犬を棄てる ー自分とは何者かー
もう、遠い昔のことになるが、自分は犬を棄てた。
家で飼っていた雌犬が野良犬に種をつけられて子供を何匹も産み、更に悪いことに、産後の気性が荒いところ、通りがかりの人に噛みついてしまう。
これ以上飼っておけない、ということになり、殺処分のため祖父とともに犬の親子を役場に連れて行った。
家に帰ると、出かけていた母親が戻っていて、最後に何か食べさせてあげようかと、近くの商店で菓子パンを買い、二人で再び役場に向かった。
「ほら、パンだよ、食べろ」と、母親とパンをちぎって檻の中に入れると