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ごく身近で重要なのに、無名なお仕事。それがマーケティングリサーチ。

こんにちは。
フリーランスのマーケティング・リサーチャー:眼力女子です。

みなさんは「マーケティング・リサーチャー」という職業をご存じでしたか?

私はだいぶ大人になるまで全然知りませんでした!
25歳くらいのときだったかな。
その経緯はコチラのnoteに記載しています。

それでも一般の方よりもずいぶん早く知った方だと思います。

それぐらい無名な職業。

だから初めてそんなお仕事、そんな職業があると知ったとき、「どんなことをするの?」という初歩の初歩の疑問が頭に浮かびました。

そしてそのお仕事の内容を知るにつれ、私が昔から当たり前のようにしていることだな、と気づいたのです。

私の当たり前の行動がお仕事になって役に立つのか!と知った時の驚き。

そして振り返って考えてみたら、人生の一番最初に行った「マーケティングリサーチ」は小学校3年生のときです。今日はそのお話をしたいと思います。

きっかけは、「スキー靴」を買わなくちゃ!

私は雪国育ちです。
だから、冬の体育の授業は、校庭のスキー山でスキーでした。
冬になると、自前のスキー用具一式を学校に置いて、毎日のように校庭でスキーをします。

今の時代は小さい子供用のスキー靴もあると思いますが、私の小さい頃は「長靴スキー」でした。長靴を履いてスプリングのバンドで板にはめてはく、お遊びのようなスキー用具です。今のように足首からふくらはぎまでがっつり固定するような「スキー靴」は、もう少し大きくなってから履くようになるものでした。今みたいに子供用スキー靴がなかったのです。

小学校1年生の頃はクラスのほとんどが「長靴スキー」です。2年になるとちらほら「スキー靴」の子が出てきますが、まだまだごく一部、特殊な状態です。

「スキー靴」に変わっていくのをみて「私もほしい」「僕も変えたい」という子たちは出てきます。しかし私自身、あまりスキーが好きではないし得意でもないし、親もそんなにスキーに行くタイプではなかったので、私はまだ「長靴スキー」で十分だわ、と思っていたのです。

3年生になり秋口になった頃、先生が「そろそろスキーの時期になるから、スキー道具を持ってくるように」と申し渡されます。

私は何も考えず、また「長靴スキー」を納戸から出さなくちゃなぁと思う程度でした。

翌日、学校に行ってみると、クラスのほとんどの子がスキー道具を持参してきています。私も持ってきています。教室の後ろにみんなそれぞれ板を立掛け、道具を置きます。

それをみていたときに私は異変に気付きました。

クラスのほとんどが「スキー靴」になっていることに。

え?これはやばい。私も「スキー靴」にしなくては!と気持ちが焦ります。いくらスキーはそんなに好きではないといっても、クラスで「長靴スキー」一人ではあまりに情けないです。親にこの話を言ってスキー靴を買ってもらおう。このときは気軽に考えていました。

そして帰宅するなり母親に伝えました。

「おかあさん、クラスのみんながスキー靴になっちゃってるよ!私もスキー靴にしたいから買って!」と。

すると母が言いました。

「またこの子はすぐ「みんな」って言うけどさ、あんたの「みんな」はいつも4~5人なんだから。大げさに言うんじゃないよ!」

と全然相手にしてくれません。

これに対して私は何も言い返せません。なんとか母親に真実を伝えなくては、ほんとに私はこの冬、クラスで一人だけの「長靴スキー」になってしまうかもしれません。そんなん、いやじゃ。

そこで私は決意しました。

明日学校に行ったら、徹底的に調べてやる、と。

クラスで「長靴スキー」の人数を数える

さて、問題の翌日です。

私は何をしたか。

まずクラスの人数を確認します。
その当時で40人ほどだったかと思います。

そして、今度は「スキー靴」の数を数えます。
1人でスキー板を2台持ってきている者もいるので、1人1人席順表をチェックしながら「スキー靴」保有者をカウントしました。

なんと、40人中36人が「スキー靴」。
残りは、私を含めて4人が「長靴スキー」。

圧倒的に「スキー靴」に変わってしまったことがわかります。

これで私のやることがおしまいではありません。
次は、私以外の「長靴スキー」保有者に話を聞きにいきました。

「今年の冬は、長靴スキーでやるの?」
「スキー靴を買う予定はあるの?」と。

そうすると、現在「長靴スキー」の3人全員、「スキー靴を買いに行く」と答えました。

なんと近いうちに「長靴スキー」は私一人になる予定だったのです。

これはやばい!ますますやばい!
聞いてよかった。こんな惨状は絶対ありえない。

「スキー靴」購入者と予定者にヒアリングする

その次に私がやったこと。

現在は「長靴スキー」保有者で今後「スキー靴」購入予定者に、質問です。

「いつ買う予定なの?」
「どこで買う予定なの?」
「なぜ、そこのお店にしようと思うの?」

すると、3人ともに「今週末」、お店はそれぞれいろいろな理由で選択されていました。

そうすると、次に私は、この冬に既に「スキー靴」に変えた人のところに行って、

「どこでスキー靴を買ったの?」
「なんでそのお店にしたの?そのお店で買ってみて良かった?」
「買う時にはどんなふうに選んだの?」

この冬買った子は30人くらいいるので全員には聞けません。
なので、男の子と女の子には何人かずつ聞いて。
さらに、こういうときにちょっとセンスが良さげな子にも何人か聞いています。

