大学4年間、映画館で観たベスト映画
大学生活4年間が終わったので、一旦この4年間で観た映画をまとめようと思います!たくさん家で映画を観たコロナ期間、出町座スタッフとして働いた期間(現在進行中)などなど、数えきれないほどの映画に囲まれて過ごした大学生活でした。その中から、1. 2020年4月〜2024年3月の4年間で、2.映画館で、3.初めて観た映画でランキングを作りました。(ベスト11と、番外編8本の計19本です)
考えるだけでうっとりする映画ばかりなので、見る映画に迷ってたら、良かったら参考にしてください。
10位. アルピニスト
監督:ピーター・モーティマー、ニック・ローゼン
鑑賞年: 2022年
映画館: 出町座
No. 1ドキュメンタリー映画。何かに挑戦しようとしている人には絶対に見てほしい。多分今Amazon Primeで見放題になっている映画で一番面白いと思う。
10位. ポゼッサー
監督:ブランドン・クローネンバーグ
鑑賞年: 2022年
映画館: 出町座
とんでも映画です。父デイビッド・クローネンバーグと息子ブランドン・クローネンバーグは両方サイコスリラーの映画監督だけど、個人的には息子クローネンバーグの方が好きです。刺殺シーンの手数が異常に多いのも狂ってる。あと主演のアンドレア・ライズボローがクローネンバーグの世界観にマッチしていて良かった。怖いのいける人は観て欲しい。これ以上のスリラーは4年間で出会わなかった。
10位. Here
監督:ヴァス・ドゥヴォス
鑑賞年: 2024年
映画館: シネ・リーブル梅田
観終わったあと率直に、もし自分が映画監督を目指していて、そのさなかにこの映画と出会っていたら、映画監督になるのを諦めていただろうなと思いました。感度の低いフィルムで撮影されていて、全編通して音がいい。国があり、街があり、人がいてそして苔がある。緩やかな運命に導かれて、僅かな繋がりに傾倒するように、それでいて、数多くの歴史と人種の入り混じるベルギーに生まれた、監督本人のバックグラウンドが根底に流れている確かな感触がある。今年の上半期はこれが1番かな〜。(noteいつか書こうと思う)
併映の『ゴーストトロピック』も是非!
10位. aftersun
監督:シャーロット・ウェルズ
鑑賞年: 2022年
映画館: アップリンク京都
またとんでもない監督が出てきたなーと思いました。現在、過去、そしてビデオカメラの映像という3つの時間軸を上手く縫い合わせた映画で、きちんと今の時代に効果的な文法をわかっているんだなと感じる。レビューは以下の記事から飛べます。
10位. Everything Everywhere All at Once
監督:ダニエルズ
鑑賞年: 2023年
映画館: 京都シネマ
これも下のリンクにレビュー書いてます!ごちゃごちゃ言ってるけどとにかく楽しい映画です!
10位. 月光の囁き
監督:塩田明彦
鑑賞年: 2022年
映画館: 出町座
塩田明彦監督作で、前作の『真希のいる世界』が公開された時に特集として出町座で併映されていました。出町座で働き始めて一番最初の洗礼だった。サディズムマゾヒズムの変態映画だけど、観た後の爽快感は2年経っても体から抜けないです。塩田明彦は控えめに言って天才だと思う。(この後もう一本登場するよ。)
5位. 7月の物語
監督:ギヨーム・ブラック
鑑賞年: 2023年
映画館: シネ・ヌーヴォ
とにかく恍惚、ギヨーム・ブラックとこのあと登場するジャック・ロジエには本当に出会えて良かった。サブスクにも無くて、とにかく見れる機会が少ないので、心斎橋まで往復2000円の交通費を払って見に行ったかいがあったと思う。
4位. アメリカの友人 2Kレストア
監督:ヴィム・ヴェンダース
鑑賞年: 2022年
映画館: 出町座
ヴェンダースは『パリ、テキサス』がオールタイムベストだけど、これも凄まじかった。2022年の目玉特集『ヴィム・ヴェンダース レトロスペクティヴ』で出会った一作。ラストシーン、夜明けに向かって車を走らせているカットが大好き。至極のサスペンスロードムービー。
3位. 燃ゆる女の肖像
監督:セリーヌ・シアマ
鑑賞年: 2020年
映画館: TOHOシネマズなんば・別館
もし自分がこの映画を批評するなら「10年に一度の傑作!」とか軽率に言っちゃうくらい出色した一本。グザヴィエ・ドランが大絶賛したのも分かる。絵が完成に近づくにつれて2人の関係が終わりに向かっていく残酷さ、一瞬たりともスクリーンから目を離したくなくてほとんど瞬きしてなかったと思う。これもAmazon Primeで観れる。
2位. みんなのヴァカンス
監督:ギヨーム・ブラック
鑑賞年: 2022年
映画館: 京都シネマ
大好き度カンスト。さっき紹介した『7月の物語』同様、登場人物みんな初めて出会った気がしない。まるで映画を見る前から友達だったかと思うほど居心地が良くて、優しくて、言いようもない感動のある映画でした。今後映画館で上映されているのを見つけたら、その後の予定を断って絶対観てね。
1位. メーヌ・オセアン 4Kレストア
監督:ジャック・ロジェ
鑑賞年: 2023年
