座談会note

身一つから、年間数千万円を稼げる職業がある。

こんにちは。
フリーランスのマーケティング・リサーチャー:眼力女子です。

私の仕事の1つに「インタビュアー」というものがあります。

もちろん、マーケテイングリサーチ業界における専門インタビュアーであって、雑誌やテレビなどでみるような「司会者」だったり「MC」だったりはしません。もちろん、黒柳徹子さんでも阿川佐和子さんでも林真理子さんでもないです。

おそらく、こんな職業が世の中にあるなんて、ほとんどの人が知らないでしょう。私も出会うまで想像もしなかったお仕事です。

今日はそのお仕事の一端を紹介しようと思います。

リサーチインタビューは毎日どこかで実施されています。

専用のインタビュー会場が、東京都内だったら無数に(そこまでは大げさか?)あります。多くのマーケティングリサーチ会社や広告代理店は自前のインタビュールームを複数保有しています。大手企業の中には、自社の中に専用インタビュールームを持っているところも最近増えてきました。

リサーチ専用の、です。
専用の設備が備わっている会場が多数存在しています。

そこで、日々朝から晩までインタビューが行われています。
土日も関係なく、です。さすがに年末年始やゴールデンウィークはお休みが多くなりますが、本当に年柄年中インタビューはいたるところで開催されています。常に混んでいるので、予約をとるのが大変です。

会場がたくさんあるのに、です。
それだけ、多数のインタビューが日々行われている、ということです。

いったいなんのためのインタビュー?

発注者は、大手メーカーや大手サービス企業です。
自分たちの商品・サービスについて、一般の人々の感想や意見をいろいろな角度から聞いて、商品サービス開発に活かすために実施しています。

みなさんの手元にある商品、身近なサービスはほとんどすべて、そういった一般の方々の生の意見を参考にして作り上げられています。中身も、デザインも、コンセプトも、キャッチコピーも、広告も、パンフレットも。各工程ごとにインタビューが行われています、と断言しても過言ではないです。それぐらい、大手メーカーや大手サービス企業は、生の意見を集めるために熱心に膨大なお金をかけています。

決して表に出てくることはありませんが、陰では猛烈に手間暇をかけて生の声というデータを収集しています。たくさんの生の声から、商品サービス開発に活かすためのヒントやアイデアをみつけようと躍起になっているのです。

なんで「大手」だけ?

さっきから、なぜ何度も「大手メーカーや大手サービス企業」と言い切っているのか。

なぜなら、適正なマーケティングリサーチをしようとすると膨大にコストがかかるからです。それだけのコストをかけることができる「大手」しか、発注者になれません。

おそらく業界を知らない人からすると驚くほどのコストだと思います。

私も、マーケティングリサーチ会社の企画営業だったとき、全くこの業界を知らない友人から相談されて見積もりを出したところ、「え?!」と言ったっきり絶句されたことが何度もあります。友達価格でかなりお安めにしたんだけどなぁ。

特に、生の声という定性データの収集に関しては、どんどん高くなってきているように思います。ネットリサーチ等アンケートによる定量データの収集がどんどん安くなってきているのに対して、価値が上がってきているのでしょうね。

なんでそんなにコストがかかるの?

もちろん安くあげることはいくらでも可能です。

いまどきは安価なネットリサーチがたくさんあります。
自分で設問設定できる、激安リサーチツールもあるし。
ちょこっとした生の意見が欲しいだけだったら、友達に聞けばいいか、なんて。

社内プレゼン用にちょこっと使うだけのデータだったら、それで十分賄えると思います。でも正直、重大なマーケティング・ディシジョンを行うには、そんなふうなリサーチデータは使えない、と私は思っています。

特に、定性データといわれる「生の意見」の収集に関しては、ド素人の調査設計、ド素人のインタビューでは全く使えません。それは断言できます。

リサーチインタビューはただのインタビューではないんです。

リサーチインタビュアーはプロの専門職

リサーチインタビューを行うには、マーケティングリサーチを知っていなければいけません。

マーケティングリサーチには、マーケティングの基礎知識に加え、統計学、社会学や心理学の知識が前提として必要です。そして、マーケティングリサーチの基礎知識も、もちろん。

さらに、インタビューを行うには、インタビュースキルも必要です。
相手から本音を引き出すためのテクニック、ラポール形成力、時間内にインタビューをおさめるコントロール力も。

また、インタビューには大きくわけると2つの種類があります。

1つはフォーカスグループインタビューといわれる、座談会形式のインタビュー。このとき私たちは「モデレーター」と呼ばれます。その名の通り、その集団の進行役のことです。この場合には、集団のリーダーとして参加者全員を巻き込みながら、インタビューのゴールに向かわせるテクニックやスキルが必要です。

もう1つは、デプスインタビューといわれる、1対1のマンツーマンインタビューです。一人の心象風景や行動をより深く追いかけたいとき、あるいは、とてもパーソナルでプライベートなことがテーマの場合などに行います。この場合には、できるだけ短時間で、初対面の人に本音を語ってもよいと思わせるための能力(=ラポール)が必要となります。

そしてどちらのインタビューの種類においても最も重要なことは、そのリサーチインタビューが、マーケティングプロセスにおいてどのような位置づけにあり、どんな課題を解決するために行われているのか、をきちんと理解できる能力。クライアントに対しても理解していることをインタビューを通じて示すことができる能力。そのために、与えてはいけない情報バイヤスを仕分けし、与えるタイミングを判断する能力。。。等など。書ききれな~い(笑)

ものすごく専門的な能力が必要な職業なのです。
実力が求められますので、ほとんどクライアントからの指名制の世界だったりします。その域に達するまでは、1~2年じゃ効かないしな。

だから、フリーでやっているすごく売れっ子のトップ・リサーチインタビュアーは、年間売上数千万円クラスです(私ではない笑)。専門会社を立ち上げる人もいます。表には決して出てこないですけど、こんな職業もあるんです。ただのお話聞き屋さんじゃないのです。


「マーケティング」というと一見華やかな業界、職種、と思われがちですが、実は泥臭く地道な「リサーチ」という影の存在の上に成り立っている世界です。どんなマーケティングに取り組もうと、華やかな部分ばかり追いかけないで、影での地道な努力こそが実りを大きくするということを忘れないでいて欲しいと思います。


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