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人にやさしく、自分にもっとやさしく

人を怒ることが苦手だ。
怒るという行為は人より優れていて成り立つものだと思っている。言い換えれば自分ができることでしか人を叱ってはいけない。

昔から人の特徴をつかむのが得意だ。この人は口数が少ないとかあの人は朝が苦手だとか諸々の特徴を分析しがちである。ゆえにいつも自分との比較をしてしまい、苦しむことになる。

倫理的に間違った発言をする人間が苦手だ。こういう人間を見つけると指摘したくなるが、いつもグッと堪える。指摘する前に自分のことが頭に浮かんでしまうからだ。自分は模範的な発言が常にできている人間か。
こう問うと何も言葉が出てこなくなる。笑って何事もなかったかのようにその場をやり過ごす。

こんなことを繰り返すうちに完璧に生きようとする心がいつの間にか生まれていた。

人としてこうあるべきがいくつも積み重なった。

義務感は楽しいという感情を悉く打ち消す。

もっと規則正しく丁寧に生きるべき。
現実を見て働くべき。
将来のために自己投資をすべき。

人間は目に見えないものを獲得したがる。愛、自由、理想、夢といった類だ。私は理想ばかりを追って生きてきた。将来安定した生活を送りたい。将来自由な生き方をして楽に生きたい。将来綺麗な女性と結婚して幸せになりたい。

いつか来ると思っていた将来はいつ来るのだろうと思った。理想を追っかけ、理想の自分になれたとしてもその達成感はあるのだろうか。なれたところで次の理想が生まれて一生この概念に苦しめられると感じた時、自分を追い込んでまで生きる意味が分からなくなった。
こころにかかった黒いもやが肥大化していくような感覚だった。

理想というものを追いかけ続けた自分の人生を一気に振り返った。
理想とのギャップに常に苦しんでいる。そう思ったのと同時に、休み方が分からない自分にも気づいた。

立ち止まって休むことが本当に苦手だ。何か成長している実感がないと自分を責めてしまう。いつだって前に進もうと努力していた。時間を大事にしすぎた結果、どこで一息つけばいいのか全く分からなくなっている自分に気づいた。

この休職期間もそうだ。休め休めと言われているのに、仕事復帰に向けて準備を進めてしまった。自己分析、自己啓発、勉強、転職活動。甘やかしている、サボっている。そう思いたくないから毎日自分に鞭を打っていた。

ほかでもない自分が苦しめていたことに気づいた。人にやさしくする前に自分にやさしくするべきなんだと気づかされた。

どんなに将来のために準備したって一歩踏み出せないのは自分の体にこころが追い付かないからだとわかった。こころを休めるためにもらった休職期間でとことん自分をいじめてしまった。やさしさは自分に対して発揮するべきだった。

人生は意味のあるものばかりを追い求めれば上手くいくものではないらしい。あなたも自己投資ばかりに時間を費やした結果、疲弊してしまった経験があるのではないだろうか。無かったら全力で軽蔑する。人間らしくないねと。

休む。サボる。甘やかす。

どれも喜んで実行しよう。短期的には損をするかもしれないけど、長期的には得なはず。長く助走をとって大きく跳ぶイメージだ。大きく跳べなかったら、一回着地してもう一回助走をとってもいい。
そうやって自分に言い聞かせて生きていくことも悪くないはず。


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