映画館: 京都シネマ
大学4年間の頂点はこれ。映画館を出た後の風が本当に心地よかった。どこかでも喋ったけど、ヴァカンス映画の面白さは、少し前まで他人だった”彼ら”をきゅっと引き合わせて、そしていとも簡単にバラバラにしてしまうところだと思う。そうして何度も何度も出会い直すことで生まれた繋ぎ目やほつれがこういった映画の良さだと、改めて感じることができた。
次点の映画
1. ドライブマイカー
監督:濱口竜介
鑑賞年:2022年
映画館: 出町座
自分にはこの映画の全てを理解することはできないけど、堪らなく好きな作品。世界には多くの矛盾が漂っていて、相反する2つが互いに寄りかかり合うことで存在し得る世の中の性を描いているように感じる。三浦透子、岡田将生ともに最高の演技です。
2. 害虫
監督:塩田明彦
鑑賞年: 2022年
映画館: 出町座
『月光の囁き』と同じく塩田明彦監督の作品。次のシーンで死んじゃうんじゃないかってずっと思ってしまう危うさ、岩井俊二の『リリイ・シュシュのすべて』が好きな人に絶対見てほしい映画。
3. インフル病みのペトロフ家
監督:キリル・セレブレンニコフ
鑑賞年: 2022年
映画館: 出町座
セレブレンニコフは、現代の映画監督の中で頭ひとつ飛び抜けていると思う。あんまり面白くなさそうなタイトルとティザー、騙されたと思ってみてほしい。時間と空間を飛び越えてしまうマジカルなロングショットが良い。
4. チャイコフスキーの妻
監督:キリル・セレブレンニコフ
鑑賞年: 2022年
映画館: 京都文化博物館(ヒストリカ映画祭)
同じくキリル・セレブレンニコフの日本未公開作。2022年のヒストリカ映画祭の目玉作品で、これだけは観ておこうと思って行きました。これから公開されるらしいので、絶対映画館でみてね。
5. TENET
監督:クリストファー・ノーラン
鑑賞年: 2020年
映画館: ユナイテッド・シネマ
2020年、コロナ禍で閉塞感の漂う大学生活に少しの鮮やかさをもたらした映画。IMAXで2回、通常回で2回計4回見ました。クリストファー・ノーランの細やかなプレゼント。
6. ポエトリー アグネスの詩
監督:イ・チャンドン
鑑賞年: 2024年
映画館: 出町座
イ・チャンドンは『オアシス』『ペパーミントキャンディ』『シークレット・サンシャイン』とこの4本を観たけど、『シークレット・サンシャイン』とこれは別次元にあると思う。最高到達点だと思う。自分が形而上的に愛でていたものが、ある人にとっては鋭利な刃物になる瞬間を描いた杏のシーン、イ・チャンドンの映画の醍醐味であり、映画の底力です。
7. 1917 命をかけた伝令
監督:サム・メンデス
鑑賞年: 2020年
映画館: あべのアポロシネマ
大学受験が終わって、映画好きの親友2人と観に行った映画。トップガンとか007とか、映画体験としての映画の中でこの映画の右に出る映画はなかった(映画映画言い過ぎ)。もうこれはサブスクとかでみないで、映画館のリバイバル上映を待つべきだと思う。
8. マリグナント
監督:ジェームズ・ワン
鑑賞年: 2021年
映画館: MOVIX京都
2022年は個人的には不作の年で、12月に滑り込みでこの映画を見て安心した思い出がある。マリグナントが飛び抜けてよかった。『ソウ』とか『死霊館』でお馴染みジェームズ・ワンの最新作、古典的なホラーかと思ったらその斜め上をいく作品です。怖いの苦手な人は1人で見ないでね。
終わりに
映画館で観た映画は、その作品がどれだけ面白くなくても"映画館で観た"という体験に包摂されるから、観終わった後、1人で辺りを見渡しながら(これ彼女と観にきてる人かわいそうだな〜)とか思ったり、恋人と顔を合わせて苦笑いしたり、友達と「何やねんこれ」と愚痴をこぼし合ったり、1つの映画を思い出すたびにそうした体験が身体を巡っていく。それがとびっきりの映画ならどうなるか、書かなくても分かってもらえると思う。
『メーヌ・オセアン』を観た時もそうだった。京都シネマを出た時の風の温度、今こうして帰り道を歩いている自分も、遠くからカメラを回せばあのラストシーンのようなロングショットになり得るだろうか、なんて考えながら「今年はもう映画見なくて良いかな」と1人で呟いた。後日バイト先の出町座に、志子田勇さんらがやって来て、うちの支配人に「ジャック・ロジエみたいな映画監督今いないんすよ!ほんとにあんな映画撮れる監督他にいないんすよ!」とロジエの良さを熱々と語り、挙げ句の果てに「ホン・サンスのあの映画を許して良いんですか!!」と酔っ払った口調で(僕は割と好きな)ホン・サンスのルーズさに苦言を呈していたりした。
そうして映画館で観た映画は、あの時の体験と共に今も自分の身体を高速で巡っている。いつでも好きな時に引っ張り出してニヤニヤできる存在、『デビルシャーク』だって『ミナリ』だって、1人で見たって友達と見たって何でもいい。僕は映画が好きだし、映画が好きな人が好きです。これからもどんな映画に出会えるか、凄く楽しみです。
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