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【2022年】 2月に出会った本/映画/場所

今月は空模様からのイメージか偶然か
選んだ本も無彩色の表紙が多く、観た映画の題材も重めでした。
そのほか2月に出会ったものたちを感想とともにご紹介します。

『ルールの世界史』 伊藤 毅

ルールを人の行動を縛る“権威”としてではなく
人の欲求や才能を開花させための“コミュニケーションツール”として捉え、その歴史から現代のビジネスにおけるルールメイキングまでを紹介している。タイトルどおり歴史や事例がほぼなので雑学的で読みやすい。

『エマニュエル・トッドの思考地図』 エマニュエル・トッド

ソ連崩壊や英国のEU離脱、リーマンショックなどを予言して的中させたフランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド。その思考の軸は徹底的な「データ収集」と長期的な視点から「歴史」であり、そこに社会をどう見るかの外在性を加えて総合的に考察していく。シニカルでユニークな教授に「僕はね、こう考えるのよ」とずっと横で話されてる感覚で楽しんだ。

『新ネットワーク思考』 アルバート・ラズロ・バラバシ

一昨年からネットワーク理論の本をいろいろと読み始め、20年前に出たこの本も古本屋で見つけたので読んでみた。実例は古いが内容はとてもわかりやすい。学ぶ中で疑問を持ったスケールフリーネットワークの頑健性、ハブの除去で崩壊する段階について知れたので嬉しい。

『服従の心理』 スタンレー・ミルグラム

先のネットワーク理論では「六次の隔たり」を提唱した社会心理学者ミルグラムの最も有名な実験「アイヒマン実験」についてのレポート。
“特定の条件がそろれば道徳的に問題があることでも、人は権威者の命令に服従する”を証明するため、条件を変え繰り返した実験の結果報告が大半を占める。第10章「なぜ服従するのかの分析」から訳者の山形さんの「あとがきの蛇足」までがセットで面白い。

『カラフル』 森 絵都

死んでしまった男子高校生の体に乗り移った魂が100日間という期限の中でその死の原因を探っていく話。YA小説の代表的な作品で文章もとても読みやすい。この本が出たばかりの小学生の頃から現在まで、友人らに「あの本いいよね」と言われていたが最近また映像化されたCMが流れていて思い出した。人生は少し長めのホームステイ。

『円 劉慈欣短篇集』 劉 慈欣

昨年ヒットした長編SF『三体』を読むのにまだ尻込みをしているので、同著者の短編集を先に読んでみた。発想とスケールの壮大さがすごい。13編どれも面白かった。「郷村教師」「栄光と夢」「円円のシャボン玉」「円」がとくに好き。

『読む時間』 アンドレ・ケルテス

世界中の色んな場所で何かを「読んでいる」人々の姿を集めたアンドレ・ケルテスの写真集。「読む」という孤独な行為のもつ姿の美しさが表現されている。でも寂しさはなく、1枚1枚の写真を見ていてすごく幸せな気持ちになれた。

漫画

『ロスト・ラッド・ロンドン』 シマ・シンヤ(全3巻)

ロンドンを舞台にしたクライム・サスペンス。
地下鉄でおきた市長殺害事件の犯人として疑われる大学生と過去になにかあっただろう感を醸し出す中年刑事のバディもので、派手さはないがしっかりしたストーリー構成と独特な絵柄が出す空気感、コマ割りや会話のテンポ(間)がうまく組み合わさっていて良かった。

映画

『さがす』 監督 片山 慎三

2022年 日本

劇場で鑑賞。懸賞金つきの指名手配犯を見つけた直後に謎の失踪を遂げた父親、その父をさがす中学生の娘、そして指名手配犯。3人の視点でストーリーが切り替わる構成に、先を予想しながら観ていたが「あれ?え?」と裏切られ続けた。脚本も演出も撮影も演技も全部すごい。卓球のシーンの画と音がとくに印象に残っている。

『クレッシェンド 音楽の架け橋』 監督 ドロール・ザハヴィ

2022年 ドイツ

劇場で鑑賞。紛争中のパレスチナとイスラエルの若手音楽家が和平プロジェクトのためにオーディションで集められてオーケストラを編成し、コンサート開催を目指すというストーリー。
ただクラッシック音楽を聴きたいという気持ちから観に行ったが、タイトルから予想される「音楽は国境を越える」みたいなそんなきれいごとな話じゃなかった。「気が合わない」とかいうレベルではない歴史や家族の想いから引き継いだ分断された世界による「受け入れられなさ」。きれいごとではなかったが、音楽は希望ではあった。

場所

GREEN SPRINGS− PLAY!MUSEUM  『どうぶつ会議展』

ドイツの詩人・作家のエーリヒ・ケストナーの名著『動物会議』。争いを止めない人類を痛烈に批判したケストナーは、人類が抱える大きな課題を、ユーモアとかわいらしさ、皮肉を利かせた絵本を通じて子どもたちに訴えました。そんなケストナーの問題提起を、8人のクリエイターが絵や立体、映像や空間を使い、現代の視点を加えてリレーして描き出す、新しいタイプの展覧会です。    

PLAY! MUSEUM 公式HPより
junaida

立川の新街区GREEN SPRINGS。その中にある「絵とことば」をテーマにした美術館「PLAY! MUSUEM」でケストナーの『動物会議』の絵本からインスピレーションを受けた8人のクリエイターの企画展示がやっていたので鑑賞。
秦さんの動物たちが連絡を取り合う姿やヨシタケさんの動物会議の「その後」のストーリーと長年の盟友であったケストナーとトリアーの関係性を描いたイラストがかわいくてほっこり。比較的暖かく晴れた日だったのでGREEN SPRINGSにいるのも清々しくて気持ち良かった。


以上、2月に出会ったものたちでした。


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