だいぶ参考になる情報が集まってきました。

過去の「スキー靴」購入者にも参考に聞いてみる

そして、最後にダメ押しで、とっくの前に「スキー靴」にしていた子にも話を聞きに行きます。

「今のスキー靴は気に入っている?」
「最新式のスキー靴をどう思う?」
「最近、スキーショップに道具を見に行ったりした?」などなど。

とにかく、その日一日かけて、クラス中に聞いて回りました。
とりあえず、私自身が必要と思われる情報はすべて収集できました。

勝負は夜、母親相手にどうプレゼンできるか、です。

ついに母親にリサーチ結果をプレゼンして勝利する

働いている母親が帰宅して、荷物を置くか否かのタイミングで私は母親に向かいました。

「おかあさん、やっぱりスキー靴を買ってほしい。」

「だって、クラス40人中36人がもうスキー靴なんだよ。今日数えた」
「そして、私以外の残り3人も今週末にスキー靴を買いに行くって」
「今年の冬、クラスでスキー靴じゃないの、私だけになっちゃう!」

母親は驚いて私の方をみました。

「あら、昨日の今日で、ちゃんと数えてきたんだね。」
「そうか、クラスで一人になっちゃうんだったら、スキー靴を買わなくちゃね。」
「でも、どこで買えばいいんだろう?」

大丈夫、そう来ると思って既にヒアリング済です。

「おかあさん、近所の〇〇スポーツは今週末までセールやってるんだって。」
「子供用のスキー靴の種類もたくさんあるみたいだし、店員さんもいろいろ教えてくれるってよ。」

と私は答えます。

母親はまたしても驚いて、

「準備万端だね。質問がわかっていたみたい」と笑いました。
そして「近所の〇〇スポーツは新しくできたお店で、駅前の●●スポーツの方が昔からあるし、いろいろありそうだけど」と別のお店のことを持ち出してきます。

やっぱり、母親は新参の〇〇スポーツではなく、老舗の●●スポーツを持ち出してきた。これも私の想定済み。実は老舗の●●スポーツ、私のヒアリング結果ではあまり評判がよくなかった。ここは迷わせてはいけない!

「駅前の●●スポーツでも買った子はいるけど、あっちはもっと本格派のスキー用具が多くて、クラスでそこで買った子はガンガンにすべれる子。それに昔からあるけど、少し情報や品揃えが古いみたい。昔そのお店でスキー靴を買った子は、最近〇〇スポーツに行ってみたら、こっちの方がお店がキレイだし品揃えも新しいよ、って言ってたよ。だから私は近所の〇〇スポーツが良いと思う。」

他店の情報もばっちりです。
その後も、母親からたくさん質問がとびましたが、たいがいはすべてリサーチ済。

しばらく話した後、母親は大きなため息をつきながら、

「わかった。じゃあ今週末に〇〇スポーツにスキー靴を買いに行こう。」

と言ってくれました。

プレゼン成功です。勝利です。
その週末に、近所のスキーショップで最新式のスキー靴をゲットできました。

これがきっと私の本格的マーケティングリサーチ事始めです。

マーケティングリサーチはすごく身近で必要なこと

今回お話したこの場合の「対象市場」はクラスです。
そして、リサーチを行うゴールは「母親を説得し、スキー靴を早急に買ってもらうこと」。リサーチを行った目的は「クラスの中のスキー靴購入者数と購入チャネルの実態を把握すること」でした。

具体的には、クラス人数の中の「スキー靴」保有者と今後「スキー靴」購入予定者を数えました。加えて、購入店舗とそのお店を選んだ理由を聞くことによってお店選びのヒントをいろんな属性から得ることができました。

小学3年生だったにも関わらず、定量調査も定性調査も入っているところが素晴らしい!しかも、その定性調査も、先行層も含め、ちゃんと聞くべき人に聞いているところが本能のリサーチャーたるゆえん。

最終的には自画自賛。笑笑

これはたまたま私が小学3年生のときの実話ですが、こんなふうなことってみなさん無意識に大なり小なりしていませんか?

あなたがアーティストだったり芸術家だったりしたら右脳の直感を働かせて済ませられるのかもしれませんが、一般人だったら、ほとんどの人は無意識にリサーチしていると思います。そして、リサーチなくしては日々の決断や判断ってなかなか難しいです。

ただ、マーケティングリサーチするのにはちゃんとした体系立った概念やルールが必要で、偏った情報やリサーチ内容では適正な道筋に物事を持っていくことはできません。

そこが、プロとアマの違い。

今の新型コロナ関連でも、うじゃうじゃよくわからぬデータが世の中にあふれ、よくわからぬ解釈をされて間違って広がっていっています。そんな情報に振り回されて惑わされているのは本当に時間がもったいない。

正しい情報収集・取捨選択リテラシーを身につけることこそ、今のネット社会の波を乗りこなす秘訣だと思います。




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