同士で苦労されている方も少し大きくなると、出資を後悔する人も多くいました。
私も後悔した時には遅かった・・・ということは種類を変えて何度もあります。
私は出資に関しても年間でとても多く相談を受けますが、借りて経営できるなら借りた方がいいとアドバイスをします。
出資は返さなくてもいいお金・・・なんていう起業家もいますが、そんな都合の良いお金はありません。
痛い目を見たことがなければ、そう言いたくなる気持ちもわかりますが。
本当のEXITってなんだろうか?
資本金ってなんだろうか?
資本ってお金だけなんだろうか?
私はそういう疑問がつきまとっていました。
自分が経営に関った中では50億円くらいは資金調達をしてきたような気がしますが、やっぱり安易に資本金を増加させることはちょっと違うなぁと感じています。
これからの資本の考え方
それは、本当にお金じゃないと、買えないのか?
私が相談を受けるときに、必ずそう聞くようにしています。
お金を投資したほうが向いているビジネスもあります。
ビジネスモデルが明快にあるならば、良いと思います。
出資を受けるにはタイミングがあります。
その投資が回収できる基盤(資本)に変わるなら、それは出資を受ける理由になると思います。
しかし、運転資金のような性質で資本調達し消えていくならば、やっぱり後から苦しくなるのは目に見えています。
立場が苦しいときほど、資金調達の条件は悪くなっていきます。
人の手を借りたい
アイデアが欲しい
事業を普及させたい
一緒に製品を開発したい・・・
本当にそれらは、お金で解決しなければならないのか?ということです。
またお金になると必ずEXITが条件になるので、本当にEXITが必要なのかということにもなります。
私は、金銭以外の資本によって、EXITをしなくとも成長し社会インパクトを目指せる事業こそが、これからのスタートアップであり、サスティナブル・スタートアップであると考えています。
金銭だけではない、投資とリターン
事業の成果は、金銭のリターンだけではありません。
社会インパクトもひとつの結果でしょうし、投資期におせわになった関係者の方々への恩返しも立派なリターンだと思います。
これまでのスタートアップと、スモールビジネスの中間にあって、金銭以外の新しい投資とリターンの考え方が、サスティナブル・スタートアップです。
関わる人を増やし、お世話になって、そうした方々が支えてファンになり、一緒に事業を成長させていくというスタイルはとっても魅力的ではないでしょうか?
リターンを独り占めしたいならともかく、リターンをシェアすることから始めてはどうでしょうか?
そう考えると、投資の概念は変わってくると思います。
あなたにとって投資できるものはなんですか?
あなたの金銭以外の資産は何ですか?
時間や健康、人間関係をトレードオフしていませんか?
信頼の貯金はありますか?
ただ、ビジネスには一定のお金も必要です。
ベンチャーやスタートアップというとお金儲けのイメージもつきまといますし、その世界に関わりたくない人がNPOや活動家になるもの残念です。
その両方を兼ね添えて、金銭という安易な解決策に頼らないで、ちょっと面倒かもしれないですが、もっと投資をすべきことに時間を費やしていく選択肢もあるはずです。
安易に得るものは、安易に失う
私の会社に投資をしてくれた、ある投資家が言ってくれた言葉で、とても大切にしています。
想いを大切にしてくれる投資家も、たくさんいます。
ですから、金銭で解決できると安易に考える前に、冷静に判断することが大切です。
これから、どれほどの人と共感し、みんなと一緒になって、結果を分かち合っていく、そんな投資&回収、そして還元のモデルである、サスティナブル・スタートアップを目指す起業家を応援していきたいと思います。